Masayuki Wakui

Masayuki Wakuiさんの My best 2017

シェアする

  • facebook
1

北海道

寿司

Masayuki Wakui

『2017年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 10軒目 創業は2000年。地元・北海道産のとびきりの海の幸と築地などの魚河岸から仕入れた旬鮮な食材の両方の持ち味を存分に愉しむことができる鮨屋。 ご主人の中港大将氏は、札幌の「すし善」、東京・天現寺「笹岡」での修行後に2代目として店を継ぎ、先代のお店「港寿司」から場所を替えて「鮨みなと」をオープン。 店内はカウンター席のほか個室や座敷などで構成されており全部で90席もある大箱。 凛とした趣溢れる空間ながらもアットホームな雰囲気が流れ、一見客としても居心地の良さを感じさせる。 鮨は、江戸前鮨ならぬ蝦夷前鮨。 江戸前の粋と蝦夷前が融合された鮨は、江戸前の伝統的な細やかな職人の技により心に残る味へ導く。 ●松皮鰈 どこまでも上品で淡白。 くりっとした歯触りと、さっぱりとした食味の中にもほのかな甘みとざわめくような旨みがあり、口中から消えても後味が残る。 ●ボタン海老 濃い甘みが強く且つねっとりと舌に絡みつくような官能的な口当たり。 1日氷の上で寝かせることで、この強い甘みが引き立つ。 ●中トロ ほど良い脂のりの中トロは、グラデーションの美しさがある。 脂や赤身の酸味が溶け合い、噛み締めればコクある脂と深みをしっかり感じる。 ●北寄貝 軽く炙って供される。 蠱惑に満ちた香りが鼻腔をくすぐり、繊維質を噛み切る食感がよく、艶やかな甘みを含む汁がほとばしる。 ●鯵 淡路 釣り鯵 美しい飾り切りが施された鯵。 葱をすりおろした薬味がアクセントに。 強めに〆られた肉厚の鯵は口に入れると上質な脂の甘みがジュワッと広がり爽やかな酢の香りが後を引く。 ●毛蟹 噴火湾 軽くボイルした毛蟹は蟹味噌をのせて供される。 口に入れればみずみずしくも繊細な舌触りとほのかな甘みと甲殻類の旨みの詰まっている。 蟹味噌の濃厚さも言わずもがな。 ●バフン海胆とムラサキ海胆の小丼 余市産のバフン海胆とムラサキ海胆のスペシャルな小丼。 口に入れば広がる濃厚さとクリーミーさがあり香り高く甘み旨みの余韻が長い。 バフン海胆とムラサキ海胆の良さが重なってえも言われぬ至福の味わい。 ●イクラ軍艦 新物のイクラ。 噛めばプチッと弾け、ほろりととろける舌ざわりと、鮭の卵ならではのまったりとした 食味に出会える。 ●穴子 対馬 皮目を炙って脂の旨さを引き出した穴子。 ふっくらとした口当たりのあとにまろい舌触りが広がる。 噛み締めれば穴子独自香りが鼻の奥に抜ける。 ●干瓢巻き しっかり味付けした昔ながらの干瓢は、香り高い海苔でいただく。 ほっとする甘辛さは〆に相応しい。

2

島根県

割烹・小料理屋

Masayuki Wakui

『2017年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 9軒目 昭和9年創業の鮎の専門料理店。 日本有数の清流として知られる高津川の流れの間近に立つこの店は、創業から極上の天然鮎料理を出すお店として全国の鮎好きの方に知られている。 もともと旅館として創業しており、贅をつくした室内には国有林の木材を用い、欄間は京都から取り寄せるなど繊細な細工が施され、歴史を感じられる落ち着いた風情がある。 鮎の質を落とさないよう鮎の釣り人を約200人契約して確保していることにも、鮎料理の名門としてのプライドが感じられる。 料理は厳選された高津川産天然鮎だけを使用したコースで、鮎の塩焼きやうるかなどのほか、新鮮な鮎だからこそ味わえる背ごしなど。 背ごしは薄く筒切りにし供される。 生の甘い鮎の身とさっくり柔らかな骨の感触を山葵で味わう。 口に含んだ瞬間に鮎の香りと身の甘みが口中に広がり、余韻が長く続く。 またゴリゴリとした食感は背ごしならでは。 清汁仕立ては焼いた鮎を椀種にした香り豊かなお椀。 すだちを搾った素朴な出汁が天然鮎の味を引き立てる。 あっさりしながらも深みがある上品な味わいで、焼いた鮎から出る香ばしさによって食欲をさらにそそる。 塩焼きは鮎の良さが一番わかる料理。 急流で成長した天然鮎は顔がとがり、ひれも立派で姿が美しい。 新鮮な鮎を生きたまま串刺しにし、表面はパリッと中はふっくらと焼き上げている。 遠火でじっくり焼かれた鮎は、頭からかぶりついても硬さは感じず、骨からも旨みが引き出されている。 そして香りが素晴らしく慈味に満ちている。 いい鮎は焼いている最中からよい香りがするという。 鮎めしは鮎特有の旨さが米の中まで染み込みこんだ逸品。 食べる時に箸でほぐし、ご飯に混ぜ込む。 中骨を抜いてあるので、小骨を気にせず熱いうにち食べることができる。

3

北海道

イタリア料理

Masayuki Wakui

『2017年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 8軒目 周囲をカラ松林に囲まれながらひっそりと佇んでいる予約必須のレストラン。 店内は、白とアイボリーが基調でカジュアルな雰囲気。 レンガとナチュラルウッドでコーディネイトされ清潔感が溢れ、どこからも景色が楽しめるよう全席が窓際になっており、晴れた日には雄大な十勝岳連峰が窓を飾る。 シェフの才田誠氏が生み出すのは、美瑛の四季や食材に寄り添った素材ありきのイタリアン。 美瑛で感じる四季のイメージをもとに地元食材をふんだんに使う料理は、美瑛イタリアンと称するそう。 ただ美味しいだけではない、食べる人が感動し長く印象に残る料理を目指し日々自分の感覚や経験を総動員して考え、多くの時間とエネルギーを費やし仕込みをしている。 長年生産者へ足を運び、信頼関係を築いた生産者から仕入れる、いまがまさに旬という食材が皿を彩る。 美瑛産ピュアホワイトを使ったとうもろこしスープは、夏だけの限定品。 砂糖不使用なのに濃厚ですっきりと甘い。
とうもろこしの旨みが存分に感じられ、滑らかな舌触りで余韻に浸っていられる。 こちらのコーンスープほど美味しいのは食べた事がない衝撃の一皿。 カンパチと自家菜園のバーニャカウダは、見た目にも美しい一皿。 各野菜の食感が素晴らしく、野菜の青味、甘さ、苦さなどの要素がバランスよく保たれており、野菜本来の旨みを邪魔しないソース塩味が◎ 函館産塩水うにと生蛸の手打ちパスタタリオリーニは、見るだけで美味しさを想像できる。 手打ちパスタの上には、黄金色を讃えた美しい塩水うにと鮮度抜群の生蛸がバランスよく添えられている。 相反する食感のコントラストが素晴らしく、塩水うにとパスタの温度感が絶妙。 滝川の合鴨のローストは、ライブ感溢れる一皿。 合鴨のローストはパリッと焼かれた皮目と、しっとりとした中心部の対比が鮮やかで、噛みしめるほどに旨みが増す。 添えられた男爵新じゃがはホクホク、コーンは瑞々しい。

4

東京都

寿司

Masayuki Wakui

『2017年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 7軒目 雑居ビルの一角に暖簾を掲げる鮨ダネを開花させる鮨屋。 こ主人の山田裕介氏は元大工。 無類の鮨好きが高じて、独学で鮨を学び鮨職人になったという。 また、鮨好きが惚れる鮨オタクぶりに共感がもてる握りにこだわる技巧派の職人でもある。 鮨は、店主おまかせコースの1本のみで、繊細なタネの緩急をつけたストーリー構成で15貫。 つまみはもとよりガリも一切出さず、潔く握りから始まる。 寝かせる期間や温度、湿度を変えながら既成概念を覆し供される鮨には、訪れる度に毎回発見と驚きがある。 ●鮃 青森 あまり寝かしていないのでフレッシュ感がある。 魚体の水分をコントロールすることで、淡白ながら奥に秘めた旨みが存分に引き出だされる。 ●クエ 長崎 シコっとした食感にジワリと強い旨みがしみだしてくる。 シャリと調和してやみつきの味わいに。 ●イトウ 湯引きし漬けにした幻の魚。 身の色の美しきに感激し、味の良さにまた感激する。 ●椎茸 徳島 石突を取って炙ったしいたけ侍の椎茸。 山の鮑というだけあって食感が心地よくと旨みが濃厚。 ●平貝 この貝ならではの歯触りが魅力。 身がしまり、シコっと食感が強く、独自の苦味と風味が感じられる。 ●赤貝 口に入れた途端に強い甘みがあり、赤貝らしい磯の香りが鼻腔を抜ける。 ●イクラ イクラはシャリと共に飲み干せるよう箸を使わず小鉢で供すことで、口中でイクラとシャリが混ざって、出会ったことのない一体感を表現する。 ●車海老 酒煮しているので、茹で置きなのに甘いが強い。 旨味がギュッと凝縮された身の食感と甘味がなんとも言えません。 ●鰆 厚めに切られた身はとろけるような柔らかさで、春の鰆のような強い旨味を感じる。 ●小鰭 1枚漬けのサイズを丸漬けしたプレミアム小鰭。 筋がなく端正で綺麗な理想な握りは、脂がほどよく口溶けし酸味がかすかに感じられる。 江戸前の繊細な仕事に感服。 ●玉子 蛤や帆立など4種の貝柱をすりつぶし作られた上質なカステラのような玉子は、貝の重層的な旨さがある。

5

東京都

寿司

Masayuki Wakui

『2017年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 6軒目 外観の美しいアプローチが印象的な雑居ビルの3階にある鮨屋。 ご主人の渡部佳文氏は、湯島「一心」で修業を積み、板長を26年間ほど務めあげた方。 その際、柳橋「美家古鮨本店」の四代目で握りの神様と呼ばれた伝説の職人・加藤博章氏から直接指導を受け、 その後2012年に独立し現在のお店を開業させた。 店の内装は鮨屋を造らせたら日本一と言われる寿司屋専門内装業者であるアサクラが手掛けたもので、凛とした空気が漂う。 鮨は、江戸前ならではの技と心意気が宿る正統派。 小鰭の酢洗いやハマグリの漬け込み、コクのあるツメなど、いずれのタネもひと手間かけた江戸前の仕事ぶりが光る。 ●星鰈 透き通ったその身はきめが細かく心地歯触り。 噛み締める程に深い旨みが溢れてくる。 ●白烏賊 もっちりと舌触りとほどよい固さでサクッとかめる。 噛むほどに清涼感と繊細な甘みが融合する。 ●新子 今しか食べられない夏の風物詩。 噛み締めれば、絶妙に〆られた柔らかい身から優しい旨みが溢れてくる。 酢と新子の旨味がひとつになり喉の奥に心地よい余韻が長く残る。 いつまでも味わっていたい握り。 ●車海老 身の大きさもほどよく海老の濃厚な旨みを存分に楽しめる。 ●鰯 鰯の脂を強い〆加減により風雅と言われるほどの食味が生じてくる。 梅肉餡を加えることで絶妙なバランスを引き出している。 ●本鮪赤身 艶やかな赤色に決め細やかな肉質。 噛むほどに深い酸味とコク、そして香りが脳を刺激する。 ●本鮪中トロ 赤身の酸味とコク、そしてきめ細かくさっぱりとした脂が口中でさらりととろける。 ●海胆軍艦 しっかりと食感はあるが直ぐに舌の上でとろけ、磯の香りが口中に広がる。 ●穴子 表面はパリッと中はフワフワ。 噛めば脂の旨みとシャリが絶妙に混ざりあう。 穴子の魅力が全て引き出された素晴らしい仕事に脱帽。 ●玉子 表面はカステラのよう質感だが中はしっとり。 卵の甘みと香ばしい帆立の風味で思わず笑顔になる。

6

山形県

フランス料理

Masayuki Wakui

『2017年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 5軒目 地元の旬食材を惜しみなく使ったフランス料理が堪能できるレストラン。 店名の「Nico」の由来ははお客様に心から笑顔になっていただきたいとの願いからとのこと。 コンセプトは「酒田でしか味わえないフランス料理」 その為、魚介や肉、野菜はもちろんのこと、ハーブから塩などの調味料まで庄内産にこだわる。 例えば月山筍など在来野菜の個性と存在感を余すところなくフレンチに生かしている。 オーナーシェフの太田舟二氏は、、3代に渡るフレンチの料理人の家に育ち、自然と料理人を志したそう。 渡仏等の修行後に「レストラン欅」で6年経験を積み、独立し「Nico」をオープンさせた。 お父様は太田政宏氏は、酒田フレンチの礎を築いた第一人者として知られる方で、現在は「ロジアス」の顧問の傍ら食の都庄内親善大使として各地へ庄内の食の魅力を伝える。 酒田フレンチは50年の歴史があるが、こちらの料理はその進化形ともいうべく、地元の旬食材をいかに変身させ、酒田らしさをどう表現できるかを追求している。 今回は食べたい物や旬の食材を相談しながら組み立てていくシェフおまかせコースをセレクト。 岩牡蠣を軸に、だだちゃ豆やバイ貝など旬の庄内産の食材が皿を飾りました。 桃と岩牡蠣のマリネは爽やかなミントの香り舞う。 岩牡蠣本来の味わいと磯の香りは桃とミントにより優しく包まれている。、 濃厚なミルクを携えた牡蠣と甘さと酸味を兼ね備えた桃、鳥海高原ヨーグルトをフリーズドライしたパウダーの調和により出会った事のない味覚を感じることができる。 岩牡蠣と桃の相反する食感の組み合わせは、心地良い食感を生み出している。 夏のスペシャリテでもある黒バイ貝のコロッケ ブルゴーニュ風は、アートを思わせるような繊細な盛り付けで色彩も鮮やか。 黒バイ貝のコロッケにナイフを入れると、さっくりと揚がった軽い衣からジュワッと汁が溢れ出し、地元で採れる黒バイ貝が顔を出す。 ガーリックがアクセントになった黒バイ貝の濃厚な旨みと濃緑のパセリソースの相性は絶妙。 メインを飾る山形牛フィレ肉のローストは庄内野菜を添えて供される。 フィレ肉を繊細な作業の繰り返しをすることで、肉汁も赤身の旨味もすべてジューシーに閉じ込められ、噛みしめるほどに赤身の旨さと肉を食べている本能的快感がじわっと広がり幸福感に包まれる。 庄内の海と大地で育まれた食材の無尽蔵なポテンシャルに、新しい可能性を感じることができました。

7

東京都

焼き鳥

Masayuki Wakui

『2017年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 4軒目 焼鳥と多彩な一品料理をコースで存分に満喫できる進化型の焼鳥店。 ご主人の今井充史氏は、銀座の「バードランド」北千住の「バードコート」の焼鳥の名店で修業を重ね満を持して独立。 以前は千駄木で営業していたが2016年11月に外苑前に移転し、30席のスタイリッシュなカウンタースタイルの店に変貌させた。 料理は、軍鶏などを主体にしたコースがベースで、特別な串をお好みで追加するスタイル。 厳選した食材ひとつひとつの作業全てに対する細やかな心遣いはまさに職人技。 独自のコースのストーリー構成が素晴らしく、従来の焼鳥に対する概念をいい意味で刷新してくれる。 ●鳥スープ 香りはスッキリで味は濃厚。 あっさりながら奥行きのある旨味があり、塩味抑え目。 ●レバーのパテ コニャックの風味が効いたレバーパテ。 甘みが強くレバー独特の苦味なしや臭みなし。 香ばしい焼き加減のハードパンとの相性もよし。 ●磯辺焼 ささみの磯辺焼きは想像以上にレアな火入れ。 ささみと海苔と山葵の組み合わせは、まさに進化形とりわさ。 ●マーメラス いんげんとえんどうの掛け合わせたもの。 甘みが強くいんげんの変な青臭さもなく、ぷちっと弾けるような食感が心地よい。 ●レバー 純米酒を振り仕上げにバルサミコ醤油と黒胡椒を効かせたレバー。 絶妙な火入れで、甘さの中に濃厚なコクがある。 舌にのる下側に塩、上側に黒胡椒をして味と香りをより際立たせる。 ●紅芯大根 やや焼き目強い印象。 火を入れることで甘みが増す。 ●軍鶏のもも焼き 皮がパリッと軽やかで、身はしっかりした弾力と肉汁に溢れている。 噛み締める度に旨味が重複していく。 ●シャンピニオンドパリ バター風味で香り高し。 ●つくね(パクチー入り) パクチーとの合わせ技。 パクチーが主張し過ぎない絶妙なバランス。 旨みたっぷりの肉汁が閉じ込められているのは職人技の串打ちがあってこそ。 ●葉っぱのサラダ 醤油ベースのドレッシングで味付け。 さっぱり口直し。 ●はちべえトマト はじめに強い甘みが訪れ後から酸味が追いかけてくる。 ●砂肝 出会ったことがない軽快な歯切れの砂肝。 脂肪がほとんどなく、コリコリした歯ざわりと塩により引き立つ甘味が特徴。 砂肝独特の臭みはなし。 ●ねぎ間 脂とコラーゲンが溶けて旨みに変わるまで、しっかり火入れされた正肉と香ばしいネギ。 タレはあっさりで、旨みの余韻を長く楽しめる。 ●ひも 胸肉とあばらの間の肉の名称。 プリプリでジューシーでありながら歯ごたえも良い。 コクのある旨味もしっかり。 ●丸ハツ 食感、凝縮した濃い旨味が魅力の丸ハツ。 噛み締める度に段階的な旨味があり、香ばしい香りも高い。 ●焼鳥土鍋まぶし 小さな工夫が随所にきらめく土鍋まぶし。 肉は抜群の火入れでプリっと、お米はしっかり立っている。 塩分のバランスが良い理想の焼鳥めし。

8

神奈川県

寿司

Masayuki Wakui

『2017年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 3軒目 閑静な住宅地の一角にひっそりと佇む鮨屋。 ご主人の堀勇一氏は、横浜と東京・新富町にあった名店で修業後、もともと出身地である茅ヶ崎で開業。 店名は、心を豊かにする寿司を握りたいと命名したそう。 店内はカウンター5席と個室が2部屋のみのこじんまりした清潔感あふれる空間。 白木と白壁で構成された簡素で清潔な佇まいは、ネタの鮮度や作りこみに舌を集中させることのできる雰囲気が漂う。 こちらでは、築地、横浜、湘南地物と、3つの市場からの鮨ダネ用い、江戸前の技で鮨の真髄を味わうことができる。 客の来店時間に合わせて炊き上げたひと肌のシャリは、横井醸造の赤酢と米酢をブレンドしわずかな紅色を感じる仕上がり。 スタート時やや温か目のシャリは、握っているうちに冷めていき中盤で見事に調和する。 ●フッコ 塩〆。 柔らかなうちにも張りのある歯触りがあり、淡白な味わいの中にも特有の滋味と甘みがある。 ●アカムツ 口に入れると体温でトロける部分と、しっかり食感が感じられる部分の2層が何とも贅沢な味わい。 ●ダルマイカ 透き通るかの美しい身は、クリクリとした歯触りで心地よい。 淡白な中に秘める甘みは、噛みしめるほどにごく穏やかに口中に広がる。 ●鰹 勝浦釣り鰹 藁焼きの加減良く香りもしっかり残っている。 皮目と赤身の旨味が絶妙で、ほんのりとした甘さと爽やかな酸味を感じる。 ●本鮪大トロ ボストン 口に入ればシャリは当たらず噛みしめることで旨味が一気に溶け出してくる。 ●鯖 八戸 しっかりと〆られ玉ねぎを組み合わせた鯖。 脂がのった身にしっとり酢がなじみ、まろやかで熟成された旨さを感じる。 ●車海老 宇部 絶妙な温度で引き立てられた甘さが口中を支配する。 ●イシガケ貝 甘さと肉厚な身、ほどよい食感。 ぷっくりと肉厚の身で甘みが強く、貝らしいみずみずさと旨味に満ちている。 ●海胆軍艦 利尻 塩水海胆 美しく輝く最北の島のうには夏の逸品。 口の中でとろける深い甘みと、ふんわり広がる磯の香りが堪らない。 シャリの塩で引き立った海胆の甘さがやってくる。 もちろんミョウバンは無し。 ●干瓢巻 干瓢の歯応えが絶妙。 甘辛いその味が全体を引き締める。 ●玉子 砂糖と塩だけで調味した玉子焼はさっぱりした味わい。 ●鯵 淡路 軽く酢洗いした鯵は、身はふっくらしていて脂がほどよく回っているが、 立て塩を優しい〆加減と酢にくぐらせたことで後口は爽やか。

9

千葉県

割烹・小料理屋

Masayuki Wakui

『2017年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 2軒目 漁師の主人が営む本物の漁師料理が味わえるお店。 お店は山の上の住宅地にある知る人ぞ知る一軒家だが、 訪れる客は地元の人以外に、東京から日帰りする常連客、釣客、別荘族、など様々。 地元の漁で獲れた魚を素材にするこのお店にはメニューはない。 旬魚を最大限に生かした8品ほどの料理がおまかせのみで、漁師らしい気前の良い価格設定が特徴。 この店の名物料理である酢なめろうは、新鮮なアジをなめろうにして、氷を浮かべた酢に浸し供される。 アジはその日に揚がった上物を使用。 この日のアジは、内房保田の金アジ。 提供時は一般的ななめろう同等の色合いだが、酢〆の影響で時間の経過と共に表面が白くなり、中身はレア肉のような赤身の食感が残る。 さらに時間が経つ程に酢〆加減が進みウエルダンの状態になる。 味わいはもちっとした粘りがある食感。 表面の酸味と青魚の独特の旨みが強く、青唐辛子の適度な辛さがあることで飽きもこない。 金目鯛煮付けは洗練された味付け。 身は煮込んでも煮崩れなくプリプリとしており、煮汁が染みこみ過ぎず金目鯛そのものの味が感じられる。 濃厚な煮汁に身をくぐらせると金目鯛の出汁と煮汁の甘みで重厚感が増した味わいなっており、ご飯が進むこと間違いなし。 魚を知り尽くした主人だからできる漁師料理を食べるためだけに、季節を変えて訪問したくなるお店でした。

10

栃木県

寿司

Masayuki Wakui

『2017年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 1軒目 創業45年を超える言わずと知れた宇都宮を代表する鮨屋。 店内は、鮨屋特有の敷居の高さがなく気軽に立ち寄れる雰囲気が漂う。 以前は街場寿司の様相だったが改装され、カウンターは白木、小上がりはテーブル席にと高級感漂う落ち着いた店舗に。 ご主人の石田典之氏は2代目。 当初は一般的な街場の寿司屋として握りや刺身を中心に扱っていたそうだか、少しずつ珍しい鮨ダネや洋の要素を取り入れた鮨を振る舞うようになったとか。 鮨は、旬と産地にこだわった天然魚を使用。 魚の種類で熟成と寝かせを使い分け、伝統的な江戸前の仕事をこなしながらも、鮨に馴染みのないものも積極的に取り入れている。 シャリは、やや硬めで温度低め、酢と塩は弱め。 〆ものは酢が強めな印象で、漬けものはやや塩分が高め。 ●真鯛 引き締まった身で、ひと噛みごとに旨味がにじみ出る。 あおさのような上品な磯の香りが鼻に抜ける。 ●ノドグロ昆布〆 銚子産1kgのノドグロ 皮は綺麗な赤色で、身は白身で脂がしっかりとのり上品な味わい。 昆布〆にすることで旨味が凝縮。 ●白魚桜の葉蒸し 桜の葉で蒸し、春の香りを俟とった白魚の仕事が施されている。 生白魚の苦味はなし、 ほんのりした桜の香りが口中に余韻を残す。 ●メヌケ漬け 輪島産3.7kgのメヌケのヅケ きめの細かい身質は艶やかなツヤが色っぽく、上品な脂がのり甘みを強く感じる。 ●〆鯖 ほどよく残った塩気が鯖の旨味を引き出し、脂で味がぼけていくのをやや強めに〆た酢が止まらせている。 まろやかな舌触りが印象的。 ●青柳 色が美しい艶やかな身は小気味よい歯触りで、ほどよい甘さと磯の香りを感じる。 ●春子鯛 あっさりした味わいでクセがなく瑞々しい。 黄身酢のオボロをアクセントに。 ●金目鯛炙り 熟成させた御宿産金目鯛の炙り 8日程寝かせた熟成感が素晴らしく、炙ったことで皮目の下に詰まった滋味がより引き立っている。 ●赤身漬け 酸味と鉄の味が入り混じり、かすかなざらつきを持つ赤身の表面に醤油がほどよく染み渡り、どっしりとコクがのる。 ●雲丹 岩手県産赤海胆 口に入れると、噛む前から海藻と土が入り混じったような独自の香りが鼻に抜ける。 ●トリ貝 グッと噛みしめられる肉厚の殻付きトリ貝。 トリ貝特有の噛み心地と、ふんわりと舌にのってくる甘味に脱帽。 ●小鰭 しっとりな食感ながらきっちり〆られていて、上品ながらに力強い味わい。 ●干瓢巻 甘めの醤油で煮付け干瓢はシコシコと弾力がる食感もシャリとうまくバランスが取れている。