『2020年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 10軒目 2017年創業の築地本願寺の裏手に店を構える鮨店。 ご主人の青木桂太氏は、札幌の『鮨菜 和喜智』を皮切りに、『鮨 水谷』で2年半、『鮨 太一』で3年半と名店を渡り歩きながら研鑽を積み30歳で独立し、数々の名店で学んだ江戸前鮨の技を融合させた鮨を提供している。 店内は、華美な装飾を排した温もり溢れる空間で、席は檜のカウンターを囲む8席のみ。 佐渡島産のコシヒカリを使用したシャリは、コクのある赤酢をしっかり効かせた奥深い味わい。 口に含めばグッと酸が立った強い香りを放ちながらパラリとほどける。 鮨ダネは、シャリとの一体感のある味わいを意識し、熟成や酢〆などを過度ではなく、素材の持ち味を引き出すことに専念した仕事を施している印象。 ⚫︎本鮪赤身漬け 赤身は数分の現代風即席漬けで。 潤いのある身質は滑らかで、赤身特有の酸味は抑え目ながら旨さが映える。 ⚫︎本鮪中トロ 濃厚な脂の切れが良く文字通り舌の上で溶けていく。 満足度が非常に高く、各味覚に語り掛ける直球な味わい。 ⚫︎小鰭 肉厚な小鰭は2日寝かし旨みを引き出す仕事が施されている。 口に入れた瞬間に塩と酢が程良く溶け合い、咀嚼する度に旨味が溢れる。 後から、清々しい風味が口中を吹き抜ける。 ⚫︎真鯛 明石 野〆の真鯛2枚漬け 香りが高い真鯛は、じわりと舌に旨みが感じられる。 ⚫︎煮蛤 煮ツメ無しで供される煮蛤は、柔らかさの中にもプリッと弾力のある歯応えがある。 噛み締めれば旨味たっぷりの汁が迸り、豊潤なコクがじんわりと染み渡る。 ⚫︎イクラ軍艦 名残のイクラ皮が柔らかく、プチッと噛めば至福のひと時が訪れる。 ⚫︎鰆 とろけるような柔らかな身が口の中で甘さと強い旨みと共にとろけていく。 食べた後の余韻の長さに驚きを覚えるのも魅力。 ⚫︎鰤 口に含めば濃厚な脂と酸味が立ち、食べ進めるほどに旨味が増してくる。 その脂は煮切りをパッとはじくほど。 ⚫︎車海老 ピタリと火入れが決まった車海老は肉厚の超大車海老。 豊かな甘味のほかに車海老の香りを深く味わえる。 ⚫︎鱵 プリッとした食感と歯応えを楽しんでいるうちにやがて深いコクに頷いてしまう。 鱵にこんな底力もあるのかと新発見。 ⚫︎スミイカ 横須賀 3日寝かせたスミイカはパツンとした噛んだ時のキレの良さの後に旨味が続く。 ⚫︎蝦蛄 ふんわりした食感に続き甘味がにじみでてくる。 シャリとの穏やかな調和は極上。 ⚫︎春子 軽やかな酸味とふくよかな旨味が合わさり口福に満たされる。1 ⚫︎鯖 鯖の重層的な味を演出する仕事が施されている。 とろけるような舌ざわりとシャリとの抜群の相性は思わず微笑んでしまうほど。 ⚫︎ホッキ貝 表面を軽く炙ったホッキ貝は香ばしく、艶やかな甘味を含む汁が迸る。 ⚫︎帆立貝 淡白な味ながら、とびきりサックリした歯ざわりは心地良い。 ⚫︎海胆軍艦 坂井の海胆 口溶け良く甘みもしっかり香りも良い。 ⚫︎穴子 塩とツメで供される。 身はしっかりと見えますが、口の中で程よい時間存在した後にゆっくり溶ける。 ⚫︎玉子 きめの細やかな食感でまんべんなく空気を含んだ凛とした仕上がり。