江戸前ならぬ“無国籍前”?大将の独創的なセンスと技術に脱帽です。 夜の築地はほんと静かですね。そんな静寂に包まれた中にぽっと現れる煌々と明るい雰囲気の店構え。ドアを開けるとアットホームかつ凛とした空気に包まれた、こじんまりとしたカウンターが目の前に現れます。 熟成させた寿司と肴を楽しめるお店。宴は泡からスタートです。 『しじみとムール貝のロワイヤル』 毎回出されるというお店のスペシャリテ。“洋風茶碗蒸し”とのことですが、もともとはプリンを作ろうとして生まれた一品だそう。ブランマンジェの技法を使った極々滑らかな口あたりを楽しめます。最初にいただく滲み出た出汁はバターのような風味が香るもの。とっても不思議なハマる味わい。爽やかな酸味のスパークリングともぴったりです。 『巻物 まぐろユッケとザーサイ』 ヒリっと舌先を刺激する山わさびがまぐろの甘みを引き立てます。コリっとしたザーサイにバリっと香ばしい海苔が絶妙にマッチ。 『刺身 かつお』 宮城産の6日熟成だそう。炙りの香ばしい風味が柔らかな身を包みます。“津本式究極の血抜き”が施されしっかり生臭さはなし。軽いタッチのわさび醤油と旨味がのった海苔ソース、二つの味わいを楽しめます。 『刺身 よこしまさわら』 26日熟成。これだけ寝かすとポテンシャルの高い個体はまるでバターのようになるそうです。ねっとりもっちりと溶けていきます。魚というより熟したアボカドのよう。辛み大根がキリっと全体を引き締めます。 『鮨 しろごしふえだい』 26日熟成。九州ではしぶだいと呼ばれるそう。手作りの藻塩と合わせていただく身は白身とは思えないくらい濃厚な味わい。 『鮨 しまあじ』 9日熟成。宮崎産のあじ。ここまでと比べると熟成も浅く身はほどよくしっかり。とは言っても普段のあじとは比べものにないくらいに旨みが凝縮しています。梅肉ソースの甘酸っぱさが食欲をそそります。 『すり流し 生落花生』 まさに和風ビシソワーズ。ブラックペッパーがいいアクセントです。 『煮アワビと肝リゾット』 肝ソースでいただく極々柔らかな鮑。そして余った肝ソースにひと口ご飯をダイブさせ、よーく混ぜ合わせてリゾットの完成です。最後のひと仕事があると楽しいですよね。美味しさも格別です。 『光物 にしん』 32熟成。にしんの握りなんて初めてかも。3週間以上寝かせると脂が徐々に乳化していくそうです。口にした途端、ホワっと溶ける身。ほんのり酸味が効いた味わいでさっぱりといただけます。 『酒の肴 からすみの西京漬』 1年半寝かせたからすみ。ちびりちびり齧りながら日本酒をコクリコクリ。これは酒呑みをダメにするやつだ。 『鮨 海老』 えびと聞いて想像していたものとはまったく違うものが登場。昆布〆にした白えびを卵黄醤油で漬けたもの。シャリの上に丁寧に成形して仕上げます。昆布とえびのふくよかな旨味にまったりした卵黄感。ユニークな握りです。 『焼物 鰻の西京漬』 45日熟成。皮目のクリスピーさと身のしっとり感のコントラストが見事。鰻の強い味わいは西京漬にしてもしっかり存在感を発揮します。添えられるのは脱皮したてのしゃこのミソ。これも見事な酒のアテ。 『鮨 あん肝』 あん肝と小玉スイカの奈良漬の握り。四ツ谷の銘店譲りの一品。薄切りのスイカのシャリっとした歯触りにあん肝のコク。これも最高のアテ鮨。 『酒の肴 くえの肝豆腐』 つなぎを使わずに固めた肝にポン酢のゼリーが載ります。まろやかな肝と合わさるポン酢の爽やかさ。日本酒がすこぶる捗ります。 『鮨 中とろ』 北海道は噴火湾の本まぐろ。艶やかに輝くきめ細かな身。薄く入ったサシがとっても上品。厚めの切り身は多幸感溢れますね。 『箸休め シャインマスカットと梨』 旬のフルーツの白和え。フルーツの白和えって美味しいですよね。お気に入りの老舗居酒屋でもたまにお目にかかります。豆腐でコーティングすることで甘みが穏やかになります。ほっとする最高の箸休め。 『鮨 貝類』 減圧調理で仕上げたほたて。低温で沸騰させるので、身は生のまま味がしっかりしみ込みます。鰹出汁と薄口醤油。ほたての新しい一面が垣間見えます。 『鮨 スモーク』 煙が充満したガラスカップ。煙が消えると現れたのは塩麹で〆たさば。桜チップで燻します。燻製寿司なんて初めてだ。スモーキーかつフレッシュなさば。おもしろいね。新生姜で口をリフレッシュです。 『鮨 うに』 馬糞うにを佐賀の海苔で巻いて大将から直接手渡し。海苔は香り高くバリっと歯切れのいいもの。 『鮨 穴子』 身の厚みがすごい!でも口あたりは極めてソフト。ふわっとしてライトなツメの味わいを楽しめます。 『本日の浅漬け』 アボカドです。カリリとした食感で清涼感があります。