Masayuki Wakui

Masayuki WakuiさんのMy best 2014

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東京都

寿司

Masayuki Wakui

『2014年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 10軒目 本年度、最も印象に残った店である。 撮影禁止だったので、ひたすら鮨に集中し食すことができた。 渾身の技で仕上げる鮨と心意気が詰まった渾身のパフォーマンスが堪能できる名店。 店内は掘りごたつ式のカウンター8席で、洗練された美と和の雰囲気が漂っている。 ご主人の中治勝氏は、金沢の料亭での修行後、家業の鮨屋を四代目として継ぎました。 当初は酒肴も提供していたとのことだが、現在はおまかせ握りのみ提供しています。 また、特徴なのが17時半と20時からの完全二部制ということ。 スタート時刻が決まっている理由は、炊きたてのシャリを味わって欲しいということだそうで、時間の経過と共にでシャリが変化していくのを感じることができる。 シャリは、タネの風味を引き立てるため砂糖は使わず煮詰めた古代米を使用した赤酢と 塩を合わせ作られています。 吟味したネタは、粗塩をまぶして熟成させているのが特徴。 なかでも印象に残ったのが石宮から仕入れる大間の本鮪。 鮪の大きなブロックからのサク取りパフォーマンスが始まり、赤身と中トロを人数分切り分け全てヅケにする。 上質な本鮪なのに、生では提供しないところにご主人の矜持と心意気を感じる。 ご主人の食べ方の指南や、全てフル解説で直手渡しなど賛否両論があるのも頷けるが、それも鮨愛があってこそ。 良い意味で安らぎと美味を与えてくれる異質の鮨屋だと思えた。 ●墨烏賊 歯切れが良く噛み切れその瞬間身がねっとりからみつき、凝縮された豊かな甘味が広がる。 ●平目 脂ののった腹の部分にえんがわ、そして蒸した肝を一緒に握られる。 淡白な白身はしっかり寝かされており、ねっとりした舌ざわり。 品のいい旨味が十分に引き出されている。 ●赤貝 身の赤みが強い上物。口に含めばまず渋みが広がり、追って甘味と旨味が押し寄せる。 ●小鰭 熟成期間が異なった二貫の提供。しっとり柔らかな〆具合は食指を進ませる。 個人的には熟成期間が長い小鰭が好みであった。 ●赤身漬け 時間差で二貫の提供。 ご主人に指南された通り舌の上で3秒寝かせてゆっくりと噛みしめれば、此の上無い至福の時間が訪れる。 醤油の香ばしさをしっかり染み込ませた赤身は旨味が凝縮しており、上質な本鮪特有しか味わえない酸味もしっかり感じることができる。 ●鰆 脂がたっぷりのっていてとろけるような食感に強い甘味がある。 ●中トロ ご主人に指南された通り舌の上で3秒寝かせてゆっくりと噛みしめれば、舌の上でとろけ鼻腔からほのかな酸味が抜けていく。 食べた後の余韻が非常に長く、喉の奥まで旨味が堪能できる。 ●牡蠣 軽く火入れされた牡蠣は持ち前の甘味と潮の香りに苦味が加わり、生とはまた違った味わい。 ●いくら 軍艦ではなく握りで提供。 噛んだ時に皮を感じないほど柔らかく、さらりとした旨味がある。 ●真鱈 白子茹でたての熱々で提供。 とろりとして濃厚ととろける食感で、舌の上に残る旨味の余韻が長い。 ●寒鰤 きっちりと熟成させてある身の凝縮感は何ものにも替え厳く、舌の上でとろけ出る脂の質に寒鰤の凄み感じる。 ●ずわい蟹 太い脚が鎮座する捌く前のずわい蟹の様は圧巻。 繊維質の身の間から染み出る甘味が強く、それでいて後味は驚くほどすっきり。 ●鉄火巻き 赤身と中トロが同時に堪能でき、青々しい風味に海苔がワンランクレベルが高い鉄火巻きに仕上げている。 ●干瓢巻き みたらし団子のたれのように琥珀色の干瓢に海苔パリっとして噛むごとに干瓢の和三盆の甘味が広がる。 ●玉子 芝海老をすり身を使っており、きめの細かい食感とほのかな甘さがある。 #マイベスト2014 #名店 #マイベスト10

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神奈川県

寿司

Masayuki Wakui

『2014年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 9軒目 閑静な住宅にひっそりと店を構える孤高の名店。 ご主人の相澤裕氏は自分一人で切り盛りできる店の規模に拘り、カウンター6席の完全予約制の店を、2011年10月にオープンさせました。 自分の理想の店をつくるため常に食材にもこだわり、毎日築地に通い続け自ら直接目で見て手で触り仕入れをしたネタで握った江戸前の真髄を感じる鮨を提供している。 鮨は、鮮度にこだわり選りすぐりのネタに一手間加えるものもあれば、そのまま味わうものもある。 肝心のシャリは塩と白酢をがっちりきかしているが、いたずらにシャリが主張することなく、ネタと絶妙のバランスを見せる。 ダイナミックにして繊細な味わいは、まさに江戸前鮨の伝統に固執するのではなく、常に現在の鮨のあるべき姿を念頭に置いて仕事をしている。 【酒肴】 ●銀杏 好い味の塩が振られて火入れも絶妙。 ●黒鮑 佐渡島 ひと手間かけた深い味わい。 噛むほどに濃厚な旨みがじんわりと口の中に広がります。 ●蝦蛄 大分 ふくよかな甘味があり、その陰から持ち前の野性味をのぞかせる。 ●自家製からすみ 宮崎 いい塩梅なレア具合が実に楽しい。 ●あん肝 余市 蒸し具合が抜群で心地よい甘さが後を引く。 脂肪分が多く、ねっとりふっくらしています。 ●真鱈白子昆布焼き 根室 昆布焼きにすることで適度に水分が抜け、白子の濃厚さが際立ちます。 ●子持ちヤリイカ 青森 柔らかさが際立ちもちっとした食感が魅力的。 素材の持ち味を引き出した薄味が嬉しい。 【握り】 ●鮃 明石 脂がのっている証拠として身がうっすら飴色。 締まった身はクセがなく、脂がのってほのかな甘みがある。 ●すみいか 出水 純白な身を口に含めばねっとり。 噛みしめるほどに甘味が広がっていく。 ●細魚 三陸 産卵前の大型のものかんぬき。 真っ白な身で身が凝縮してねっとりし、後味にほんのり苦味がくる。 ●本鮪赤身 和歌山 むちむちでややしっかりとした歯ごたえ。 トロには負けない個性的な味わいをかなでる。 ●本鮪中とろ 和歌山 旨味が入っており、なおかつ軽やかな風味が押し寄せる。 鮪独自の旨味と上品な脂のコクが酢飯と相まって口の中に広がる。 ●車海老 愛知 こちらでは生きた車海老を目の前で蒸して提供。 凝縮された甘味は塩ゆでのものとは違い余韻も豊か。 ●小鰭 愛知 この輝きが上物の証拠。 塩と酢の絶妙な〆加減で身が締まり、爽やかな味。 ●赤貝 閖上 赤の色合いが強い上物。 口に入れた途端に甘みがあり、独特の渋みを伴った味が口中に広がり、 貝らしい軽やかな海の香りが鼻腔を抜ける。 ●北紫雲丹 羽衣 きめの細かい食感と濃厚な味わい。 キレのある甘味と海苔の香りのバランスがいい。 ●小柱 北海道 淡い色の大きな粒。 さくさくとした歯ごたえと潮の香りが鼻腔にぬける。 ●穴子 対馬 ふっくらとした食感が快感。 柔らかく口でほろりととろけるほど柔らかい。 ツメはさらりとしていて甘さは控え目。 ●玉子 芝海老のすり身をたっぷり使用しておりきめの細かい滑らかな食感が特徴。 ふっくらとしながらもしっとりした後味。 まるで極上スイーツのよう。 #マイベスト2014 #名店 #マイベスト10

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福岡県

寿司

Masayuki Wakui

『2014年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 8軒目 「天寿しを知らずして、九州の鮨を語るなかれ。」と云われる席数僅か5席の名店。 二代目のご主人天野功氏が父親である初代が考案し確立した「九州前」を継承し守り続けています。 「九州前」とは玄界灘をはじめ九州近海で獲れた地物を使い、仕上げに煮切りではなくカボスと塩を振りかける素材も味わいも幅広く洗練された技が冴えわたる握り。 ネタには飾り包丁を入れたり、薬味を乗せたりとひと手間かけるのもその特徴です。 カボスと塩でいただく独自の食べ方は、玄界灘をはじめ近海で獲れた地物の美味しさを最大限に引き出している。 そしてバランスの良い酢加減のシャリは、小毬のように小さく丸くやや柔らかい。 また、酒もつまみも一切出さず、客は握りを食べることに集中するスタイルが素晴らしい。 他ではまずお目にかかれない緻密で独創性のある記憶に焼きつく鮨といえよう。 ●鮪 口の中でとろけるような舌触りと上品な旨み それでいて脂のしつこさがまったくと言っていいほど残らない。 ●赤烏賊 雲丹・飛子のせ 飾り切りした赤烏賊に雲丹と飛子をのせ、にんじんやかぼちゃの粉などでコーティングした錦ごまをふった美しい一貫は芸術品。 烏賊の透き通るかの美しい身に目でも楽しめる細工が施され、口に運べばくりくりとした歯触りが心地よい。 ●〆鯖  茗荷・羅臼昆布のせ 〆過ぎない生鯖の舌触りと独自の生気が味わえると共に、茗荷と羅臼昆布が更なる旨味を高めている。 ●帆立 肉厚の帆立にやや甘めのツメが塗られているが、押しつけがましくないほどの艶麗と成熟を感じさせるのがいい。 ●平目 肝のせ 上質な平目の旨みと、肝の旨みが口の中で一つに溶け合い、幸せな余韻を残す。 比較的淡白なヒラメの身にこの肝がググッと押し広げるように味の深みが広がります。 ●太刀魚 梅肉のせ 皮目が香ばしく炙られて脂が熱で活性化された抜群の火入れ。 太刀魚の旨味と梅肉の酸味合わせる旨味の相乗効果は、まさに計算された組み合わせです。 ●河豚白子軍艦 表面はこんがり香ばしく、中はトロリとまるでミルクのような食感。 白子内部に熱がこもって白子の旨味を最大限に引き出しながらシャリと調和する。 ●中トロづけ  鮪節や鮪のアラからかとった出汁に漬けられています。 やや甘めの柔らかい漬け加減ながら、鮪の香りよく食した後の余韻が長い。 ●茂魚 瀬戸内海ではアコウと呼ばる高級魚。 もちっとした食感で旨味が豊か。 淡白な中に秘める甘味は、ごくおだやかに口中に広がり柑橘の爽やかな風が吹き抜ける。 ●車海老の頭 序盤で頂いた車海老の頭を炭火で炙られてカリカリな状態で提供。 まるで、塩気の丁度良い上質な海老煎餅よう。 ●穴子 はらりと口の中で崩れるほど柔らかく煮上げた穴子はツメを塗られ白ごまがアクセント。 香ばしさと甘味が絶妙。 ●玉子 甘さ控えめの優しい味。 ●お吸い物 玄界灘の魚介の旨味をたっぷりまとわせた贅沢な椀。 #マイベスト2014 #名店 #マイベスト10

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東京都

寿司

Masayuki Wakui

『2014年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 7軒目 正統派の江戸前鮨がいただける名店。 ご主人の高橋青空氏は、札幌「すし善」、銀座「すきやばし次郎」の名店で修行を積み、2006年12月に銀座に自身の鮨店「青空」を33歳でオープン。 名人の技を継ぎながらも、他方で師匠の料理に対する姿勢に疑問をもち理想とする自分の鮨を磨き続けています。 つまみを充実させているのも、主人が修行中に思い描いていた理想像と感じる。 鮪は熟成させて深みを引き出す、小鰭はしっかり〆る、穴子は触れるだけで崩れる程に柔らかく煮るなど、極上なネタを最上の状態で提供するなど仕事は王道。 また、炊き上がりから1時間半までのものしか使用しないこだわりのシャリは酢が効いてキリッとしており、その酸味を生かしたシャリがネタの良さを際立たせている。 【酒肴】 ●銀杏 火の入れ方、塩加減が絶妙で銀杏の香りが漂う。 ●梭子魚刺葱添え 梭子魚の刺身に刻み葱が添えてあります。香ばしさが鼻腔に抜け、舌に甘味がくる。 ●平目刺し・蒸しあわび 平目は、脂がのってほのかな甘味がある。蒸しあわびは、ざわめくような磯の香りと、 ぷりぷりとした舌ざわりが幸福を呼ぶ。 ●鱧松茸出汁 鱧の歯応えの小気味よさとお出汁の上品さが素晴らしい。 ●鰹たたき 藁でたたきにした香りのよい戻り鰹。適度な厚みと温度。 ●車海老大根おろし和え ほんのりと温かみが残っている状態の車海老。 その甘さを大根おろしが辛味が更に引き出している。 【握り】 ●縞鯵 きめ細かい脂は、しっとりと舌の上に広がり、華やかな美味しさを残して喉にすべりこんでいく。 ●白甘鯛 身が締まりくせのない味わい。特にこの時期のものは脂がのってて美味。 ●小柱 軍艦の中にみっちり大粒が詰まっている。さくさくした歯応えと潮の香りが堪らない。 ●赤身 身は深い赤色。ビロードのようにきめが細かく、特有の酸味がある。 ●中とろ 身がしなやかで柔らかく、脂の質が良くて味わいが深い。さらにほのかな酸味がある。 ●大とろ 筋まで柔らかく口の中でとろけるような味わい。食べ終わった後も余韻が長く続く。 ●小鰭 身が柔らかく、塩加減・酢加減はまずます。 ●いくら 噛んだ時に皮を感じないくらいの柔らかさとさらりとした旨味が特徴。 ●〆鯖 むっちりとして濃厚な味。軽い〆加減が鯖の良さをより引き出している。 ●煮蛤 これ以上煮すぎたらと思う程の絶妙な火の通し加減。 また、こちらのお店のツメは濃厚さを出す為に穴子のツメを使用しているのも特徴。 ●春子 キリッと酢が効いた潔い〆具合。 酢の角は全く感じれず、身はしっとり柔らか。 ●赤雲丹 甘味はほんのり食感はしっとり、磯香は気品が感じられる。 そして、優雅さがあります。 ●赤貝 噛んだ瞬間に上品な潮の香りが広がり、その後にじわじわと甘味がにじんでくる。 ●鰤 きっちり熟成している身の凝縮感が素晴らしい。 舌の上でトロけ出る脂が堪らない。 ●紫雲丹 ミョウバンを使わない塩水漬けのウニ。 ふっくら滑らかな舌ざわりで、上品で豊かな甘味が口いいっぱいに広がる。 ●穴子 箸で持ちあげられないくらい柔らかく口の中でほろりととろける。 濃厚な旨味と身から出る上品なコクが見事に重なり合っています。 ●玉子 きめ細かい滑らかな食感。 ふっくらしていながらしっとりいるまるでスイーツのような玉子。 ●ひもきゅう巻 香り高い海苔と赤貝のヒモの相性が抜群。 #マイベスト2014 #名店 #マイベスト10

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東京都

寿司

Masayuki Wakui

『2014年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 6軒目 静かな住宅街の地下に佇む隠れ家的な鮨屋。 清潔感漂う店内は、広々としたカウンターに畳の個室があります。 ご主人の福元敏雄氏は「すし処 澤」で板長を務めた後、2005年3月に自らの名を冠した「鮨 福元」を開店しました。 タネによって食べ頃があるという持論の下、素材がもつ本来の味わいが引き出された鮨を提供している。 鮨の特徴は、この店独自の手法を施したシャリだといえる。 こだわりのシャリは、水分がとんでいる古米に海藻に海水を含ませて作った藻塩と江戸前酢の原点に立ち帰った伝統的赤酢を組み合わせたもの。 温度も固さも味にぶれがない、記憶に残るシャリです。 また、この手の店には珍しくブログで毎日の仕入れ状況を公開しています。 その日のタネは産地はもちろん、数か月前の産地までわかります。 こちらのシャリは独自性が強いですが、シャリとネタが合一した鮨は本当に素晴らしいものがあります。 【握り】 ●出水 墨烏賊 肉が厚く、ねっとりとした歯ざわりと濃い甘味を持ちシャリとも絶妙な味の からまりあいを見せる。 ●勝浦 平政 口に入れると回遊魚ならではのほどよい酸味があり、爽やかさが感じられる。 ●勝浦 本鮪 ルビー色に輝く厚めの切身は冬に比べ脂は少ないが、きれいな酸味が感じられ味わいも軽やか。 頬張ると、硬めなシャリがはらりとほぐれてネタと見事にからみ合う。 ●天草 小鰭 藻塩と酢の絶妙の締め加減で身が締まり、爽やかな味わいに。 ほどよい脂の甘味と酸味が絶妙で、シャリとの相性が抜群。 ●閖上 赤貝 香りと旨味を生かす為、握る前に殻を剥き提供される。 甘味に加えてほのかな鉄のような匂いと磯の香りがからまりあう。 また、こちらのシャリが赤貝ならではの清洌な風味を生む。 ●安泰 車海老 身の大きさもほど良く海老の濃厚な旨味を存分に楽しませてくれる。 ●桑名 煮蛤 身が厚くて柔らかいのが特徴。 噛みしめるほどに貝のエキスが口の中に溢れ出す。 ●松浦 穴子 出される直前に軽く炙って提供される。 甘味と旨味をダイレクトに味わえる控えな味付けで、ふっくらとした食感が快感。 ●函館 紫海胆 海苔を使わないので、紫海胆そのもの上品な香りと甘味がしっかり楽しめ 磯の香りが口一杯に広がる。 ●鉄火手巻き 手巻きにすることで、海苔が鮪の違った良さを引き出している。 ●あら汁 滋味豊かな味わい。 ●小鰭巻 シャリと小鰭の酸味の合わせ技がいい。 ●カッパ巻き 胡瓜のみずみずしい歯ごたえとわさびの辛みが見事に調和している。 #マイベスト2014 #名店 #マイベスト10

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東京都

寿司

Masayuki Wakui

『2014年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 5軒目 この店だけの仕事がなされた、個性豊かな旨味を引き出した鮨がいただける鮨屋。 ご主人の藤永大介氏は、15歳で鮨の世界に入り二子玉川の「逸喜優」などでの修業、2008年にすし通を開いた。 出される握りはどれも他の鮨店では見慣れない仕事が施されている。 使用する魚を徹底的に調べ尽くし、古い江戸前の仕事の意味を紐解きそこから仕事を選択して、実験し新たな可能性を生み出す。 まるで、シャリと魚の合一を求めて江戸前の技術を現代の魚で再検証しているようである。 シャリは2種類の米をブレンドし、2種類の赤酢と1種類の白酢を混ぜている。 藁櫃で囲って人肌に保つようにしている為、握りは常にシャリの温度が均一でバラつきがない。 また、唯一無二の鮨ながら、押し付ける感覚がない主人のスタンスも素晴らしい。 但し、酒肴と握りが交互に出される最近主流になりつつある提供方法は、 握りの小気味良いリズムを妨げる印象で、いささか好みには合わなかった。 ●ずわい蟹と酢味噌 みずみずしくも繊細な舌触りとほのかな甘味。 ●本鮪 握り 名刺がわりの一貫。 大間産150キロ。 14日間熟成させて、56ヶ所の包丁目を入れた本鮪。 熟成により旨味成分が凝縮されており、口中に含んで間もなくふわり溶けていく。 ●鰆の昆布〆 とろけるような食感に強い甘味。 ●ボタン海老 握り 3日間熟成させているため、従来のボタン海老の食感がいい意味で破壊されている。 その分濃厚な甘味と旨味が際立つ。 ●キンキの焼き物 西京味噌 脂がのりが上品で、しっかり味が染みている。 ●カワハギ 昆布〆・肝醤油乗せ 握り 肝醤油をムース状にすることで肝と身の一体感を演出。 複雑艶麗な旨味がからまりあい、心がほどけてしまう。 ●真鱈の白子ポン酢 まったく臭みやえぐみがなく、トロッと舌の上でとろけます。 ●喉黒の昆布〆塩炙り 握り 表面だけ塩焼きにしたレアな食感で、皮に旨味が凝縮。 ●甘鯛の焼き物 バター醤油 皮目を付けたまま鱗を立てて焼いています。 独特の食感とバター醤油の風味が後引く。 ●鰤 握り 熟成により鰤鰤に変化。 目を閉じて食せば鰤とは思えない旨味が優雅に口中に広がる。 ●ツブ貝 潮の香りと海苔の香りが交差しながら、噛むごとにうっすら甘味がにじみ出てくる。 ●スルメイカ刺し 細かい包丁が入れてあり食べやすい。 噛むごとに感じるクセのない甘味が実にいい。 ●鰹漬け 握り 鰹の旨味を引き出す漬け具合。 爽やかな香りが心地良く、旨味の余韻が長い。 ●鯖の梅紫蘇揚げ 鯖の身を邪魔しないサクッとした軽い衣にと梅の酸味が清々しい。 ●墨烏賊 握り 裏面に隠し包丁を入れているので、絶妙な食感を醸し出す。 ねっとりした歯ざわりで、甘味が穏やか。 ●ズワイガニ 握り 定番の逸品。 ほぐし身と蟹味噌を和えたものでシャリを包みこむ。 ●鮪漬け 握り 熟成度合いも充分で味わい深くねっとりしている。 但し、やや塩分が強め。 ●イクラ軍艦 粒のひとつひとつがはっきりしていて、口に入れるとパンッと弾ける。 ●金目鯛の昆布〆塩炙り 握り 脂の旨味がシャリと混ざり合い上品な旨味を作り出す。 絶妙な火入れで、程よい香ばしさが後から追いかける。 ●雲丹 握り 木村のうに。 これでもかというボリュームで、甘味が強く濃厚な味。 但し、ややネタの温度が低いところが気になった。 ●白海老 握り 生の味わいは海老の中でも格別。 甘味が強く、食感が心地良い。 ●椀 10種類以上の出汁を使った味噌汁。 ●穴子 握り ほんのり柚子が香り、ふっくらと柔らかい身が舌に心地よい感触を与える。 #マイベスト2014 #名店 #マイベスト10

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東京都

寿司

Masayuki Wakui

『2014年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 4軒目 繊細なタネと力強いシャリが調和した握りがいただける鮨屋。 常に理想を高く掲げ邁進している職人の鮨を堪能することができる。 店内は白木のL字型カウンターに8席のみで清潔感があり和やかな印象。 ご主人の今村健太朗氏は、ベルギーの和食店で料理人をスタートさせた後、和食ダイニングの寿司部門を5年間経験し2009年9月に「鮨いまむら」をオープンさせた。 独立する以前から精力的に他店の鮨を食べ歩き、改革を遂げてきたという。 鮨は、口に入れた瞬間に酢の香りが先にくるやや尖がったシャリが特徴。 こだわりのシャリは古米をブレンドして炊き上げ3種類の酢を使っており、ひと粒ひと粒が力強くしっかりと存在感を示しています。 そしてネタとシャリの個性が調和していて、酸味と甘さの緩急のバランスが抜群に良い。 【握り】 ●まつかわかれい 絹のようなきめ細やかな身は透明感と繊細な甘味を併せ持つ。 淡白ながら旨みが凝縮し、歯応えも印象的。 ●すみいか 身質がしっかりしていて味が深い。 なめらかな食感を出すため細かな包丁技も光る。 ●さより 青魚特有の旨みとと程よい苦味が見事に調和。 美しい細工も見事。 ●金目鯛 上品な脂は香もよく、とろけるような肉質も最高。 ●赤身 甘味も酸味も比較的さっぱりと潔い。 熟成が進んで酸がこなれた感じの赤身だともっと旨みが増しそう。 ●中とろ 酸味に適度なコクが加わり味わいが深い。 ●こはだ ガリと同様やや酢がとがってる〆具合。 包丁の技による見事な佇まい。 ●みる貝 しっかりした歯応えと磯の香りが特徴的。 新鮮で旨みも十分。 ●あじ 寝付きあじは脂が適度にのっていて、肉厚ながら身質も滑らか。 甘みと旨味が凝縮。 ねぎや生姜はのせず、魚の味そのものを味わえる。 ●うに 磯の香りと甘みそしてなめらかな食感。 濃厚な味が特徴でシャリと一体になることで旨さが際立つ。 ●車海老 茹でて甘味を引出す職人技が冴える。 車海老のきれいな甘味がシャリの酸味と見事に調和する。 ●穴子 軽く炙って香りを引き立たせてから手際よく握っている。 口中でほわっと柔らかくとろける。 ●玉子 海老のすり身を卵に混ぜてふっくら焼いた玉子焼きは、 ほのかな甘味がやすらぐ旨さ。 ●黒蜜ときなこのアイスクリーム 元パティシエ女将さん自家製のデザート。 甘さ抑えめのアイスは黒蜜ときな粉が良い相性。 江戸前鮨にしては異例の〆です。 #マイベスト2014 #名店 #マイベスト10

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東京都

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Masayuki Wakui

『2014年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 3軒目 戦前にあった京橋の名店「幸鮨」の流れを組む創業60年を迎える老舗。 店の表に「こはだ、煮蛤の旨い店」という布が掛けられているのが印象深い。 初代は江戸時代に握り寿司を創案したとされる「華屋与兵衛」直系の店で修業後 このお店を開いた。 元々は浅草の観音裏にあったが、現在は蔵前に場所を移して二代目ご主人が つけ場に立っています。 二代目のご主人の篠原俊之氏は、人形町の名店「喜寿司」で修行された方。 鮨は古い江戸前の技術をしっかりと受け継いでいながら、時代の流れに即した 仕事を施した握りを提供している。 ネタは近海物にこだわり、昔ながらの江戸前の仕事が丁寧になされた〆もの、 煮ものなど手間暇かけたものが特に味わい深い。 シャリはやや甘味がある標準的な固さで、ネタとのバランスが実にいい。 【酒肴】 ●生しらす 御前崎産 ぷちぷちとした食感とみずみずしさを堪能できる。 ●汲み上げ湯葉 とても柔らかく大豆の甘みと、とろけそうな食感に山葵のアクセントがきいている。 ●白魚 網走湖産 ほのかな甘味とわずかな苦味の調和。 【握り】 ●真子鰈 富津産 ぷりっとが引き締まった身は脂肪分が少なく、くりっとした歯ざわりとさっぱりとした 食味の中にもほのかな甘味とざわめくような旨味がある。 ●鯛 佐島産 水揚げが少ない佐島のものは、貴重といわれる。 歯応えと旨味が実に素晴らしく、皮と身のあいだの脂肪分が特に旨い。 魚の王者にふさわしい貫禄ある内容。 ●墨烏賊 出水産 肉厚でねっとりとした歯ざわりと濃い甘みを持つ。 シャリとも絶妙な味の絡まりを見せる。 ●車海老 養殖もので茹で上がりではないが、まろい舌ざわりで甘みもまずまず。 ●生いくら軍艦 普代村産 しっかりダシが効いた仕上がりで、噛めばプチッと弾けほろりととろける。 ●鮪赤身漬け 上物の鮪ではないが、浅めの漬け具合で旨味もまずまず。 ●雲丹 北方四島産 甘味はほんのり、食感はしっとり磯香には気品が感じられほのかな昆布の香りをが 後から追いかけてくる。 ●小鰭 佐賀産 程よく酢が馴染んで、噛み進めれば旨味がジュワジュワ湧いてくる。 また、脂もしっかりのって甘味があり歯ざわりも柔らかく〆加減も抜群。 絶妙な〆加減は経験に裏打ちされた、確かな江戸前の技である。 思わず追加してしまう程、満足度が高かった。 ●穴子の肝 なかなか他ではみかねないネタ。 ほろほろした食感で苦味もなく優しい甘味が後を引く。 ●煮蛤 しなやかな歯ざわりが伝わり、次いで旨味の汁がほとばしる。 やや時期はずれの為、やや小ぶりで歯応え旨味共に弱い。 煮蛤の旨い店という布が掛けられている通り、旬に改めて食したい。 ●穴子 ふっくらとした口当たりの後にまろい舌ざわりが広がり、口中いっぱいに旨味が 喉をすべり込んでいく。 ●煮烏賊 ねっとりした歯ざわりと極上の甘さ加減は、煮烏賊でしか味わえない。 ●玉子 伝統的な鞍掛け。 玉子が主張し過ぎずほのかな甘さと気品のある旨味。 ●おぼろ 口に入れるとほろりと崩れ、海老の旨味と甘味が広がる。 まるで品のいい和菓子のよう。 ●干瓢巻き 山葵入り甘すぎない味付けで、噛み切る楽しさがある。 #マイベスト2014 #名店 #マイベスト10

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東京都

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Masayuki Wakui

『2014年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 2軒目 路地裏にひっそりと佇む知る人ぞ知る店。 カウンターのみのこじんまりとした店で、どこか寛げる雰囲気がある。 ご主人の鈴木信夫氏は「久兵衛」での修行後、一時デュッセルドルフで握っていた異色の存在。 帰国後、修業先とは異なる鮨に辿りついたという。 最近は新鮮さを売りにする鮨店が多いが、、こちらの店は生ものが一切出ないのが特徴。 酒肴から握りまで、旬や走りのネタを使わず、いずれも一点に向かって焦点を定め 一手間かけたものが提供される。 但し、味の変化が少ないのでそういう意味で一本調子と感じる人も多いかもしれない。 肝心のシャリだが、酢と塩が抑えられた硬めな印象。 前半の数一貫は、ネタとシャリの温度バランスにやや疑問が残ったが、中盤以降は見事に 安定してきた。 【酒肴】 ●つまみ盛り合わせ つまみは、鮑の塩蒸し肝添え、漬け込みの蝦蛄、帆立煮浸し、平目、鮪づけ、海老づけの 盛合せが一皿に集約されている。 どれもこれも一口酒肴だが、丁寧な仕事をしている印象。 特に、夏の時期だけ提供される鮑の塩蒸し肝添えが滋味深く実に良かった。 【握り】 ●鮪漬け 湯霜後に長時間寝かしたもの。 ねっとりとした口当たりで、酸味とまろやかなコクが加わっている。 ●平目甘酢漬け 淡白ながらも甘酢で軽く〆ており、くりくりとした歯触りが実にいい。 ●平目胡麻醤油漬け 一味を隠し味に噛ませる技がにくい。 漬けより旨味がより凝縮している。 ●新烏賊 墨烏賊よりの厚みのある新烏賊。 漬けにすることで、本来の甘味がより引き立っている。 ●縞鯵 豪華3枚付。 2日間寝かせた旨味が口中いっぱいに味わえる。 ●マキ海老 甘酢で軽く〆て、ふわりと仕上げられている。 やや車海老独自の甘味が弱く思えた。 ●北寄貝 茹でて引き上げるまで生きた状態で甘酢に潜らせている。 独特の甘みが引き出され、食感が楽しい。 ●鱚 あまり見かけることが少なくなった江戸前定番のネタ。 淡白な中にもしっかりと個性を主張する。 ●新子 旨味を引出す〆具合が絶妙。 たよりげない味は、やはりクセになる。 ●鯖 とろけるような舌触りと鯖独自の生気が堪能できる。 ●鰯 鰯独自の生臭さが、素晴らしい職人技により見事に取り去られており、 風雅と言えるほど食味が強烈に生じる。 ●煮蛤 やや火入れが強いと感じた。 ●穴子 ふっくらした身質が楽しめる。 温度が高いところは好みが分かれるところ。 ●玉子 芝海老をつかった、しっとりした印象。 #マイベスト2014 #名店 #マイベスト10

10

千葉県

寿司

Masayuki Wakui

『2014年 タベアルキスト和久井の印象に残ったこの10軒』 1軒目 熟成させた青魚を惜しげもなく食べることができる鮨店。 ご主人は、月島にある「力鮨」での修行後、1996年4月に生まれ故郷に店を構えました。 ただ、失礼ながらなんでここに鮨屋ってな田園地帯の中の意外な場所にあります。 鮨ネタの特徴は、熟成の見極めにある。 勿論、鮮度の良さが旨みに直結するネタもあるが、熟成によって最大の実力を引き出す ことのできるネタが数々。 熟成方法は独特で、内臓の毒素が体に回らないように背中を上にお腹を下にして 泳いでいるときと同じように立たせてタッパーに入れ、冷蔵庫の風が当たらないと ころに置いて仕込んでいるという。 シャリはいすみ米を使用し、甘味が強くねっとりもちもちしていてやや大きめ。 古米ではなく、ご飯としておいしい水分の多い新米を使っているが、熟成ネタとの相性は良い。 注文は青魚を中心におまかせでお願いしました。 ●秋刀魚 銚子産。 5日間熟成させた秋刀魚。 嫌な臭みはなく秋刀魚本来の味が濃くなって、口の中でとろけるクセになる味わい。 ●鯖 ほんのりと赤みを帯びた鯖は、香りが強くなってこそいるが嫌な匂いは一切しない。 おぼろ昆布との合わせ技もおもしろく後味がいい。 ●鯵 1週間日間熟成させた金谷の黄金鯵。 金色が強くなり、鼻を近づけるとだいぶ強くなったアジ独特の香りがする。 新鮮な鯵とはまるで違う旨みの濃さで、脂と旨みが身全体にまわりねっとりとしている。 ●平目 大原産。 酢橘と塩でいただきます。 やや厚めに切りつけており、白身ならではの淡白な味わい。 ●鮑 勝浦産。 蒸し鮑は口に入れた途端に磯の香りがする。 食感旨味共にまずまずの味わい。 ●中トロ さっぱりした中トロ。 酸味が穏やかで甘みがありがある。 ●ミンク鯨 鯨独特の香りが強いので、好き嫌いが分かれるネタ。 味わいは悪くはないが、鮨ネタとしては疑問がのこる。 ●鉄火巻 中トロは鉄火巻にした方が、バランスがいい。 ●もずく酢 お通し。 かなり甘めの味付けで、もずくが細くてシャキシャキした食感。 ●玉子 さっぱりしていて卵の香りが生きている。 ●味噌汁 魚の旨味とアオサの香りが混じった優しい味付け。 #マイベスト2014 #名店 #マイベスト10