『2022年 フーディスト和久井の印象に残ったこの10軒』 10軒目 2020年創業の知る人ぞ知る鮨屋。 店名の由来は、大宮にある地酒酒屋の石丸酒店さんの横で角打ちをされていたことからきている。 ご主人の沼里裕幸氏は立ち飲み居酒屋を営みながら独学で鮨を学び、2011年10月から営業している高級立ち飲み屋「たちのみいしまる」を2020年8月に鮨屋「いしまる」としてリニューアルオープンさせた。 店内は一直線の白木のカウンターが印象的な凛とした空間が広がる。席はカウンター8席のみ。 鮨は独学とは思えない握りの完成度と一体感、そして鮨通を魅了する握りの進化と変化に他ならない。 シャリは赤酢に加糖をし甘みをプラスした、酸味・塩味・甘味ともにどちらも際立ち過ぎない、硬さや温度も好みなもの。 白身の種、味の濃い種、脂がのっている種の持ち味を万能に昇華している印象。 ●白甘鯛 神経〆 2.6キロ 福岡から直仕入れ 脂乗りも軽やかで切りつけも薄めで握りの導入としての穏やかな一貫。 仄かに昆布の旨味と後から昆布の香りが追いかける。 ●白星笛鯛 福岡から直仕入れ シコッとした強い食感に強い甘味があり、旨味の余韻が舌を喜ばせてくれる。 ●鱚 身はしっとりとそしてふわりと溶けスーッと柔らかなみがシャリに溶け込む。 昆布の香りほぼなく微かに旨味を添加している。 ●鮪赤身 酸味は主張せず鉄分のようなざらつきある風味。 切りつけに妙によりねっとりと崩れる柔らかなとした食感が存分に味わえる。 ●鮪小トロ この時期とは思えないねっとりとして余韻の残るまったりとした脂が舌上に留まる。 酸味がある事で脂の甘味が引き出され強調される。 ●鮪中トロ巻物 ねっとりとした口触り。叩かれたことで表面積が増し舌に旨味が強く伝わってくる。 パリパリ感が心地良い海苔がコクを与えてくれる。 ●小鰭 比較的キリッと効かせた酢の良い香りが抜け、少しエッジの残ったしめ加減だが酢による身の荒れなくしっとり。 脂乗りは穏やかなため乳化は少なく、シャリとタネの複合的ま酸味のコントラストが楽しい。 ●鯵 竹岡 飾り包丁による効果でサクッとした歯切れとプリッとした食感を強調。 旬の鯵らしい香りの高さとしっかりとした脂の旨味が感じられる。 ●新イカ 塩とスダチで。 面は仄かに粘着質が引き出されつつもサクッとした歯応えと甘味が舌に残る。 ●石垣貝 プックリと肉厚の身で甘みが強く瑞々しい。貝らしい甘味に満ちている。 ●平貝 温度は低め。サクッとした歯切れの後にほんのりとした甘味が広がる。 ●海胆・いくら小丼 初物のいくらは水に付けず赤酒とうすくち醤油で味付け。薄めの味付けの奥からグッと旨味が押し寄せてくる。 海胆はまったりとしながらもクリーミー。 まさに説明不要な小丼。 ●車海老 愛知蒲郡 茹で上げの車海老を芝海老のオボロ挟みで。 火は完全に入り切りブリブリと。天然らしい綺麗な色味と上品な甘みと香りが素晴らしい。 ●穴子 江戸前 此方は身の厚みや脂乗りは穏やかで脂もしっかりとのりトロトロ、皮目のゼラチン質も軽くトロリと存在。 繊維質を感じさせない仕事が見事。 ●玉子 しっとり感があるカステラスタイル。甘みは控えめ。