鳥栄@上野池之端! 東京に大雪が降った翌日。 有閑マダムにお誘いいただき、鶏鍋の名店にお邪魔した! 1909年(明治42年)創業の老舗である。 二葉亭四迷が没し、太宰治が生まれた年だ。 近世から近代への移ろいを象徴的に色濃く感じる年代である。 まさに鳥栄は、江戸情緒を残しつつ、より洗練された明治の美を感じる佇まいであった。 小さな囲炉裏の炭火に鉄鍋が置かれ、水のように澄んだ鳥のスープが注がれる。 そこに東京軍鶏、千住ねぎ、焼き豆腐といった非常にシンプルな具材のみ。 それを、大根おろしと醤油でいただき、お好みで山椒で風味をつける。 食べ方も徹頭徹尾シンプルだ。 一部千葉県産の鶏も使われるようになったようだが、基本的にどれも東京近辺の食材で調理される。 「身と土、二つにあらず」 生まれ育った土地のものを食べる事を良しとする「身土不二」の大切さを改めて教えられた。 正肉、レバー、ハツ等を煮て食すが、まったくアクが出ずスープが濁らない。 有閑マダムBがその事を女将に訊くと、 「大変なお掃除をしているのでございます」 と説明していた。 入店してから1階の厨房から終始小気味の良い包丁の音が聴こえる。 鳥栄の名物と言っていい「つくね」を叩いている音だ。 ほとんど余計なツナギを使わず、包丁で叩いて粘りを出した「つくね」はふわっと柔らかい。 こちらもシンプルに塩でいただいてみると、鶏の滋味が口いっぱいに拡がる。 最後の香の物もスパっと包丁が入った胡瓜と沢庵。 角が立ったその切り口にも東京らしいサッパリとした美学を感じる。 奇数月の初日に翌月と翌々月の予約を一括して受け付けるというシステムから、なかなかの予約困難店である。 雪が降った真冬でも炭火で暑いと感じるぐらいだから、真夏は海パンで行こうと思う。 そういった意味では、この時期最高の雪見酒になった。 予約を取ってくれた有閑マダムAに感謝である。