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山路 力也さんのMy best 2015

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1

東京都

フランス料理

山路 力也

 都内屈指の人気店「Florilege」が3月にリニューアル移転。オープンして2週間後にようやくの訪問。新生フロリレージュは、おまかせのみのスタイルこそ以前のままだが、これまでのお店とは雰囲気も料理も異なるカウンター・モダンガストロノミー。店内のイメージも一新し、広々としたキッチンを三方からぐるりとカウンター席が囲むライブ感溢れるキッチンスタジアム。  「これまでのフロリレージュは7年前の自分がやりたかったこと。今回のフロリレージュは今の自分がやりたいこと」と語る川手シェフ。モダンクラシック的なアプローチだった前回のフロリレージュよりも、より攻撃的で前衛的な世界観を表現。全体的に自然の情景を描き、抽象的なワードが一つ一つの料理に添えられて。キッチンのコールドテーブルの上には石と枯れ枝のオブジェが飾られ、それが後で出てくる鱒の料理を示唆している楽しさ。モラキュラー的なエッセンスもほのかに感じさせながら、13皿3時間超のショータイムはまったく飽きさせる暇がない。  フロリレージュは自分の通っているフレンチの中でも常に三本の指に入る店であったが、今回のリニューアルでさらにそれが強くなった。今後も季節ごとに足を運ぶことになるだろう。 #デート #口説ける

2

東京都

フランス料理

山路 力也

 8月にオープンする来栖けい氏の新しいレストランをフライング訪問。エキュレの閉店後、しばらく動きがなかった来栖さんが満を持してオープンさせる店とあって、早くも話題になっている。  素材と真正面から向き合い、まず最高の素材を求めるところから始まる料理作り。最高の素材を手に入れたら、その素材を最大限に生かすための調理法を考え、素材の味を引き立てる調味を施し、さらにはその料理だけのために作られたオリジナルの器と合わせる。  フォアグラのリゾットは米、水、フォアグラのみで構成され、そこに驚く程のサマートリュフが振りかけられる。村上氏のランプ肉は焼いては寝かし焼いては寝かしを繰り返しトータルで6時間かけて火入れする。調味も最低限の塩と胡椒だけ。  余計なソースなどはかけないし、無意味な付け合わせもない。皿の上には必要なものしかない。彩りや見栄えの為だけのソースや付け合わせの代わりに、その料理を引き立てる為の器がある。その料理だけのために器を作るのはその為だ。  来栖さんの料理へのアプローチと素材の捉え方、料理理論を聞きながら食べれば、なお一層その料理の理解が増す。とは言え、そんな説明はされなくとも料理として単純に力強く美味しい。他では決して味わえない料理の数々は、驚きと楽しさに満ち溢れている。

3

京都府

フランス料理

山路 力也

 2015年6月、祇園甲部にオープンしたモダンガストロノミー。オーナーシェフの山地陽介さんは、長年パリでアラン・デュカス、ジョエル・ロブションなどを経て、9区の「L'Office」でシェフを務めるなど、パリのガストロノミーシーンの第一線で活躍してきた人物。日本のフレンチをやる、と考えた時に京都という街が最適だと思ったのだとか。  古くから残る町家建築をリノベーションした店は、その落ち着きあるファサードから期待を高めてくれる。元々は祇園のお茶屋だった場所をリノベーションした「町家フレンチ」だが、店に一歩入ればパリのモードでもあるネオビストロの佇まい。カジュアルな雰囲気だがサービス、テーブルウォッチもノーストレス。  料理はクラシックというよりもコンテンポラリー、ボーダレス。モダンガストロノミーのエッセンスも香らせつつ、押し付けがましくない料理が次々と繰り出される。イカを軽くソティしたカルボナーラ仕立ての一品や、伝助穴子の黒胡麻ソースなど、印象深い料理がたくさん。食器は全部オリジナルで信楽焼に釉薬をかけたもの。食器の土の質感に、テーブルの木の質感と相まって、料理を引き立て包み込む。

4

石川県

寿司

山路 力也

 1972年創業、金沢で一二を争う人気寿司店。野々市市の住宅街の一角にある店は、一見ごくごく普通の街の寿司屋。しかしながら、県内はもとより県外からも予約が相次ぐ人気の店なのだ。店主の高谷進二郎さんは常に寿司の美味しさを研究し続けている人物。旨い素材を究極まで旨く握る。その信念をひたすら貫き続けている職人だ。それでいてにこやかにお客さんと会話をしながら、優しい接客でお客さんを楽しませてくれる。  その仕事は精緻で奥深く、寿司の一つ一つが作品とも呼べるような美しさと美味しさを持つ。その中でも高谷氏のスペシャリテが「のどぐろの蒸し寿司」。地元金沢産ののどぐろを酒蒸しにした温かい寿司は、創作寿司という陳腐な言葉で表現してはいけないような、高貴で矜持に満ちた逸品。この一皿だけを食べるために金沢まで足を運んでもいい。

5

東京都

フランス料理

山路 力也

 3月外苑前にオープンしたばかりのフレンチ。「カンテサンス」出身の若き料理人、目黒浩太郎氏が29歳の若さで独立。しかも場所は「フロリレージュ」の跡地。それだけでニュース性が高い注目の新店だが、その料理の独創的な世界観もまた素晴らしい。  フロリレージュと同じエントランス、同じレイアウトであるにも関わらず、店名の通り「深海」をイメージした壁にショープレートなどを使い、新しい空間に生まれ変わっている。  修行先のマルセイユの三ツ星レストラン「Le Petit Nice」で魚介類の美味しさに開眼。魚の奥深い可能性に触れて「魚介フレンチ」というジャンルを切り拓くべく、敢えて肉は使わずに魚介だけでメニューを構築。魚に向き合うのは日本人の方が長けている、という考えから、時には白醤油などを使う事も厭わない。  料理はお任せ一本でアミューズからデセールまで10皿。どの皿も創作意欲に溢れて、攻めの姿勢が感じ取れるものばかり。アミューズの「オマール海老のビスク」は周りがサクッと中はとろっとした食感のコントラストが素晴らしく、スペシャリテの「スープ・ド・ポワソン」は力強く大胆な調味が刺激的。他にも日向夏とフォアグラ、蟹を合わせてみたり、魚介の様々な楽しみ方を表現してくれる。  常々「作り手の顔の見える料理」を好んでいる私だが、Abysseの料理はどれも目黒シェフの熱い想いが伝わってくる。フレンチのある意味キラーコンテンツとも言える「肉」を封じた、その孤高の気合良し。間違いなく一年も経たずに予約困難の店になるはず。そして、目黒シェフの料理もどんどん進化していくはず。だからこそ、走り始めたばかりの今のAbysseを食べておくべきだ。 #デート #口説ける

6

東京都

イタリア料理

山路 力也

 小石川伝通院に程近い場所にある小さなレストランは、オープンキッチンのカウンター10席全てがシェフズテーブル。「世界一予約が取れないレストラン」としてその名を馳せた、スペインの三つ星レストラン「エル・ブジ」をはじめ、ミラノやベルガモなどで料理人としてのキャリアを積んだ茂呂岳夫さんが、2009年に満を持して自分の店を立ち上げた。  数年前よりその提供スタイルを一新。おまかせコース一本だが、前菜だけでも10品近く、合計で20種類近くの料理が次々と繰り出される。最初から使うすべてのカトラリーが目の前に積み上げられ、それが一本ずつなくなっていくことでコースの位置が分かるのもまた楽しい。  肝心の料理はイタリアンをベースにモラキュラーテイストも散りばめ、随所にシェフの遊び心が感じられるもの。常に楽しさやサプライズを考え、料理にアクションが施されたコースは、前菜からデザートまで息つく暇もなく徹底的に楽しませてくれる。 #デート

7

熊本県

寿司

山路 力也

 熊本市内から車で2時間。風光明媚な天草で食通たちを唸らせ続けている寿司屋。店主の村上安一さんは一見さんにも常連さんにも分け隔てなく、一つ一つのネタを説明しつつ、時には冗談も言いながらテンポよく寿司を握ってくれる。  魚はもちろん地元天草の魚を使う。漁港から直送される魚はその日の朝に獲られたものが昼には寿司になる。この鮮度の良さ、速さはいくら築地に近い銀座の寿司屋でもかなわない。そしてその新鮮なネタをそのまま出すわけではなく、一つ一つの寿司にしっかりと仕事が施されている。だからこの店で醤油の出番はない。  どれも印象に残るものばかりだが、中でも特筆すべきは天草のムラサキウニの握り。しっかりとした技術があれば、海苔の軍艦は不要なのだ。そんな大将お任せの12貫を楽しんで、さらに気になるネタも握ってもらって、それでお酒を入れても5,000円程度で収まってしまう。この寿司が食べられるなら2時間のドライブも苦ではない。

8

東京都

ハンバーガー

山路 力也

 2015年12月、代官山にオープンした黒毛和牛ハンバーガー専門店。代官山といっても鎗ヶ崎交差点に程近いので恵比寿からも徒歩圏内。基本的にはテイクアウトをイメージしている店なので、イートインスペースは4席。こちらに限らず言えることだが、ハンバーガーは出来たてが一番美味しい。可能であれば店内でイートインをオススメしたい。  こちらは炭火焼肉の名店「なかはら」が手掛ける店で、恵比寿にあった「黒毛七厘」と同様、なかはらで一頭買いしている黒毛和牛種の肉を使用している。「焼肉屋として真剣にハンバーガーを作りたかった」と語る中原さんが作るハンバーガー。バティはもちろん黒毛和牛100%で繋ぎなしのものだが、厳密に言うとパティではなく粗めの挽肉そのものである。それを注文を受けるごとに鉄板で油を切りながらプレスすることによって、肉が結着してパティ状になるのだ。肉汁を蓄えつつもさっぱりと食べられるのは鉄板で油切りをしながら焼き上げているから。グリルだと油は切れ過ぎてしまうし、鉄板だと油が多過ぎる。その部分に着目してオリジナルの鉄板を作り上げるあたりはさすがだ。  ハンバーガーで最も重要なのはパティとバンズのバランス。力強い存在感を持つなかはらの肉を受け止めるバンズは、新進気鋭のベーカリー「馬場FLAT」によるオリジナル。軽めで素朴な質感のバンズがしっかりとパティとソースを受け止める。プレミアムバーガーにありがちなパンの個性を一切主張せず、完全に脇役に徹しているのも素晴らしい。自家製のソースもパティと野菜を引き立てて、一体感の演出に一役買っている。そしてビーフはシングルとダブルがあるが、間違い無くダブル推奨。比較的小振りなバーガーなのでダブルでもペロリといけるだろう。  ハンバーガーに対してはさほどの思い入れもなければ、実食している軒数もマニアに較べれば多くはない。しかしこれまで食べたハンバーガーの中で、間違い無く三本の指に入る逸品であったことは断言しておこう。

9

東京都

フランス料理

山路 力也

 7月20日、六本木の路地裏にオープンしたフレンチ。代官山の人気フレンチ「ル・ジュー・ドゥ・ラシエット」で6年にわたりシェフを勤めた髙橋雄二郎氏が満を持しての独立。店内は最近のトレンドでもある木の質感を生かしたカジュアルな雰囲気ながら、落ち着いた空間になっている。  料理はおまかせのみ。ラシェット時代よりもさらにモダン・ガストロノミーの色合いが強くなっており、コースは少ポーション多皿の構成。フィンガーフード、アミューズを数点から始まり、デセール、プティフールまで飽きさせない料理が次々と続く。  旬の素材を使い、その季節の光景を皿の上に現出させるプレゼンテーションは、ラシェット時代から高橋シェフのもっとも得意とするところ。四季折々でどのような料理を見せてくれるのか。これからがますます楽しみなフレンチの登場だ。 #デート

10

福岡県

居酒屋

山路 力也

 洒脱な飲食店が多い春吉エリアのはずれ、住吉橋に程近い場所で人気の新進店。魚を中心にしつつも和にとらわれず、肉も洋風のものも美味いものなら出す、といういわゆる博多スタイルの居酒屋だが、その中でも質、量、価格などで非常に抜きん出ている存在ではないかと思う。1ヶ月で3回行くなど、個人的にもかなりヘビーローテーションしている店だ。  落ち着きある雰囲気の店内は、広めに取られたカウンター席の他にテーブル席もあるが、オススメは断然カウンター席。なぜならこの店のキラーコンテンツは、糸島船越漁港で仕入れた天然の魚たち。テーブルだと刺身の盛り合わせになるが、カウンターだとそれらを寿司店のように一品ずつ提供して貰えるからだ。野菜も糸島産の朝採れ野菜を仕入れにいっているそうで、野菜本来の味が楽しめるものばかり。  もちろん肉料理、創作料理なども豊富に揃う。スペシャリテであろう「アスパラガスのカルボナーラ」や、締めがチーズフォンデュ風になる「一週間かかるビーフシチュー」など、魅力的なメニューがたくさんあるので、何を食べたらいいかメニューを選ぶのに苦労するはず。そんな人は「おまかせ」をお願いすると良いだろう。少量で色々食べたいなどリクエストにも応じてくれるので、相談しながら頼めばきっと自分好みのメニューと出会えるはず。私もここではおまかせ以外を頼んだことがない。  お酒含めても一人5,000円程度で収まるのも普段使いするのに最適。一人メシでも、カウンターでデートでも、テーブルで女子会でも、TPOに応じた使い方が出来るのもポイント高。さらに深夜まで営業しているのも個人的には大歓迎。この店を知ったことで福岡での夜が俄然楽しくなった。