Takehiko Nishi

Takehiko NishiさんのMy best 2017

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東京都

フランス料理

Takehiko Nishi

1996年に「南仏プロヴァンスの12ヶ月」という エッセイが世界的ベストセラーになった。 本当の生活、生きる歓びを求めて ロンドンを引き払い、 プロヴァンスに移り住んだ元証券マンは、 天国のように美しい自然と、 ワインと恵まれた食文化に魅了されたという。 かの地は、人生観を根底から変えてしまう 何かがあるのだろう。 廣瀬シェフの料理は、私を南仏プロヴァンスに 誘ってくれる。 この日、我々を迎えてくれたのは、 フランス産のアニョー・ド・レ(乳飲み子羊)。 この冬から日本に入ってくるようになったという。 生後3ヶ月、羊乳しか飲んでいない肉塊は、 鮮やかなピンク色で、命の発露を感じる。 そして、廣瀬シェフから有難い提案が、、 「どの部位を食べますか? せっかくだから全部食べてください。」 これまで使っていたベルギー産のアニョーと比べて 味が繊細で段違いに柔らかいそうだ。 今夜も名物のジュレで固めた内臓が入った 「前菜盛合せ」からスタート。 「これは凄いね」 インスタ映えするボリュームに テーブルから歓声が上がる。 気分が上がったところで、 冷えたシャンパンで乾杯する。 レバーのパテ、チーズ、生ハムが あっという間に消えた。 次は、毎度オーダーする生肉のタルタル。 廣瀬シェフは今宵、どんな仕上げをするのか、 期待が高まる。 なんと、馬肉の上には、 雲丹がトッピングされていた。 食べると、口の中が蕩ける。 悶絶した。 これぞ廣瀬マジック。 カリフォルニア・ソノマの ジンファンデルを頼み、肉三昧へ。 まずは、「トリッパ」 ぷりぷりして肉厚なトリッパと野菜と豆の 食感がたまらない。 トマトソースが安定の美味しさだ。 そして、いよいよ アニョー・ド・レ(乳飲み子羊)。 一口切って食べると、 舌が、えも言われぬ柔らかさに包まれた。 赤ちゃんのぷよぷよした肌に 触れたかのような 想定外の食感に動揺する。 だが、旨い。 これは旨い。 禁断の世界に入ってしまった。 羊乳以外のエサを食べていないので、 肉に癖がなく、超絶柔らかいのだ。 優しく噛むと、歯に肉の弾力を感じる。 まさに命の発露。 廣瀬シェフは言う。 「フランス産のアニョーは、 ブラックペッパーを振ってはいけないくらい繊細。 フランス修業時代の、あの感覚を思い出した。」 フランス人は、アニョーが肉の中で 最も上品だというが、納得の味だった。 メインは、 ボリュームたっぷりの「肉の盛合せ」。 柔らかい和牛のローストの旨みに 噛みしめると滋味溢れる鹿肉、、 肉を食らう喜びが湧き上がる。 南仏プロヴァンスのグルナッシュを 飲み干した。 この「サリン」は果実味たっぷりの 濃厚な赤ワインで、肉料理との相性は抜群。 鮮烈なブーケが湧き上がってくる。 そして、瞼を閉じれば、 煌めくプラタナスの木もれ陽が浮かぶ。 非日常の夢の世界。 今夜も廣瀬マジックに魅せられてしまった。 #中目黒 #肉好きが通う #ワインにこだわり

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大阪府

寿司

Takehiko Nishi

あれは一年前のこと。 最初に出された白子を口に含んだ瞬間 恋に落ちてしまった。 25年余りの東京暮らしで忘れていたものが 鮮明に蘇ったのだ。 冬の握りを食べると、 それは確信へと変わった。 真昆布の出汁、土佐醤油の甘さ。 瀬戸内の白身。 煮切り醤油の旨みとコク。 あぁ、これなのだ。 私が求めていたものは。 思い切って、初対面の親方・大畑雅達さんに、 上記の感想を伝えると、 「うちは江戸前の鮨やけど、 関西のお客さんは、旨みとコクを 求めはるからね。 煮切り醤油やシャリを工夫せなあきません。 例えば、この車海老の煮ツメは、 ボタン海老の殻で作る。 そこまでするのは、うちだけちゃうかな。」 と語り、優しい笑顔を浮かべた。 関西人DNAを刺激する「鮨 おおはた」。 研究熱心な親方の進化が止まらない。 今年の夏に訪問すると、店は全面的に改装され、 極めて質感の高いカウンター席に。 シャリは、赤、ロゼ、白の3種類になり、 タネに合わせて使い分けるようになっていた。 そして、師走には 温度が1度で冷蔵し、タネを熟成できるよう、 特注の冷蔵庫まで設置されていた。 大間の良い鮪を仕入れるルートを確立されたそうで、 熟成の赤味、熟成の中トロ、熟成の大トロの握りを 堪能することができた。 鮪と赤酢が効いた「赤」のシャリとのマリアージュが 実に素晴らしいのだが、東京で食べる鮨よりも 旨みとコクを感じるのだ。 親方曰く 「赤酢のシャリといえば、新橋のしみづさんで、 今年も食べに行ったけど、キリッとした味の印象やね。 あれはあれで美味しいけれど、 うちは、おおはた流で(笑)。」 親方は「しみず」のみならず、 タネの質が高い銀座の「鈴木」も研究されたそうだ。 それは、つまみの一品目の「蛸」の仕事で感じられた。 東京の鮨店が使う佐島の蛸に対抗するために、 明石の蛸に切り目を入れて柔らかさを出し、 コクと旨みを追加していた。 握りは、とにかくタネの良さが際立っていた。 コハダは旨みが抜群、 馬糞雲丹は、溢れんばかりに積み上げられ、 口の中で蕩けた。 車海老は、専用のツメが塗られ、コクに満ちている。 玉子の作り方も変えたそうで、 こちらも濃厚な仕上げに。 「大阪に帰省したら、必ず食べに行きます。」 親方に再訪を誓い、店を出ると 口福の余韻にいつまでも浸ることができた。 #関西人DNAを刺激する鮨 #北新地 #大阪で美味い鮨

Takehiko Nishi

ユッケが食べられなくなり、 レバ刺しも姿を消した中、 安住の地を失った 「生肉」愛好家に一筋の光が、、 完全会員制の馬肉専門店が 彼らの「約束の地」だったのかもしれない。 広尾駅の近くのビルの地下に秘密の扉があった。 地下の大空間の脇にある個室に 会社経営者、弁護士、画廊オーナーと、美人モデルが集う。 シャンパンで乾杯し、 高知の契約農家から取り寄せた自慢の玉ねぎのスープで 身体を温める。 新玉ねぎの甘みが身体に沁み渡る。 いよいよ「生肉」祭りが始まった。 まず出てきたのは、馬肉の握り。 その色彩に感嘆の声が漏れる。 そして、赤い霜降りが載った握りを口にすると、 肉など存在していなかったように消えた。 シャリと馬肉の旨みが舌に残る。 余韻が長い。 様々な部位の馬肉の刺身がテーブルに運ばれる。 赤身、シャトーブリアン、タテガミ。 それぞれ旨みは違えど、生肉が口で蕩けていく感覚が やみつきになっていく。 馬肉の脂の融点が低いため、 口に含むと生肉が体温で溶けるのだ。 これは新感覚。 広尾の秘密の地下空間で生肉を食らう。 熊本の大草原を駆ける姿が、 ふと脳裏に浮かんだ。 あれは彼らの「メシア」だったのか。 そして、生肉シリーズが終わると、 卵黄のエスプーマに玉ねぎのフライがトッピングされた 馬肉ユッケが出てきた。 ふわふわの卵黄とユッケの食感が合うのだ。 シャトーブリアンと茗荷の天ぷらも素晴らしい。 口に含むたびに、皆、同じ台詞を呟く。 「これは美味い」 次に辛子レンコン、タテガミの軍艦。 石窯で焼き上げる玉ねぎとエリンギのローストが出てきた。 野菜の旨味が凝縮されている。 そして、馬肉のローストが登場。 塊肉のままテーブルに運ばれてきて、 その場でスタッフが切り分けてくれるのだ。 馬のイチボは、脂が少なく身が柔らかい赤身で、 牛肉よりも、はるかに美味しいことに驚く。 こんなことがあって良いのか、 頭が混乱してしまった。 〆は、馬肉がふんだんに入ったカレー。 甘みと旨味がたっぷり。 デザートは、きな粉かき氷がかかったわらび餅。 専用のマシンで作られているというが、 口の中でフワリと融ける感覚が面白い。 何度もお代わりした。 お酒は飲み放題で、シャンパンと赤ワインを 何本開けたことか。 しかも、ワインは果実味も余韻もあって、 良質なものばかりだった。 これで、お値段は、一人1万800円。 破格と言わざるを得ない。 今や、羨望の的となった「ローストホース」。 クラウドファウンディングに投資し、 会員権を入手した方々の慧眼には、恐れ入った。 #馬肉 #会員制 #肉好きが通う #生肉

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東京都

寿司

Takehiko Nishi

上質な空間で美味しい鮨を楽しみたい時には 「鮨いまむら」に行きたくなる。 そんなミシュラン一つ星に輝く人気鮨店に向かうと 開店前、若い女性スタッフが丁寧に打ち水をしていた。 その姿が美しく、おもてなしの気持ちが伝わってくる。 店は最寄りの地下鉄の駅からは徒歩10分と 不便な場所にあるのだが、 平日の夜、L字カウンター8席は満席だった。 親方の今村健太朗さんは、 日本料理店の出身という異色の経歴。 タネとシャリのバランスは、新橋の「しみづ」など名店を 食べ歩いて研究したのだという。 ソムリエの資格を持つ美人女将は、 もともとフランス料理店で パティシエの修業をされていたとのこと。 大きめの美しい造形のワイングラスで 白ワインを飲むお客さんが多いのもわかる。 店に入り、親方の今村さんとしばし談笑する。 「最近、鎌倉の友人から佐島の蛸が捕れなくなっていると 聞きまして、、」 「佐島の蛸もそうですが、 魚の値段が全般的に高騰しています。」 連れと瓶ビールで乾杯し、つまみがスタート。 横須賀の平目、佐島の蛸が供される。 平目はむっちりとした食感が楽しめるように厚めに、 蛸は大ぶりに切られている。 白身の繊細な旨みと食感に、いきなりKOされる。 そして、親方が選んでくれた日本酒は宮城の「愛宕の松」。 辛口なのに、旨みがたっぷり感じられる。 今宵の平目のためにあるような食中酒だ。 佐島の蛸は、極めて柔らかく仕上げられていて 香りも高い。 「低温調理をしているのですよ」 一ヶ月前に食べた時は、爽やかな秋風が吹いていた。 それが木枯らしが吹く季節となり、 タネの旨みが増していることを実感。 それを引き出そうとする親方の姿勢が伝わってきた。 次は鼈の茶碗蒸し。 薄味にして鼈の滋味を引き出している。 出汁の旨みを活かす、私の大好きな味付けで、 本当に美味しい、心からそう思った。 熱々の鰻の白焼き、白子のポン酢和え、香箱蟹のメス。 いずれも素晴らしかったが、白子の旨みを増すために 昆布の旨みを使っていたのが印象的だった。 つまみのトリは、塩あん肝。 このあん肝も低温調理されていて、 ふんわり柔らかいのだ。 このあん肝のために、 親方は岐阜の「醴泉」を選んでくれた。 柔らかく、ふくよかで、円やか、そんなお酒。 あん肝とのマリアージュで、天にも昇る心地となった。 そして、圧巻の晩秋の握りがスタート。 親方が満を持して握ったのは、 富山の氷見で取れた「迷い鰹」。 この時期、鰹は三陸沖から太平洋岸を 餌の鯵を追って南下するのだが、 一部、日本海に迷い込む鰹がいる。 この迷い鰹は、常時冷たい日本海を泳いでいるので、 身が引き締まり、脂が霜降り状に乗り、香りも良いのだ。 握りを食べると、 鰹の食感が柔らかく、芳醇な甘みが広がった。 思わず、「これはお代わりしたい」と言ってしまった。 その後も、晩秋のタネの良さを活かした握りが続く。 ボタンエビ いくら 大間の赤身 大間の大トロ 小肌(一枚) みる貝 墨烏賊 車海老 ばふん雲丹 穴子 玉子 お代わりで、迷い鰹と雲丹を注文し、 至福の時を再び味わった。 親方に感謝するほかあるまい。 〆のアイスは、 パティシエ修業をした美人女将が作ったもの。 これも、品の良い甘さ。 印象に残るデザートだった。 タネの良さを活かす親方の仕事を 質感の高い内装が味わえる素敵な空間、 美人女将と可愛い女性スタッフのおもてなし、 キビキビと動き、好感が持てる若手男性職人が支えている。 銀座よりも、白金に通う回数が増えそうだ。 #白金の鮨 #美人女将 #ミシュラン

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東京都

寿司

Takehiko Nishi

新橋の行きつけのBARのマスターから 「日本中の鮨職人が食べに来る、江戸前鮨がある」 と教えてもらい、烏森神社界隈へ。 猥雑な雰囲気が漂う飲食店街の一角に、 その名店はあった。 親方の清水邦浩さんは恰幅が良く、丸刈り。 お弟子さんは、女性でも丸刈りという徹底ぶり。 ただならぬ雰囲気が漂う。 ビールで乾杯して、つまみを食べると 親方の虜になった。 蛸も鮑も大ぶりで、豪快だ。 握りも全体的に大きめで 赤酢をしっかり使用した茶色のシャリ。 行きつけの鮨店は白酢を使っていたので、 その色に驚いた。 食べると、円やかな酸味に満ちたシャリと 鮨タネの旨みが一体となり、癖になる。 この赤酢のシャリを研究するためにプロが食べに来るのだ。 タネは、鮪も白身も素晴らしいのだが、 5月ゆえ、特に貝類、 赤貝と甘い煮ツメの煮蛤が絶品だった。 煮蛤の甘みとシャリの酸味が実に合うのだ。 凛とした女性のお弟子さん 竹内史恵さんに興味を持ったので、 煮蛤のタネについて質問してみると 丁寧に解説してくれた。 竹内さんはその後、2014年6月に独立され、 銀座7丁目に「鮨竹」を開店されたという。 今では予約が困難なほどの人気店になっている。 満腹になり、店を出た。 口の中が幸せな旨みに包まれ いつまでも爽やかな余韻が残っている。 以降、何度も再訪したのは言うまでもない。 特に5月の貝類は、 しみづの独壇場だと、私は思う。 #新橋 #鮨 #赤酢のシャリ #鮨職人の憧れ

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東京都

寿司

Takehiko Nishi

私が贔屓にしている 銀座の「鮨 太一」のお弟子さんが 2017年9月に独立したと伺い、訪問。 太一の「品の良い調和」や「一体感」、 「江戸前仕事の技」がどう伝わり、 昇華されているのか、 期待が高まる。 場所は築地6丁目、 日比谷線築地駅から300メートルほど。 暗がりが広がる通りに、 店の玄関が美しくライトアップされている。 店内には、美しい檜の一枚板の L字カウンターがあり、 若き鮨職人・青山桂太さんが、 にっこり微笑んでいた。 連れと瓶ビールで乾杯し、 太一と同じ流儀で、 「少しつまみをいただけますか?」 とお願いする。 むっちりとした食感の「アイナメ」と コリコリした「クラゲ」の刺身からスタート。 金おろしで丸く擂った本山葵が 鮮烈な刺激と、爽やかさを加える。 茹でた温かい「蛸」の後は「ツブ貝 鮑の肝乗せ」だ。 ツブ貝を噛むと、歯応えがあり、 「ゴリッ」「ゴリッ」と音が脳内に響く。 一連の食感の違い、 供される温度の変化に魅了された。 日本酒は、メニューで6種類ほど選べる。 右側が甘口で左側が辛口。 真ん中の大好きな「石鎚」を選択。 旨みがたっぷりあり、食中酒として最適だ。 ふわふわの「しゃこ」の旨みが口いっぱいに広がると、 「カワハギ 肝和え」が登場する。 カワハギを細く切り、肝を潰したタタキと和えたもの。 柔らかい食感に肝の旨みが広がる。 桂太さんは、 若くして酒飲みの気持ちをわかっているなぁ。 日本酒があっという間に蒸発した。 さらに魅惑のつまみが続く。 塩でいただく「蒸し鮑」。 蒸し立てで、蛸と同様、温かいまま供される。 もちろん、薫りは抜群だ。 続く「鰯とガリとシソの巻物」は 太一と同じ仕上げで、 太一の常連は嬉しくなるだろう。 脂が乗った鰯とガリの酸味のバランスが良い。 「鮟鱇のともあえ」は、 これまた酒飲みを魅了する一品。 あん肝の旨みで日本酒のピッチが上がる。 すでに2人で4合を消費。 ここから秋の握りがスタートしたが、 いきなり鮪が登場したことに驚いた。 「鮪赤身の漬け」を食べると、 シャリは赤酢で、 かなりエッジが立った酸味を感じる。 このシャリと合わせるために、淡白な白身ではなく 鮪の赤身のカードを切ったのだろう。 続く大間の「中トロ」は脂が軽やか。 舌の上で、シャリと調和し、あっという間に消えた。 この調和する味わいに、太一の伝統を感じる。 2枚漬けの「コハダ」は、しっかりと〆られていて 身の旨みが立っている。 そして、序盤のハイライトは、大間の「大トロ」。 ただただ悶絶した。 ここまでに日本酒5合が消えた。 中盤は、桂太さんの江戸前の仕事を堪能。 「蛤」は太一伝統の漬け込んだ煮蛤で、 つめは付いていない。 太一よりも甘さ控え目の仕上げで、 蛤の滋味が伝わり、シャリの酸味との相性も良い。 「鯖」は、脂の乗りが抜群で最も美味しかった一品。 見た目もエロい。 桂太さんも、 「青森の鯖は別格なんですよ」 と、嬉しそうに話す。 「厚岸のバフンウニ」 「鰆」 「車海老」 「いくら」 「さより」 いずれもタネが上質で、 赤酢のシャリ、双方の良さが際立つ。 終盤は桂太さんの志の高さを感じる 圧巻の握りだった。 「煮た帆立」は 柚子が爽やかなアクセントになり、帆立の身が甘い。 アサリのツメを使っているそうだ。 桂太さんが苦笑する。 「大量のアサリを煮詰めても、 ツメはほんの少ししか作れないのですよ。」 この拘りに頭が下がる。 そして「秋刀魚」は、ヒバで燻製にしてあり、 秋刀魚の脂を味わいながら、薫りも楽しめる一品。 この仕事は、桂太さんの最初の修業先である 札幌の「和喜智」秘伝の技だ。 シャクシャクした食感の厚岸の「青柳」の後は 脂の乗った「鰯」。 「穴子」は太一伝統の軽やかな味わい。 ツメも素晴らしい。 最後は「玉子」 甘くて、しっとりしている。 大満足だ。 太一@銀座と和良智@札幌の良さを取り入れて 進化させている。 タネの質も高い。 笑顔が素敵な女将さんと二人三脚、 若き鮨職人の今後の仕事が、実に楽しみだ。 #築地 #鮨 #名店の弟子 #若手のホープ

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東京都

焼肉

Takehiko Nishi

焼肉の激戦区・麻布十番に真打が登場した。 松阪牛の本場、三重県鈴鹿市の 伝説の人気店が2014年12月に 東京に進出したのだ。 店は、鯛焼きの老舗「浪花屋総本店」の対面の ビルの3階にある。 店内は、麻布十番らしい質感の高さを感じる。 生ビールで乾杯。 まずは、塩タンを焼く。 極めてフレッシュなタンの中に筋が入っていて、 食感が良い。 次は、大本命の「塩ロース」だ。 片面を3秒炙り、ひっくり返して、また3秒。 そのまま口に入れると、 そこに肉など存在しなかったかのように 溶けてしまう。 舌の上には、塩で引き立てられた 松阪牛の良質な脂の甘さが残る。 実は、塩ロースは厚みに違いが出るように 切られているので、サッと焼くと、 焼けた周辺部とレアの分厚い中央部分ができる。 一枚で食感の違いが感じ取れて、 病みつきになる。 「カルビ」も美味しいが、 塩ロースに軍配が上がる。 赤ワインとの相性も良い。 ご飯が食べたくなったので、 味噌タレの「ヒレ」を注文。 この味噌タレの肉は、ワインとは 相性が悪いが、とにかく、ご飯が進む。 もう一度、「塩ロース」を注文する。 やっぱり、この店は「塩ロース」が旨いと 再確認できる。 シメは「F1雑炊」と命名されたカルビクッパだ。 やよい本店にて、 鈴鹿サーキットを疾走したF1レーサー達に 愛された一品だという。 セレブが愛するモータースポーツ。 焼肉「やよい」で松阪牛と赤ワインとの マリアージュを楽しむには、懐に余裕が必要だ。 ワインを飲まずに、生ビールに 味噌タレ肉とご飯、キムチを合わせれば、 コスパが良いと思う。 #松阪牛 #麻布十番 #ワインと焼肉 #塩ロース

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東京都

寿司

Takehiko Nishi

「鮨 太一」は、ネオン煌めく銀座の 外堀通り(旧電通通り)の一本裏の路地に、 ひっそりと佇む。 コンクリート打ちっ放しの小さなビルの2階。 いわゆるザギンに求める、ハレの場ではない。 他方、店内は上質で清潔感に溢れている。 太一の鮨が大好きな常連さんに 気軽に楽しんでもらいたいという姿勢なのか。 「握っていきますか?つまみからにしますか?」 親方の目が優しい。 鯛の刺身からスタート。 噛み締めると、白身の弾力が良い塩梅だ。 小肌の酢の加減も絶妙だ。 刺身のつまの、クラゲと茗荷も美味しい。 鰹の酒盗漬けにしたシマエビが出てきた。 シマエビの身が舌の上で踊り、 上質な甘みを残して消えた。 福島の名酒「廣戸川」の雄町を飲む。 こちらも品の良い旨みと余韻が楽しめた。 次は、鮎を裏ごししたパテ。 鮎の脂で作ったにこごりがトッピングされている。 食べると、 思わず「これはノーブルだ」と唸ってしまった。 親方が「ノーブルってどういう意味ですか? 私は日本語しか知らないので。」と笑う。 鰹のタタキも美味い。全てが調和している。 そして、筋子の粕漬け。 これまたノーブル。 蒸し鮑と肝の味噌漬け。 鮑の食感、香りが素晴らしい。 さらに肝が品良く仕上がっていて、驚く。 冷酒が進む。 肝だけ、お代わりしてしまった。 鰯とガリの大葉巻きも素晴らしい。 脂の乗った鰯とガリの酸味、 大葉の香りが一体となり、昇華する。 帆立の塩いそべ焼きも、香りが楽しめた。 感じられるのは、 親方の旬の魚の旨さを引き出す丁寧な江戸前の仕事。 連れも「これまで通ってきた銀座の鮨とは 全然レベルが違う。凄すぎ。」 と絶賛した。 冷酒を新潟の加茂錦にして、圧巻の握りがスタート。 鰆のシメ。 ツブ貝に肝ソース。 鮪の漬け。 コハダ。 かすご。 中トロ。 タネと赤酢のシャリとのバランスが絶妙で、 口の中で一体化する。 そして、煮蛤。 滋味溢れるタネの旨みと 円やかな甘みがいつまでも続く。 新橋「しみづ」の 甘い煮ツメをつけるスタイルとは違って、 ツメは塗らずに 浜の旨みを煮詰めた水飴に漬けるのだという。 親方渾身の仕事だ。 車海老。 ヒラメの昆布締め。 鯵。 いくら。 金目鯛。 肝を裏側に塗った秋刀魚。 雲丹。 いずれも、タネは柔らかく仕上げられ、 舌の上で消えていった。 あれは幻だったのか。 新烏賊(墨烏賊)。 煮烏賊。 鯵。 〆は、ふっくら柔らかな穴子。 甘い江戸前の煮ツメが塗られていた。 連れは満腹で穴子が食べられなくなり、私が食べた。 あぁ、幸せだ。 親方曰く、 「握りは食べた時の一体感が大事」。 繊細な切り込みが入っているタネがあった。 これが舌の上でシャリと一体となり 消えていく食感を生んでいるのだろうか。 タネの仕込みについては 「感覚というか、適当なんだけどね。」 と謙遜される。 夜のお任せコースは1万5千円。 超高級なタネに頼らず、 丁寧な江戸前の仕事を感じてもらう。 鯔背な親方の心意気なのだろう。 どの鮨も、ノーブルな調和が光っている。 #銀座 #鮨 #隠れ家 #鯔背な鮨職人

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東京都

創作料理

Takehiko Nishi

シェフの優子さんは食材に魔法をかけている。 欧州修行で得た魔力で西麻布に人々を誘う。 キノコのマリネ、蛸のマリネは定番。 夏はガスパッチョが絶品だ。 鮮烈な野菜の刺激。 飲むと力が漲る。 十数種類あるピンチョスは、 地中海の国々の料理のエッセンスが 表現されていて、口に入れると、 そこに「小宇宙」が広がる。 「ミルフィーユ」と呼ばれる 蜂蜜とブルーチーズのピンチョスは 毎回、その味と食材が変わるが、 いずれもバランスが絶妙だ。 牡蠣のピンチョスもたまらない。 一口食べると、心は地中海へ。 南仏の陽射しを浴びたグルナッシュ種の ワインを飲めば、魔界から抜け出せなくなる。 そして、料理好きの面々が 「絶対にコピーできない」と唸る肉料理を 食べると魂を抜かれてしまうのだ。 シェフの虜にされてしまうこと、 ゆめゆめ忘るることなかれ。 #西麻布 #ピンチョス #地中海料理 #魔女の館

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東京都

魚介・海鮮料理

Takehiko Nishi

2000年頃、酒好きに影響を与えたであろう 村上春樹の一冊の紀行文がある。 「もし僕らのことばがウイスキーだったなら」 シングルモルトの聖地への旅行記だ。 この本が世に出ると、 当時、麻布十番のイケてるBARでは 「生牡蠣のボウモアかけ」が出てきたものだ。 村上春樹はこう記している。 「牡蠣の潮くささと、アイラ・ウィスキーの あの個性的な、海霧のような煙っぽさが、 口の中でとろりと和合する。」 そして、 「・・・殻の中に残った汁と ウィスキーの混じったものを、ぐいと飲む。 それを儀式のように、6回繰り返す。 至福である。人生とはかくも単純なことで、 かくも美しく輝くものなのだ。」 12年前、私がペスカデリア赤坂店に 初めて行った時に、 長田店長に、村上春樹の紀行文の話をした。 すると、長田さんが 「今からボウモアを買ってきます!」と言い、 本当に私に出してくれた。 感激したのは言うまでもない。 生牡蠣にボウモアをかけて、食べられるのだ。 実践すると、生牡蠣がとにかく甘く、 舌の上でとろりと和合した。 村上春樹は間違っていなかった。 我々のテーブルが大いに盛り上がる。 すると、周囲のお客さんにも波及。 「あの食べ方がしたい」とのリクエストが 長田店長に出され、 ボウモアが各テーブルに並んだのだ。 その後、赤坂店にボウモアが常備され 銀座店のメニューにもボウモアが入った。 夏は岩牡蠣を楽しみにペスカデリアに行く。 三重の「浦村」と富山の「新湊」を3ピースづつ食べたが、 富山の岩牡蠣は、 プリプリの身を噛み締めた時に広がる 柔らかい甘みが印象に残った。 もちろん、ボウモアをかけて楽しんだ。 さらに釜石と北海道厚岸の真牡蠣を 2ピースづつ食べた。 釜石の特大の牡蠣は、肉厚で、 一口で頬張ると、濃厚な味が広がった。 そして、秋風が木枯らしに変わった11月下旬、 7種類の牡蠣の「食べ比べセット」を注文したが、 釜石の牡蠣の味わいが一番好きだ。 夏に食べた時と比べて、やや小ぶりになっていたが、 旨みのバランスは素晴らしく、 さらに釜石を5ピース追加。 北海道厚岸の「カキえもん」と 兵庫坂越湾の「牡蠣嫁」も2ピースづつ注文した。 生牡蠣にボウホアを垂らす。 私は赤坂店から銀座店に異動した長田店長に こう伝えた。 「最高に美味しいです!!」 #オイスターバー #銀座で食事 #牡蠣にボウモア