H.Yamanaka
美章園駅
お好み焼き
娘は仕事、カミさんは恩師の誕生日会とやらで昼前からお出かけの日曜日。「お昼ご飯はなんか適当にやっといて」とのことなので、昼時になりとりあえず家を出る。 今日はなんとなく一見の店に入りたい気分。しばし考えたのち、ふと思い立って「甘辛や」へ行くことにした。 この店は地元では有名な老舗。「孤独のグルメ」の大阪編で、出張して来た井之頭五郎も訪れていた名店だ。 以前から一度食べたいと思っていてついつい食べそびれているお好み焼き、いただこうじゃありませんか。 もう何度も前を通っている見慣れた門構えにお昼ちょっと過ぎに到着。予想に反して店内は空き気味の状態。 お昼時ゆえ他のお客さんは皆昼の定食メニュー(お好み焼きか焼きそばにご飯と味噌汁。大阪人は炭水化物をおかずに炭水化物を食べるのは平気ww)をオーダーする中、自分は一人豚モダン(豚玉のモダン焼き)を注文。もちろんお好み焼きとなれば生ビールも。 店内を見渡せば、店の雰囲気はまさしく大阪のお好み焼き屋。今でこそ数は減ってしまったが、昭和の時代大阪の下町では、町内に一軒は必ずこんな雰囲気のお好み焼き屋があった。カウンターの鉄板も年季の入った雰囲気で、鉄板とカウンターとの境目にタイルが張り巡らせてあるのも古風でいい雰囲気だ。 程なくしてお好み焼きがやって来た。目の前の鉄板に置かれたお好み焼きは薄く、よく焼けた昔ながらのスタイル。 今大阪では観光ブームが巻き起こっている。観光客は皆「大阪は粉もんの街」とばかりにお好み焼き屋に押しかける。そんな店では一枚1,000円で食べられれば安いぐらい。やれ山芋を使ったフワフワのお好み焼きだ、モチモチ太麺の焼きそばだ、具も海鮮だ特選和牛だとやかましい。 だが、本当の大阪のお好み焼きはもともとそんな高級な食べ物ではなかった。町場の店でおっちゃん・おばちゃんが汗をかきかき焼いてくれたお好み焼き、それこそが本当のお好み焼きだ。 そしてこの店には、今でもそのお好み焼きがある。 薄く、よく焼かれ、やや焦げ気味のお好み焼きは、高級なそれに比べて決して美味しい食べ物ではないかもしれない。 しかし昭和生まれのネイティブのナニワンにとっては、まさしくそのものズバリのお好み焼きを食べさせてくれる店、それがこの店だ。 この店が人気なのは、味云々よりもまずそのノスタルジックなテイストに、虜になってしまうからだろう。