2018年創業。白金プラチナ通り沿いの地下、かつて名店『OZAWA』の空間を継承したモダンフレンチ。シェフは『L’ATELIER de Joël Robuchon』でロブション氏の薫陶を受け、同じ白金台で『Gentil-H』のシェフとして活躍された進藤佳明さん。 アッシュ時代よりも日常的というか、普段使いの出来るフレンチなイメージ。気をてらうことなくロブションのDNAを感じさせる正統なモダンフレンチの流れを汲んでいる料理たち。調味や素材など良い意味でローカライズもされた日本人が好むフレンチの王道を軽やかにアップデートしています。 前半戦のハイライトは『焼き茄子のムースリーヌとタルタル』。クリスピーな茄子のアクセントに、コンソメのジュレと生雲丹とのバランスも素晴らしかったです。 後半戦はやはり『フォアグラのプランシャ焼き』が秀逸。「フォアグラの魔術師」と称される進藤シェフならではの逸品は季節ごとにアプローチを変えて。ラトリエでも定番の一皿ですが、ラトリエよりも削ぎ落とされてフォアグラにしっかりフォーカスされた料理になっています。 この日のポワソンはマナガツオ。茶豆のリゾットの上に米粉をまとったマナガツオが乗ります。ヴィアンドはフランスランド地方のピジョン。デセールは桃のコンポートとソルベにアールグレイのサバラン、フロマージュブランのムース。 しっかりとポーションもあって調味もどっしり。そして価格もリーズナブル。女性スタッフのサービスも心地良かったです。予約も取りやすくとても使いやすい良いお店だと思います。
2024年2月オープン。渋谷桜ヶ丘の『Shibuya Sakura Stage SAKURAタワー』内に開業した『ハイアット ハウス 東京 渋谷』のメインダイニング。赤坂からの移転になります。 「和漢洋才」をテーマにしたフュージョンキュイジーヌは、シグニチャーでもある「SHOKADO-9」が圧巻。松花堂弁当をモチーフにした豆皿料理たちは、フレンチのみならず和食や中華などのエッセンスも随所に感じられる、美味しくて楽しいメニュー。 この店のスペシャリテ「鮑のペルシヤード」は、店名のMOSSにちなんで、苔に見立てたパセリのパン粉を鮑にまとわせたもの。全体的なポーションも程よく、あまり量を食べられない女性にもオススメ。
白金プラチナ通りに佇む、グローバルダイニングのフラッグシップ。カジュアルイタリアンの『ラ・ボエム』の3階は、古城のペントハウスに広がる温室をイメージ。2024年9月に「デコントラクテフレンチ」(カジュアルフレンチ?)を新たなコンセプトに掲げたとのことで、早速お邪魔しました。 3種類のコースとアラカルトもあり、価格はリーズナブル。この日はシェフのセレクトでメニューにないコースを組んで頂きましたが、それぞれカルトでも楽しめるメニュー。ロブション出身の若いシェフのお手並み拝見です。 結論から言えば、美味しくて満足出来ました。個人的に印象に残ったのはトウモロコシのヴルーテ。こってりとしたヴルーテの底にコンソメのジュレが忍ばせてあります。これは季節によってバリエーションがつけられそう。あとは和牛のチャコールグリル。ジュドブッフを合わせた直球の一皿で、変にいじっていないのが逆に良かったです。 この料理でザックリ一人あたり一万円くらいで着地出来るのは素晴らしい。普段使い出来そうな、まさに「デコントラクテフレンチ」です。ロブションのDNAがあるだけあって、ネオクラシカルなアプローチも多く、ソースを使ったフレンチを好きな人には刺さると思います。 しかしながら、ゴージャスな内装と暗めの照明、そしてライトなBGMなどの舞台とのマッチングがどうか。レストランなのかビストロなのかブラッスリーなのかが、やや曖昧に感じました。料理もサービスも雰囲気も良いので、あとはどこをターゲットにするのが決まれば、もっと面白いお店になりそうな予感がします。 個人的にはパリの「Chartier」や「Au Pied de Cochon」に近い空気感が出せそうなので、いわゆる大衆食堂寄りにした方が白金で差別化も図れて、かつ一階のラ・ボエムとの親和性も高くなりそうに感じます。
東京浅草にある『浅草地下街』は、戦後復興で賑わいを取り戻していた1955(昭和30)年に開業と、70年近い歴史を誇る日本一古い商店街。そこに新しくオープンした焼きそば専門店。 店の名前は『ニュー小江戸』。「ニュー」の文字は上から貼り付けてあります。聞けば以前は『小江戸』という屋号の立ち飲みの店でしたが、その店も前の餃子店の屋号をそのまま使っていたのだとか。『小江戸』は浅草の地下で代々受け継がれてきた名跡なのです。 狭い厨房でフライパンを振っている店主の喜島春樹さんは元芸人で、今は登録者数7万人越えの人気YouTuberとして活躍する人物。浅草の街の雰囲気に魅せられて店をやりたいと決意、2023年7月にソース焼きそばの店『ニュー小江戸』を創業されました。 『ニュー小江戸』の看板メニューにして唯一の料理が「天才焼きそば」。麺とキャベツだけのシンプルな焼きそばに、好みの具材をトッピングして自分の好きな焼きそばにカスタマイズしていくシステム。定番の豚肉や目玉焼きの他にも、ポテサラや納豆などの変わり種の具材もあります。 通常焼きそばは中華麺を蒸したものを使いますが、こちらでは地元の老舗製麺所『浅草開化楼』のパスタフレスカを使用。本来はパスタに使うパスタフレスカを焼きそばに使うのは前代未聞。喜島さんは試行錯誤を繰り返して、一度茹でた麺に油をまぶしてから寝かせることで焼きそばでも麺のポテンシャルを引き出しています。 さらに味の決め手となるソースは数種類のソースを独自にブレンド。麺を焼く時のソースと肉や野菜などの具材を炒めるソース、さらに追いソースとそれぞれ異なるものを使う。食べるタイミングが異なるため、店内とテイクアウトで微妙に味付けを変えているのも喜島さんのこだわり。