Kiyoshi Fujioka

Kiyoshi FujiokaさんのMy best 2024

シェアする

  • facebook
1

東京都

寿司

Kiyoshi Fujioka

「鮨 きのした」は、六本木の国立新美術館から西麻布に少し下った所に在る。大将の名前は、店名と異なり中村慎亨氏という。 集合住宅(マンション)の2階に在る店は、7人掛けのカウンターのみ。明るくも侘びを感じさせる内装。種のケースの代わりに保管棚が有り、冷蔵庫で冷えた種の温度をここで少し戻してから握るという。 魚介類の摘み数種の後に握りが続く。品数が多いので、感想は一部についてのみ。 僕はシャコを余り好まないが、この店のシャコの摘みは、タレが良いこともあって、美味しく感じた。 鮑の摘みは弾力感が有る。肝から作ったソースは、少し卵黄を混ぜており、ネットリとした背徳感のある食感。これは素晴らしかった。 鰻は蒸すのでなく焼いて、パリっとした食感にしているのが良い。 握りの舎利は、程よく酢を効かせており、舎利が強い個性を主張するのでなく、種を引き立てるような感じ。 烏賊の握りは、弾力と柔らかさのバランスが良い。 鮨屋で余り見かけないキスも、意外と鮨でも行ける。 コハダも僕は余り好まないが、この店のは酢の効かせ方が強すぎないので、楽しめた。 僕は個人的に大トロより赤身の方が好きだが、鮪の赤身の握りは鉄分を感じさせる上質なもの。 雲丹とイクラは鉄板の美味しさ。 穴子の握りは口の中で解れていく。煮切りのタレも美味しい。 玉子は工夫を凝らしている。椎茸などを細かく刻んだトロミのある出汁を添えており、これが効果的だ。 最後はトロたくの太巻きを手渡しで。 巨峰と洋梨のデザートは上品な味。 摘みも握りも水準が高い。大将と二番手は快活で、場の雰囲気が和む。満足した。

2

東京都

フランス料理

Kiyoshi Fujioka

2年振り2回目の訪問。 l'élan(レラン)は、高級感に溢れ、古典を踏まえながらも現代的な料理を楽しめるフランス料理店だ。2年前の初訪問の時に比べて、更に料理が進化していた。 場所は原宿の近く。照明は暗めで、内装も暗色で落ち着いた雰囲気がある。見晴らしが良く、渋谷の高層建築を眺められる。同じフロアに系列のビストロが有り、それと厨房を共用している。コースにペアリングを合わせた。 「アンチガスピヤージュ グジェール フォアグラ さより」 アミューズ ブーシュとして幾つかの品が供される。コンテ チーズのグジュールは、しっとりとした食感。鳥から出汁を取ったスープは滋味溢れる味わい。サヨリに乳製品を併せた品は、滑らかな食感で、添えた豆が味にアクセントを加えている。フォアグラと生のマッシュルームの組み合わせも良い。 「赤貝/フクユタカ」 筍と赤貝は、上品な食感。 最近の店にしては珍しく、パンも店で焼いているそうだが、このバゲットは出色だった。合わせるオリーブ油は、とても濃厚で旨味が有る。 「高農園 うえのはらハーブガーデン  藏光農園」 続く皿は、一言で言えば野菜のサラダだが、これはとても手が掛かっている。多くの素材が盛り込まれているが、それぞれに微妙に異なる調理が施されており、複雑な味わいが生まれている。 「アスペルジュブランシュ スミイカ 晩白柚」 ロワールのアスパラガス(日本産はまだ季節が早い)は、素材が良く、多少硬めに茹でている。スミイカとの意表を突く組み合わせも効果的。 「リードヴォー トルテリーニ  モリーユ ヴァンジョンヌ」 リードヴォー(胸腺)は粗野と上品さのギリギリの境を狙った品で、モリーユ茸との組み合わせが複雑な食感を生み出している。ヴァンジョンヌというワインのソースも見事。 「甘鯛 セロリラブ トマト スープドポワソン」 甘鯛の鱗焼きは、鱗が微かに焦げた出色の焼き方。乾燥したトマトには驚いた。旨みが凝縮されており、かつ甘味も有る。様々な魚から取ったスープは深い味わい。 「ベットラーブ 塩釜 デュッカスパイス」 塩釜焼きにしたビーツを、スパイスに付けて食べる。単純そうだが、手間の掛かる調理で、燻製香が効果的。 「太刀魚 加賀レンコン フヌイユ」 太刀魚の焼き方自体は和食みたいな感じだが、ソースでフランス料理に着地している。 「七谷鴨 パネ ジュ」 シンプルだが見事な焼き方。ソースや野菜の付け合わせも良い。 「フロマージュ」 最近の店にしては珍しく、フロマージュが(オプションでなく)コースに組み込まれている。種類が多く、質もとても良かった。 「せとか ヨーグルト ローズマリー」 口直し的な位置付けの品。柑橘系の酸味をヨーグルトが円やかにしている。 「コスモポリタン」 その場でソムリエがシェークしてカクテルを作るという演出が面白い。 「苺 メレンゲ バジル ソーテルヌ 柚子 ヴァニーユ」 とても凝ったデセールだ。苺を基調として、微かな酸味が味を整えている。メレンゲは儚い食感。 「マカロン ピスターシュ ガナッシュ カシス ブラリネ コロネ」 食後はハーブ ティーで締め括った。お茶菓子も水準が高い。 ソムリエ兼給仕の説明はとても丁寧。詳細な来店記録を取っているみたいで、我々が前回訪れた時のメニューに会話の中で触れることに、驚いた。 食中と最後の二回挨拶に来てくれたシェフは好青年。 各皿とも驚くほど手間が掛かっており、素材の組み合わせや調理方法が練られている。皿数と分量が極めて多いので、皿数を若干減らしても満足度は変わらないと思う。全般的に現代的でありながら、フロマージュのように老舗の名店みたいな楽しみもある。シェフの信太(しだ)竜馬氏は若干35歳。驚くべき才能だ。

3

東京都

フランス料理

Kiyoshi Fujioka

SéRieUX? (セリュー)は六本木のフランス料理店だ。ラルジャンの系列店なので期待して訪問したが、期待に応える素晴らしい店だった。 立地は六本木ミッドタウンと新国立美術館の中ほど。かなり大きなカウンターと、テーブルが2卓有る。カウンターは盛り付けや配膳に使われて、調理はその奥の厨房で行なうが、厨房と客席との仕切りはガラスで、調理の様子を遠くから眺めることができる。カウンターの色は灰色で、天井は黒。簡素だがモノトーンの内装はカッコいい。テクノ調のBGMが流れている。 コースが皿数に応じて2種類有り、皿数の多い方を選んだ。メニューのそれぞれの皿に素材の産地が記されているのは、ラルジャンと同様。 ペアリングは量に応じて3種類有り、480mlを選択したが、ソムリエが継ぎ足ししてくれたり、ラルジャンが好きと言ったらデザート ワインをおまけしてくれたので、全体ではかなりの量になった。 先ずは小さなフィンガー フードが五つも供される。 キャビアを載せたスミイカは、スミイカのねっとりした食感とキャビアの粒立ち、そして下に敷いた揚げたチップスとの組み合わせの食感が心地良い。 車海老は揚げており、全て食べられる。 フォアフラは少量で、アイスクリームのコーンのようなものに詰めており、しつこさを感じない。 穴子も毛蟹も堅実な味。 蛤の前菜は印象的だった。下に漉したジャガイモで作ったソースを敷き、ホワイト アスパラガスなどを添える。そこに火入れが浅いが高温の蛤とその汁を掛け、更に海草で作ったソースを掛ける。蛤と海草が香り高い。蛤の弾力感、ジャガイモの漉した滑らかさにアスパラガスがアクセントを加え、複雑な食感が生み出されている。 次は蕎麦粉のガレットという変化球。ペアリングはシードルという遊び心。 色々な魚介類のアラから引いたスープドポワソンは、上品な濃厚さ。蛍烏賊も美味しい。 アカハタは、身が半生で皮が微かに焦げているという卓抜な火入れ。ハーブなどから作ったソース ヴェルドレットは爽やかな味。 猪は出色だった。豚よりは旨みが有りながらも、臭みは全く無い。脂身は軽く揚げており、脂身が苦手な僕も食べられた。オレンジやワインから作ったソースは、軽いが存在感の有る味。 キウイとフロマージュ ブランシェで口直し。 抹茶とピスタチオとショコラの組み合わせは、適度に濃厚。抹茶とショコラの組み合わせは相性が良い。 系列店のラルジャンと同様に、食材の組み合わせや食感が良く考えられている。未だ知名度が低いせいか、料理の質を鑑みると料金は安め。再訪したい。

4

東京都

フランス料理

Kiyoshi Fujioka

L'ARGENT(ラルジャン)は、かつて銀座四丁目交差点に在ったが、去年霞ヶ関に移転した。前の店舗を含めると通算4回目の訪問。 新店舗は、長いカウンターとテーブル2卓に個室1室。カウンターも客の間には十分余裕が有る。天井が高く、黒や灰色を基調色とした内装はシック。クラブ ミュージックがBGMとして流れている。 先ずは、デンマークのエブルスキーバーという品。チョウザメを傷つけずに採卵するサスティナブルキャビアとワサビの組み合わせをパンケーキで包んでいる。ワサビの鼻に抜ける微かな辛さが心地良い。 ニシンのマリネは脂が乗っている。 静岡県の地金目は昆布締めにし、皮を炙っている。更に梅のジュレや、液体窒素でパウダー状にしたホースラディッシュも添えられ、複雑な味となっている。 フォアグラは普通のそれとは異なる。掛川茶のソースとの組み合わせにより、しつこさを感じさせず、適度にネットリとした味わいだ。静岡産の食材が多いのは、シェフの出身地だから。 シェフのスペシャルテだという発酵マッシュルーム。薄切りにした生のマッシュルームを、ソースの上に浮かべている。このソースは発酵させたマッシュルームに卵を混ぜており、香りと食感が良い。 鹿児島県の赤座えびは、杉の木で包んで香りを移している。ソースは、シーバックソーンという柑橘類を使い、微かな酸味が有る。多彩な味や香りの要素が、絶妙のバランスを保っている。 和歌山のマナガツオは、香ばしく火を入れている。レモンをアクセントに、マグロの出汁と合わせている。付け合わせのズッキーニ(?)は、緑色と黄色が折り重なり、色彩設計も考えられている。 主菜は豚のスペアリブ。濃厚な旨味の赤身と、非常に融点が低い脂を合わせ持つ素材。脂身はしつこさが無く、美味しく食べられる。かなり攻めた品だが、肉で個性を出せる店は少ないので、こういう試みは良いと思う。 一つ目のデセールは、種子島のパッション フルーツと月桃に、泡状のソースを載せている。この店は酸味の使い方が上手い。 二つ目のデセールは、アイスクリームと蜂蜜の組み合わせ。食用花が添えられている。スタッフが花を盛り付けている様子がカウンターから見られるが、気が遠くなるような細かい作業だ。 食後の飲み物が何種類か有り、緑茶を選んだ。良いお茶だろうが、抽出をもう少し薄くした方が良いと思う。お茶菓子も上質。 カウンターを活かして、シェフが直接接客するスタイルに変わった。 料理は全般的にプレゼンテーションが練られており、素材や食感の対比が良く考えられている。現代的に軽くても印象に残る味だ。

5

東京都

天ぷら

Kiyoshi Fujioka

4回目の訪問。 天よこたは、 麻布十番の天麩羅屋だ。人気がかなり高く、予約を取りにくい。店内は8人掛けのカウンターのみ。 最初に供された蛤の出汁が素晴らしく、その後への期待が高まる。 醤油に漬けた牡丹海老は、上品な甘みが素晴らしい。 その後は天麩羅となるが、品数が多いので、全般的な感想のみ。海老、キス、帆立貝、 穴子などの定番に加えて、とうもろこしやマッシュルームなどの変り種も供される。 とうもろこしは甘味が有るが、意外にも天麩羅にしても美味しい。マッシュルは、ペースト状にしており、香りが立ってくる。帆立貝は、レアに近い揚げ方で、そのまま供した後に、海苔に巻いた磯部焼きとしても供する。 衣は薄く、揚げ方はとても軽くて精妙。スダチか塩かカレー粉か天汁で食べるが、個人的には、魚は塩かカレー粉で、茄子などの野菜は天汁で食べるのが良いと思った。 最後は天丼か天茶だが、僕は天丼を選んだ。少し甘いタレで締めくくり。 店主の横田氏は、職人気質ながら新たな試みにも積極的に取り組んでいる。