Kiyoshi Fujioka
都立大学駅
懐石料理
八雲うえずは、目黒区の八雲という住宅地に在る和食店だ。一般的には不便な立地だが、目黒区区民の僕にとっては訪れやすい。 店内は白木のカウンター。壁はモノトーンで、伝統的な和食店に比べて現代的な雰囲気が有る。調理と接客合わせて4人で、8人の客に対応していた。 冒頭の品は印象的だった。干し海鼠と椎茸を葛餡にし、表面は春菊で色を付けている。滑らかな葛庵の中で、干しナマコの弾力感が変化を与えている。 八寸が早い段階で供された。唐墨や海鼠などは酒のアテにも良い。 刺身は独特のプレゼンテーション。複数の刺身が、金属製の丸い器に載って供される。それぞれは味付けされており、醤油に付けない。質も良いし、鮃にビーツを載せるなど、和食の伝統に捉われない工夫を凝らしている。 蕪の白味噌和えは素晴らしかった。滑らかな食感と自然な甘み。 新潟の鄙願は、超辛口で、食中酒としては若干難しいと感じた。 皮に適度な焦げ目を付けた鰤の照り焼きは、家庭料理的な品をプロの腕で昇華させている。胡桃が味に変化を与えている。 和食店ながら主菜は牛肉。質も火入れも的確。 クエの炊き込みご飯は、具材の味の沁み方が良い。食べきれなかった分はお土産にしてくれた。 普通の和食店ならここで味噌汁が出てくるところだが、代わりに何とモリーユ茸のスープが供された。深い味わいで、香りも良い。味噌汁より美味しい。 デザートは蕨餅。柔らかく上品な甘さ。 八雲うえずは伝統に捉われず、工夫を凝らして、新たな和食を生み出している。接客も丁寧。