記念すべき3,000投稿は、アベス@恵比寿に決めた! 今年、ある事を気づかせてくれたお店である。 19世紀末のパリにあるカフェのような、アールヌーヴォー風の内装がひどく気に入った。 ただ華々しいだけでなく、ロートレックやエリック・サティが、ボクのすぐ横で芸術談義でもしていそうな世紀末的な退廃感もある。 以前、坂本龍一が「いまの日本のバンドは日本の音楽だけでわかった気になって原典にさかのぼらない」 というような事を言って嘆いていた。 最近、これに非常に共感を覚える。 やや極端過ぎる言い方だが、ロックでもパンクでもジャズでも、もちろんクラシックでも、音楽を志す以上バッハを勉強し、模索する必要があると思っている。 現在、世の中に存在する西洋音楽のほとんどがバッハに回帰すると言っても過言ではない筈だからだ。 食や料理においても同じ事が言える。 フェラン・アドリアの「エル・ブリ」以降、分子ガストロノミーやモラキュラー・キュイジーヌが席巻し話題をさらった。 それは真新しく斬新で、科学的な解析や分析手法を用いながらも、料理を芸術の域から更に押し上げた事は、疑いの余地のない功績である。 だがその後、どこもかしこもエスプーマのソースに、黒い重厚感のある器に試験管などなど、あらゆるモダンフレンチの店で安易に取り入れられ、逆にそれが却って没個性をも助長している現状がある。 現代の料理界において、アントナン・カレームやオーギュスト・エスコフィエから学ぶ事は本当にもうないのだろうか? アベスは王道を行くビストロ料理だが、古き良きテイストの中に、生の鯖を使ったマリネなど、古典料理では有り得ない斬新な組み合わせが見て取れる。 それでいて、一流のフランス料理店でも最近見かけなくなってしまったワゴンでサーブするチーズなど、往年のフレンチの魅力が散りばめられている。 ちょうど自身のイベントで出す料理を模索していた時期で、あまり自分の中で整理ができず、もがいていた時期だった。 だが、アベスに連れて来て貰ったおかげで、古典と現代の融合や、ジャポニズムをヒントに東洋と西洋との出逢いを表現する事を思いついたのである。 (タンドリー風のマサラで味付けした秋鮭に、古典的なソースアメリケーヌを合わすなど) 19世紀末は、絵画の世界ではロートレック、クリムト、ミュシャやエゴン・シーレが居た。 音楽の世界では、先のエリック・サティやドビュッシーがいた。 世紀末派の芸術は、その語感からくる刹那的享楽主義の象徴のように思えるが、むしろ、それ以前から存在したロマン主義や写実主義、自然主義を一度古典として包括した上で、反復し、そして反発しているようにボクには思えるのだ。 アベスは、前に進むべき時こそ、もう一度古典を見習うべきだという事を教えてくれたお店なのである。 #コッピーありがとう #3000投稿