Kiyoshi Fujioka

Kiyoshi Fujiokaさんの My best 2021

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1

東京都

フランス料理

Kiyoshi Fujioka

Asahina Gastrnome(アサヒナ ガストロノーム)は東京証券取引所の直ぐ側という意外な立地だが、取引所が重厚な石造りのため、この辺りは落ち着いた雰囲気が漂っている。 店内の基調色は銀色と灰色と白で、同系色かつ階調が付いており、壁の所々に埋め込まれた鏡がアクセントとなっている。上品さの中に華やかさがある出色の内装だ。 コロナ ウィルスの再度の緊急事態宣言が発出された直後だったが、客の入りは上々だった。 ひよこ豆とビーツと鯨のタルタルを立体的に盛り付けたアミューズ ブーシュからコースは始まる。 最初の冷前菜は、毛蟹とコック貝。軽い食感のサブレの上に、多数のコック貝の切り身を立体的に盛り付けている。恐ろしく手間の掛かった品だ。見た目が美しく、ナイフを入れるのを躊躇してしまう。味ももちろん美味。 二つ目の冷前菜は、伊勢海老と根セロリのショーフロア(いったん加熱した上で冷ましている)。素材が上質で濃厚なソースも見事。 温前菜は牛の胸腺。横に添えられたトリュフ入りの卵の黄身を崩して、胸腺に掛けて食べる。胸腺の弾力感と柔らかさが混じった食感と、卵のトロリとした食感が良く合っている。下世話になりかねない食感の料理をガストロノミーに昇華させている。 魚は甘鯛の鱗焼き。鱗の食感は軽くパリパリしている。甲殻類から取った濃厚なソースも見事。何気ないズッキーニの付け合わせも、盛り付けに恐ろしく手間が掛かっている。 黒毛和牛のフィレ肉は、素材も火入れも見事。外側は炭火焼きみたいな感じだが、味わいは洗練されている。トリュフを使ったソースも素晴らしい。牛尾や玉葱などの付け合わせもとても良い。 肉を食べている間に、木の子味のスープをサイフォンで淹れてくれる。こういう演出も楽しい。 デセールの一皿目は冷製のパッションフルーツ。この爽やかな酸味に、なんと生姜でアクセントを付けている。かなり攻めたデセールだが、味の完成度は高い。 デセールの二皿目は、白桃のペッシュメルバ。甘さが適度に濃厚ながらも上品さを保っている。 食後の飲み物は、追加料金を払ってフレッシュ ハーブ ティーにした。目の前でサイフォンで淹れてくれるのが楽しい。 惰性で食べがちなミニャルディーズも、一つ一つの質が高い。 オペレーションは効率的で、客入りが良く皿数が多いにもかかわらず、皿出しは快調だ。接客は客との間に適度な距離を置きながらも、客への目配りが的確。高級店らしい洗練された接客だ。 料理は見た目が美しく、食べる前に見入ってしまう。調理法や味付けは古典に基づきながら、現代的な感性も併せ持っている。 素晴らしい店だと思う。

2

京都府

京料理

Kiyoshi Fujioka

13年振り2回目の訪問。 「ぎおん  阪川」は文字通り祇園の和食店だ。店内は8人掛けのカウンターと個室が2室。固定客を掴んでいるのか、コロナ ウィルスの緊急事態宣言が発出されている中でも客入りは良かった。 和食店にしては珍しく、アラカルトを提供している。一年中供していると思われる品に加えて、季節の魚介類を複数の調理方法で供しており、品数は目移りするほど多い。 注文に関わらず供される最初の皿は鱧の揚げ物。衣がとても軽く、中に詰められた梅肉の程よい酸味も相まって、素晴らしい出来だ。この先はお好みで。 蛸の造りは弾力感が見事。 いちじくの酒蒸しは、柔らかく微かに甘い。添えている白味噌が味わいを更に豊かにしている。 子持ちの鮎の塩焼きは、単純そうで滋味深い。 かなり大きな喉黒の塩焼きは、素材も焼き加減も最上。 スッポン鍋は筆舌に尽くし難い美味しさ。出汁は上品かつ力強く、出汁だけでも何杯も飲めてしまう。 唐墨は滅多に食べられない美味しさ。酒呑みにとっては堪らない品だろう。 ここまでが余りに素晴らしかったので、調子にのって人生で初めて鮒ずしを頼んだ。チーズを遥かに超える強烈な匂いで、興味深い経験だったということにしよう。 締めは鯛茶漬けで。 明るい大将は客に積極的に話し掛けてくれる。実際の調理を弟子が担当する場面も多いが、それでも料理の水準が高いのは、チーム全体の技量が高いからだろう。 阪川は、和食店ながらアラカルトを提供し、酒の当てになる品も多い。料理は美味しく、大将も明るい性格。 カウンターの和食店として理想的だ。

3

京都府

日本料理

Kiyoshi Fujioka

「炭火割烹 いふき」は祇園の和食店だ。黒い壁の伝統的な建物。店内はカウンターと個室が数室。我々は個室に通された。 先ずは少しずつ五品が供される。フランス料理のアミューズ ブーシュみたいな感覚だ。海老にカダイフ(中東の細い麺)を纏わせて揚げた品は、サクッとした食感と味噌のねっとりとした食感の対比が出色だった。炭火で焼いた鶉は、旨味が凝縮されている。蟹も上質。 続く造りは、グジと鮪の赤身。グジは表面を軽く焼いているのが効果的だ。醤油と塩の二種類で食べるが、塩も意外と良く合う。 鱧と松茸の椀は、上品だが淡白過ぎない出汁が出色。 伊勢海老は、海老の味噌と白味噌を合わせたソースがとても美味しい。 茄子と雲丹の皿は、茄子を軽く揚げてから焼いており、複雑な食感だ。これが雲丹と良く合うのが驚きだ。 焼き物は、4-5種類から二品選ぶ。僕はスッポンと喉黒を選んだ。 スッポンの焼き物は初めて食べた。上質な焼き鳥みたいな感じで、旨味が凝縮されている。 喉黒は柔らかいながらも、適度な弾力が有り、見事な焼き方だ。 焼き物は、真空パックで水分を抜いた後に炭火で焼いているという。 口直しの鮎の素麺は、サッパリとした感じ。 この後のご飯には、揚げた鱧とイクラが添えらている。ご飯の炊き方もとても良く、満腹に近かったが完食した。 甘味は二種類。数種類の葡萄に蜂蜜を掛けた品も、黒糖を乗せたアイスクリームも上品な甘さ。 板長は、ずっと和食の世界で生きており、他分野での修行歴は無いそうだが、和食の伝統に固執せずに、新たな要素や技法を積極的に取り入れている。和食を前進させながらも、完成度が高い。 接客はとても丁寧で、好感を抱く。

4

京都府

懐石料理

Kiyoshi Fujioka

山玄茶(さんげんちゃ)は、祇園の和食店だ。 6人掛けのカウンターに加えて、個室が二つ在る。我々はカウンターに通された。 先付けは蟹や雲丹の酢の物。酢がとても美味しい。 煮物は鱧と帆立しんじょうと松茸の椀。出汁の味と香りが素晴らしい。 烏賊や鯛の造りは、素材の質が高く、弾力感のある食感だ。 戻り鰹のタタキは、辛子とぽん酢の二種類で食べる。微かな燻り方が適切だ。 鮑と餅米は、トロミのある出汁との食感の組み合わせが見事だ。 マナガツオの幽庵焼きも上質。 すすきなどで飾った八寸は見目麗しい。 変化球として投げ込まれた鮪の鮨は、鮨専門店に匹敵する出来。 大きな葉っぱで蒸し焼きにした牛肉と松茸と銀杏は香り高い。 炊き合わせは出色だった。冬瓜の茶碗蒸しだが、中にはフカヒレが入っている。滑らかな茶碗蒸しに、フカヒレの繊維感が変化を与えている。 白米に加えて、鰻の佃煮お茶漬けも頂いたが、これらも中々のもの。 甘味は二皿。 最初の皿はシャイン マスカットとオレンジのゼリー。ゼリーは極めて滑らか。 最後の水羊羹は驚くほど柔らかい。 接客は親しげで、積極的に話し掛けてくれる。 料理の質を考えると、価格は手頃。自宅の近くだったら、しばしば通いたいところだ。

5

東京都

寿司

Kiyoshi Fujioka

青空(はるたか)は銀座と新橋の中間辺りに在る鮨屋だ。白木の8人掛けのカウンター。鮨屋としては空間に余裕が有り、客数を鑑みると店員は多めだ。お任せを頼んだ。 摘みと握りを合わせるとかなりの品数になるので、感想は一部の品についてのみ。 摘みは野菜は使わず魚介類のみ。正統的な美味しさだ。 伊勢海老は素材も良く、数かに酸味を帯びたジュレや、添えられた出汁も見事。 鮑は弾力感と柔らかさという相反する食感を両立させている。肝から作り、微かにトロミを加えた出汁も素晴らしい。 鰻の蒲焼は、鰻専門店を凌駕している。 握りの舎利は、やや硬めの炊き方で、酢の利かせ方も若干強め。好みは分かれると思うが、僕は気に入った。 墨烏賊の握りは、見た目が先ず美しい。素材の食感も硬すぎもせず柔らかすぎもせず、適切だ。 鮨屋では珍しい鱚の握りも、締め方がとても良い。 鮪は、赤身、大トロに近い中トロ、そして大トロと三連続。素材はどれも最上。 車海老の握りは、茹で加減が丁度良い。 穴子は、驚くほど柔らかい。 細かい点を言うと、帆立の小柱や雲丹の巻物に使っている海苔の質が極めて高い。 ご主人も含め、店員は客に良く目を配っている。無駄口はきかないが、客の会話を良く聞いており、さりげなく会話に加わってくる。 全体的に突出した個性は無いものの、正統的な仕事の平均点が極めて高く感じる。極めて高価な店だが、納得してしまう。

Kiyoshi Fujioka

5回目の訪問。 La Clairiere(ラ クレリエール)は通常はコースを提供しているが、コロナ ウィルス禍で営業時間の短縮要請に応じるべく、今の時期はアラカルトで営業している。アラカルトと言っても、アミューズ ブーシュ二皿や口直しも出てくるので、ちょっとしたコースみたい感じだ。アラカルトの選択肢が豊富なのには驚いた。食べる側としては嬉しいが、提供側の食材管理は大変だろう。 アミューズ ブーシュの一皿目は、定番のブーダン ノワールのバーガーなど4種。少量ながら旨味が濃縮されている。 アミューズ ブーシュの二皿目は、雲丹と掻き玉子の上にキャビアを乗せた品。しつこくない程度に濃厚な味で、トロリとした食感も見事だ。 前菜として選んだのは、真鱈の白子のパン粉焼き。 白子の焼き方が卓抜で、中心部はネットリとした食感で、外側は少しカリッとした感じだ。ネギなどの野菜も添えられ、更にポルト酒のソースも使われており、重層的な味だ。 主菜として選んだのは、スペシャリテの鮑。鮑を昆布で包み、メレンゲと塩釜で加熱している。鮑は産地を変えて、ほぼ一年中提供している。塩釜焼きは古くからある調理法だが、昆布やメレンゲも使うのは、シェフの試行錯誤の成果だそうだ。出来上がった鮑は、柔らかさと弾力という相反する食感を両立させている。鮑の肝から作ったソースは、磯の香を湛え、苦味も有り、出色の出来だ。 デセールのアイスクリームやお茶菓子のカヌレも上質。 全体的に料理は、古典に基きながらも重過ぎず、とても印象的だ。 接客は円滑で、シェフも時折顔を出して直接料理を説明してくれる。 満足した。

7

東京都

フランス料理

Kiyoshi Fujioka

2年振り2回目の訪問。窓際の席なら隅田川を挟んでスカイツリーが見えるという素晴らしい立地だ。3階建ての細長い建物で、1階が厨房、2階と3階が客席だ。1階は厨房から受付へ直ぐ出られる動線となっており、到着した際にシェフが挨拶してくれる。我々が通された2階は、4組の客に対し3人の給仕が付いていた。 アミューズ ブーシュは、地元老舗の雷おこしや最中が、フランス料理として成立している。サングリアとオレンジのガスパッチョは、酸味が爽やかだ。 二皿目は、蕎麦掻きの歯触りと香りがとても良い。上に乗る具材は、その時々で変わるそうだが、この日の雲丹と山葵の組み合わせも上質。 三皿目は鮎。鮎の内臓などを使ったソースの苦味が良い。定石通り瓜系の野菜を合わせている。 四皿目はアオリイカの鉄板焼き。焼いた唐辛子と意外にも合う。トマトやレモン グラスや魚醤を使ったソースは、複雑な構成要素が上手く纏まっている。 五皿目は焼いた太刀魚。淡白になりがちな素材だが、ソースが素晴らしかった。何とアーティチョークをスプマンテにしており、丁寧に漉したジャガイモでトロミを付けて、柑橘類の酸味も加えている。 デセールの一皿目は、月桂樹(ローリエ)を使ったクリーム。驚くほど滑らかな喉越しだ。 デセールの二皿目はシブースト。上品さを保ちつつ、適度に濃厚だ。パッション フルーツのソースの酸味も見事。 ミニャルディーズは惰性で食べがちだが、胡麻を加えたマカロンは、とても美味しかった。 客に配られるメニューには、各皿の内容が詳細に書かれている(これはWebサイトにも載っている)。これを読むと、各皿とも驚くほどの手間が掛かっている。しかし、仕上がりは作為性を感じさせず、複雑でありながら、素直に美味しいと思える料理だ。 接客は適度な親しさを感じさせつつもプロフェッショナル。

8

東京都

寿司

Kiyoshi Fujioka

青空(はるたか)は銀座と新橋の中間辺りに在る鮨屋だ。白木のカウンター。鮨屋としては空間に余裕が有り、客数を鑑みると店員は多めだ。お任せを頼み、握りを若干追加した。 摘みと握りを合わせるとかなりの品数になるので、感想は一部の品についてのみ。 9品の摘みは、素材の良さに加えて、何気ない調理が光る。 白子はネットリとした食感で、ポン酢と良く合う。 蛸は柔らかさの中に弾力感を備えている。 クエは微かに燻ることにより、食感に変化が生まれている。 焼いた甘鯛を蓮根のスープに浮かべた品は、蓮根が出色。片栗粉を使わずに自然なトロミが付いている。 鮑も柔らかく、それでいて弾力感が有る。出汁も出色。 脂の乗った焼いた喉黒は、山椒との相性が抜群だ。 どの摘みも食感が見事。 握りは13貫のお任せに1貫追加注文した。前回の訪問で量が多いと判っていたので、舎利は少な目にしてもらった。握りの舎利は、やや硬めの炊き方で、酢の利かせ方も若干強め。好みは分かれると思うが、僕は気に入った。 墨烏賊の握りは、見た目が先ず美しい。素材の食感も硬すぎもせず柔らかすぎもせず、適切だ。 サヨリや小肌などの光り物は、酢の締め方が強目で、舎利と合わせて美味しさを感じる。 鮪は、赤身、大トロに近い中トロ、そして大トロと三連続。素材はどれも最上。 車海老の握りは、茹で加減が丁度良いし、赤白の縞が美しい。 口の中で解けるような、穴子の柔らかい食感に陶然とする。 店員の人数が多いこともあり、ご主人を含めて、店員は客に良く目を配っている。 正統的な仕事の平均点が極めて高い店だ。

9

東京都

フランス料理

Kiyoshi Fujioka

L'Osier(ロオジェ)の円形の客室は上品な気品に満ちている。客室が地下に在るという特殊な設計だが、天井が吹き抜けとなっており、開放感は十分だ。 2種類のコースとアラカルトという構成。最近のフランス料理店にしては珍しく、予約時でなく、その場で注文を決められる。去年もほぼ同じ時期に訪問したが、メニューはその時とほぼ同じで、新作を次々と出すような店ではなさそうだ。2種類のコースの分量はほぼ同じという給仕の声に押されて、品数の多いデギュスタシオンを頼んだ。 先ずは二皿のアミューズ ブーシュが供される。ブロッコリのヴルーテは、濃厚ながらも、さっぱりとした喉越しだ。ソルベにしたビーツとの食感や温度の対比も良く考えられている。 サーモンやキャビアや西洋山葵を盛り合わせにした前菜は、とても上質。 鮑のバター ポッシュは、弾力感が有り、スプマンテにした雲丹のソースが見事だ。 オマール ブルーは、素材も上質で、ソースは軽いが印象に残る。 1時間程掛けてゆっくりロティしたという仔牛は、ハムのような食感で、やや理解が難しかったが、ジュのソースや付け合わせのアスパラガスはとても良かった。 フロマージュは驚くほど質が高く、ソーテルヌと合わせて、陶然とした。 デセールの構成は独特で、先ずはミニャルディーズが、その後でデセールが供され、最後に別のフリヤンディーズがワゴンで供される。デセールはクレープを頼んだが、客の前で調理するという古典的な演出が楽しい。 料理は古典を基にしながら、ソースは現代的に軽めだ。付かず離れずの接客はプロフェッショナル。

10

東京都

フランス料理

Kiyoshi Fujioka

L'ARGENT(ラルジャン)は銀座四丁目交差点に在り、素晴らしい立地だ。1年程前までティエリーマルクス東京店が在った場所だが、居抜きでなく、内装は完全に新調している。2020年12月に開店したが、その直後にコロナ ウィルスの第二次緊急事態宣言が発出され、多難な出だしとなってしまった。 内装の基調色は黒と灰色と白だが、床は明るい茶色で、単調にはなっていない。テーブル クロスは無いものの、現代的な高級感に溢れる内装だ。料理はお任せのコースで、ワインもお任せのペアリングにした。 アミューズ ブーシュの一皿目は、薄い生地の上にアオリイカやキャビアを載せたもの。生地の軽い食感とアオリイカのねっとりとした食感の対比が良く、微かな塩味の塩梅も見事だ。 アミューズ ブーシュのニ皿目は、 サブレに挟んだ鶏のムース。ムースの滑らかな喉越しに対して、サブレの食感は恐らく意図的に粗くしてある。 三皿目はうすい豆という豆を使った料理。一皿の中に、軽く茹でた豆と、豆から作った滑らかなソースと、豆を衣のように揚げた部位が入っており、豆の様々な味や食感を楽しめる。 四皿目は、鯛のマリネに粉末状にした緑色の野菜を添えている。詳しく訊かなかったが、鯛は恐らく昆布か何かで締めており、深みのある味だ。 ここで自家製のパンが出てくる。蒸した上で焼いており、中身はフワフワだが、外側はカリッとしており、単なる添え物でなく、料理としても成り立つようなものだ。 五皿目は、シェフのスペシャルテだというマッシュルーム。薄切りにした生のマッシュルームを、ソースの上に浮かべている。このソースは発酵させたマッシュルームに卵を混ぜており、香りと食感が良い。 六皿目は、リドヴォー(仔牛の胸腺)。リドヴォーの揚げ方が見事。 七皿目は、ソテーした平目をパイ生地で包み、野菜から作った色鮮やかなソースを添えている。パイ生地は極めて薄く、ソースもとても良い。 八皿目は羊。一見単にローストしただけみたいだが、中にニンニクを練り込むなど、芸が細かい。肉汁から作ったソースも丁寧な仕事振り。 デセールの一皿目は、ヨモギを粉末状にしている。上品な甘みと軽い食感。 デセールの二皿目は、チョコレート。驚くほど大きいが、液体窒素を使って膨らませているので、しつこさは感じず、アッサリと食べられる。添えた苺のソースも上質だ。 お茶とミニャルディーズを楽しむ祭は、テラスに移動した。気温は若干低かったが、コートを羽織り、電気ストーブも付けてもらったので、和光の時計を眺めながら寛げた。 料理は全般的にプレゼンテーションが練られており、素材や食感の対比が良く考えられている。現代的に軽くても印象に残る味だ。接客は親しさを感じさせつつもプロフェッショナル。 立地、内装、料理、接客の全てが高い水準にある店だ。