『2015年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 10軒目:北海道函館市 7月訪問 珍しい地元食材を駆使した料理が堪能できる通のみぞ知る隠れ家割烹。 食材の持ち味を最大限に引き出し、美味しいものを作り続ければ地方へも客がやってくるということを示しているお店です。 そんなお店には、絶妙な味覚センスを持つご主人が作る料理を楽しみに、遠方より遙々訪れる食通や地元の常連客が通います。 舌の肥えた大人達を魅了する料理はベースは和食ですが、自身の感性を自由に生かしその食材にあった最も美味しい調理法で料理を提供してくれます。 そのこだわりは、自家製のからすみや、網元から直送の通年食すことができる鮭児、イベリコ生ハムと幅広い。 上物の食材を使い、一品一品の調理にかける細心の注意とこだわりは見事なもの。 旬味いっぱいの料理をリズムよくいただいていると、箸を止め眺めてしまう皿が次々現れます。 派手でなくともご主人のこだわりが滲む料理に、自然と心が打たれてしまいました。 ●岩牡蠣 自家製のブレンド塩が牡蠣の表面にうっすらぬられた状態で提供されます。 ご主人曰く、この食べ方が純粋な牡蠣の味を一番味わう方法とか。 しっかりとした味ながらクセがなく、白子のようなとろみがある。 ●蛸刺し 26キロの水蛸をご主人自らが茹であげる。 丁寧かつ鮮やかに包丁があてられた刺身に、自家製の泡立てた醤油をつけ食す。 茹で加減が申し分なく、柔らかな食感の中にも弾力があり、甘みの強いみずみずしい美味しさは真蛸をこえる。 ●海老真丈 昆布出汁の中で真丈を茹でたあと、さっと油で揚げられふっくら仕上がった真丈。 通常の真丈とは異なる香りと凝縮した海老の旨みが脳裏に刻まれる。 ●河豚煮こごり 函館の寝付き河豚を使った煮こごり。 味付けは薄味で、河豚の皮や身がたっぷり入っています。 舌にとろけるような柔らかさがあり、旨味が強く余韻が長い。 ●烏賊刺し 美しいスルメイカの身に青南蛮をのせていただきます。 醤油の塩味に加えて青南蛮のほんのりとした辛みがマッチして極上の甘みをより引き立たせてくれる。 ●甘海老の外子漬け なかなか出会えない珍味は絶妙の塩梅。 噛めばプチプチと卵が弾け、快楽的なまでのまったりした食味に出合える。 ●鯨しぐれ煮 素材の輪郭がうかがえる優しい味付け。 鯨の食感もよく、コクのある甘みが上品という具合に。 ●とうきびのスイーツ とうきびの濃厚な香りと甘みを活かしながら上品な味わいのアイスに仕上げています。 手作りならではの素朴さとやさしさが嬉しい。 ごまかしのない直球勝負の美味。 センスあふれる美食度の高い料理を心ゆくまで楽しむために、また行きたくなる。 知らず知らずに人に自慢したくなる一軒でした。