「鮨 きのした」は、六本木の国立新美術館から西麻布に少し下った所に在る。大将の名前は、店名と異なり中村慎亨氏という。 集合住宅(マンション)の2階に在る店は、7人掛けのカウンターのみ。明るくも侘びを感じさせる内装。種のケースの代わりに保管棚が有り、冷蔵庫で冷えた種の温度をここで少し戻してから握るという。 魚介類の摘み数種の後に握りが続く。品数が多いので、感想は一部についてのみ。 僕はシャコを余り好まないが、この店のシャコの摘みは、タレが良いこともあって、美味しく感じた。 鮑の摘みは弾力感が有る。肝から作ったソースは、少し卵黄を混ぜており、ネットリとした背徳感のある食感。これは素晴らしかった。 鰻は蒸すのでなく焼いて、パリっとした食感にしているのが良い。 握りの舎利は、程よく酢を効かせており、舎利が強い個性を主張するのでなく、種を引き立てるような感じ。 烏賊の握りは、弾力と柔らかさのバランスが良い。 鮨屋で余り見かけないキスも、意外と鮨でも行ける。 コハダも僕は余り好まないが、この店のは酢の効かせ方が強すぎないので、楽しめた。 僕は個人的に大トロより赤身の方が好きだが、鮪の赤身の握りは鉄分を感じさせる上質なもの。 雲丹とイクラは鉄板の美味しさ。 穴子の握りは口の中で解れていく。煮切りのタレも美味しい。 玉子は工夫を凝らしている。椎茸などを細かく刻んだトロミのある出汁を添えており、これが効果的だ。 最後はトロたくの太巻きを手渡しで。 巨峰と洋梨のデザートは上品な味。 摘みも握りも水準が高い。大将と二番手は快活で、場の雰囲気が和む。満足した。