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akira iさんのMy best 2023

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沖縄県

沖縄料理

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【毎日が奇跡で成り立っている】 私が知る中で日本最高峰の酒場、さかえ。このお店に行くために沖縄に行くという人が後を絶たない名店中の名店。この日も、名古屋から来ていた人はこの店でしか飲まない(名古屋でも飲まない。酒はこの店でしか飲まないということだ)と言い、今日来て明日帰ると。本当にここにだけ来るための沖縄。はたまた隣は、このお店が好きすぎて、沖縄に移住したと。 そういう人は、珍しく無いのがさかえである。 当然のことながら、好き嫌いも分かれるだろう。そして、お店の理解度にも依存するかもしれない。料理は1時間で一つ出てくるかどうか。注文も難しい。 が そんなことはどうでもいいのだ。居酒屋は飯を食うだけのためのところであれば、もう美味いものを買って家で食えばいい。 なぜこの店にそれほど人が集まるのか。なぜそこまで愛される店なのか。それはもう、全員がさかえのねえねえに会いに来ていて、そして、ねえねえが最高だという客が集まって、もうみんな初めてなのに仲良くなってしまう。その、店の空気の虜だからである。 これぞ誠の、アメノウヅメ。天岩戸の前で踊りし、芸の神。 確かにヤギ刺しは絶品だし、ここのヤギ汁なんかは普通絶対に入ってくるふーちーばー、蓬の臭み消しが入ってなく、山羊の肉、骨と塩と水だけで信じられないほど美味い。 しかし、皆がここに集まるのはそこじゃ無い。ほとんど奇跡で毎日が成立してしまうお店。それがさかえだ。 しばらく行けなかった間に、少し変わった。扉が開くのは5時。3時から開けることはもうないだろう。電話は取らない。(以前は客が対応していたが)おしぼり投げも無くなった。 でも、ねーねーはちゃんと元気だ。きっと今日も、カウンターに案内されたすべての人が、ワクワクしながらその時間を楽しんでいる。 #今日も今日とて #さかえ #ヤギ刺し #ヤギ汁 #泡盛 #居酒屋遺産 #内澤旬子 #世界屠畜紀行 #さとなお #沖縄ヤギ地獄 #居酒屋の最高峰

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【パリの出来事】 Le Maquis、サクレクールのちょっと向こう側にあるレストラン。今回唯一、事前に予約した店。予約はパリの友達にとってもらった。彼とは不思議な縁で、初めて会ったのは雪が積もっているNYのドミトリーだった。その有名なドミトリーでは、雪が足首まで積もって外に飲みに行けないみんなが、順番に近くのスーパーにビールをまとめて買いに出かけた。12月の、その日は特定の航空会社は飛行機を飛ばしてない大雪の日だった。それからパリであったり、大阪であったり。たまたまムンバイにいた時も連絡をくれて、一緒に飯を食べた話をしたりして、世の中って狭いよね、もう何処でも誰かいたりして、いい夜をシェアできるんだよ、という話をして笑った。 ルマキ、は、僕が心酔しているヤマトシェフの兄弟子であるポールさんが出したお店で、彼もまた、イナキチルドレンであり今のパリを体現している1人だ。 お昼と夜に、イナキイズムを知る人たちのお料理を食べた。本当にそれは素晴らしく楽しい夜にふさわしい、鮮やかな料理だった。パリでしか食べられない料理、とでも言うべきか。ともすれば星付きでなければどうでもいい料理ばかりが並ぶパリにおいて、気軽に、モダンな料理を食べられるお店はよくよく調べないと辿り着けない。 何度も書いているけれど、六甲道に本当のパリを体現したお店があった。そのお店のシェフ2人はシャトーブリアン で働いた経験を持って、本当に、いつもすごい料理を作ってくれた。この日のランチ、ディナーを食べて、六甲道にあったトレフル、と言うフランス料理店は本当にすごいレストランだったと言う事を改めて思い知らされた。パリの辺鄙な場所にあって、それでも毎日満席で、今のパリの料理の世界を理解している人たちが楽しそうに食事をしている店。それと同じか、それ以上に美味しくて楽しい店が、トレフルだった。 この日、やっと素晴らしい一皿目に出会った時に確かにすごい。けど、トレフルは同じか、それ以上だった、と興奮してメッセージしたら、ちょっと、早すぎましたね。と、大和シェフは言った。でも、そういうことをやっていかないと意味がない。とも、言った。僕はたくさんのことをトレフルの2人のシェフに、教えてもらった。美味しいこと。楽しいこと。パリのこと、ディネに必要な何か。パリの、フレンチのこと。こうして、今も。 ポールさんの料理は、まるでシャトーブリアン のグジェールから始まるようにスタートした。そしてふた皿目は、亀の手だった。日本で食べる調理法とはちょっと違ってて、僅かに焼き目があり、蕎麦粉を入れたバターをつけて食べるスタイルだった。 当然、僕の友達は亀の手を知らなかったし、日本でも知らない人も少なくはないだろう。で、隣の席を見るともっと騒いでた。何これ?割ったら汁が飛び出す!ギャルソンがこうして割るんだよと言って自分も食べる。それは一つの、フックとして機能していて、お店全体の空気に寄与していた。 幸せなディナー。みんなわざわざポールさんのお料理を食べに来ると言うこと。そこは、シャトーブリアン で得た様々なエッセンスが満ちていた。そう、ディネは楽しくないとね。シャトーブリアン のギャルソンなんか、ワインを決めるのに客の席にどっかり座って、友達みたいに話してくるんだから。 三皿目、鰹のアグアチレ。メキシコ料理のエッセンス、多分大量のライム。きゅうりの鮮やかなグリーンに、スベリヒユ。 スベリヒユかー!トレフルで忘れられない一皿に乗ってたあれじゃんかー!そうして、続いてゆく美味しいお料理の系譜に。 パリ最高!

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【 原住民の村のファインダイニング】 「ところで台南にいつまでいるの?」 打ち合わせを終えて、客にホテルまで車で送ってもらう車中だ。 「土曜日まで。実は明日、ファインダイニングを友達が予約してくれてるんだよ。台南と高雄の間ぐらいの、東の山の中にレストランがあるでしょ」 「AKAME?」 「AKAMEじゃなくて、なんだっけな、名前。ああ、マサリリ?って言う店」 「そりゃすごい!あそこはリピーターか、知り合いしか行けないはずだよ」 「たまたま、タイミングが良くて取れたって言ってた」 「シンガポールでアジアトップになったアンドレが台北に戻ってRAWをつくって、そこからAKAMEができてさ、、」 「アンドレチャン!この前ハノイで行った店もアンドレチルドレンだったよ」 「AKAMEもMathaririもよく知ってる。実は仲がいいんだよ、Mathaririは、景色も最高だ」 送り届けてもらったホテルは、階下にKTBを備える怪しい安ホテルである。その外観にゲラゲラ笑いながら、お前本当にここに泊まるのか!と嬉しそうに彼は笑った。また会おうと言い、彼はポルシェをゴロゴロ転がして帰って行った。 その、レストランは標高が400Mぐらいの山にあって、どこらも遠く、台南からは車で1時間半。最寄りの屏東のローカル駅からも車で40分かかるという、原住民ルカイ族が住む村の奥にある。AKAMEはもはや説明がいらないくらいの、有名なレストランになった。しかしその姉妹店があったのは知らなかった。 Mathaririは、彼らの夢のレストランだ。AKAMEは兄弟で作ったお店だが、Mathaririは、AKAMEのアレックスと、彼と子供頃のから遊んでいた親友たちとの約束のレストランだ。いつかここで、レストランを開こう。20年かかったけど、それは実現した。 車が山間に入ると建物が変わった。尖った大きな三角屋根、まるでテーマパークのような作りの木の小屋が並び、景色がガラリと変わる。その集落のほっそいほっそい、引き返せないような細い道の奥にMathaririはあった。 席に着くとワインが注がれた。予約をとってくれた友達が言う。 「なんかこのワインはサービスだって言ってるんですよ」 私はてっきり”店からのグラスサービス”かと思ったが。 「誰かここの知り合いとか、、、」 「あ!」 その、AKAMEの8周年で作られたフルボトルワインは、ポルシェをゴロゴロ転がしてまた会おう、と言った彼からの、完全なサプライズの差し入れだった。 みんないつもあいつは何やってるかわからない、と言っているが奇しくも、このような形で私は仕事でここに来ている、ということが友人たちに、完全に証明されることとなったのを嬉しく思う。 Mathaririとは、ルカイ族の言葉で”あらゆる意味で善き事”を意味するのだそうだ。その息を呑むほど美しいレストランは、ルカイ族の誇りとともに、在るのだと思う。

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【クレイエールという洞窟探検の先に見たものは】 ランスにあるルイナールのメゾンを訪問。1729年に創業した世界最古のシャーパーニュメゾンである。 果たして私は、そこでシャンパーニュが何故それほどまでに特別なのか、を知る。 クレイエール、と呼ばれる露天掘りされたメゾンの地下の広大なケイブで静かに寝かされ、また、ルミアージュされている。洞窟でピュピトルが組まれていて驚く、そこは地下38メートルの奥底だ。湿度、95パーセント、圧倒的な迷路。特異な環境がこの美しい液体を育てている。 人の露天掘りしたクレイエールもすごいが、ここをカーブとしたこともすごいし、そうしなければ作れなかった代物であった、というのも凄い。 ーーー 世界最高峰のスパークリングワインを讃える大会である「シャンパン&スパークリングワイン・ワールド・チャンピオンシップ」にて、2010年ヴィンテージ「ドン・ルイナール 2010」が最優秀賞に輝いたことをお知らせします。 国際的なスパークリングワインコンペティション「シャンパン&スパークリングワイン・ワールド・チャンピオンシップ」は、世界から集められた最高のシャンパーニュとスパークリングワインを紹介することを目的に、ジャーナリスト・作家であり、批評家のトム・スティーブンソンによって2014年に創設された、権威ある国際コンペティションです。 2022年の大会では、ワイン業界の国際的なエキスパートである、トム・スティーブンソン、エッシ・アヴェラン・MW、ジェルジ・マルクスの3名によるブラインドテイスティング審査が行われました。「ドン・ルイナール 2010」は、コルクを使用し熟成させた革新的な醸造プロセスが評価され、最優秀賞である「スプリーム・ワールド・チャンピオン」賞、ならびに「ベスト・シャンパーニュ」賞、「ベスト・フレンチ・スパークリングワイン」賞を受賞しました。メゾン ルイナールでは、2021年の「ドン・ルイナール ロゼ 2004」に次ぐ2年連続の受賞となります。 ーーー ドンルイナールの香りは、北イタリアのシャルドネにも似た独特の香りがする。圧倒的にパワフルで気品に溢れている。 次にこのミレジムがリリースされるのは何年先になるのだろうか。2022年は素晴らしい年だった、となると、次にリリースされるのはまた12年後、なのだろうか。

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島根県

居酒屋

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【 太田和彦、居酒屋ヘリテージ 】 太田和彦著、居酒屋遺産の西日本編にて19ページに渡り掲載された所謂、”日本最高の居酒屋”という称号が与えられる益田、田吾作。実は益田には石見空港があるので、東京からだとそう遠くはないのかもしれない。関東の人にとって遠いこのエリアの海域の魚が食べられる、となれば尚更である。空港から市内中心部までもとても近いので、我々が思うよりもよほど便利だが、大阪から行けば6-7時間は普通にかかる場所である。遠い。 が、それだけの時間をかけて、この店が旅の目的として成立しうる店である。私の友人たちの何人かはそれぞれ、手間をかけて田吾作に行き”言葉にならぬほど最高だった”と言った。私はといえば何度か予約をトライしたけれどなかなかうまくいかなくて、今回ようやく満を持しての訪問であった。 台風が来ていたけれど。 台風が来ていてしかもお盆、という、益田の海が冷蔵庫。的な漁依存のお店には非常に厳しい日に訪れてしまった。本当にたくさんある生簀のほとんどは空っぽである。海域が荒れたらしょうがない。 が。そんなことは些細なことである。 予約していたカウンターに席を降ろす、最初からいくつかの小鉢が並べられている。それらの美味さが先ず、素晴らしい。特に煮締め。素材はそれぞれ違う鍋で炊かれたものを合わせている。自家製の豆腐、知り合いのこんにゃく、地物の野菜。手間をかけた一品。そういうところからスタートしていく。 全ての席がお任せで(この日は4500と5500円の2種)注文しているので、割と料理はわーっと出来上がり配膳されていく。この時間帯は厨房は大忙しである。食べる方も、温かいものは温かいうちに、刺身もできるだけ早く。となると忙しい。せっかく良いものが出ているので時間との勝負である。 それがひと段落するとようやく居酒屋らしくなってくる。そこからはもうずっと、最高の時間が流れている。これだけ期待して訪れて、その期待を上回る空気感というのは本当にすごいと思う。ただただ、感嘆の息を溢す。当然、素材はとてつもなく印象的だ。この日の鮑は今まで人生で食べた鮑の中で、一番印象的だったと言っていい。刺身はクエ、クロダイ、そして水蛸。タイは日本海なので好みでないが、クエとタコは最高だ。そして高津川、全国区の素晴らしい鮎。 驚くのは、それに合わせる酒である。田吾作。そしてどぶろく。どちらも素晴らしい。とくにこのドブロクは、蔵に作らせて味を決めて全量買取の、本当にオリジナルでここしか飲めない酒である。諸味の粒がぷちぷちのこり、シャープな酸がきいていて、本当にすごく美味い、この酒だけ飲みに来るのでも価値があるだろう。 とにかく良いサービスと気遣い、素晴らしい味と雰囲気。益田という町へのリスペクト。全てが最高だった。非常に変わったお店の作りだが、聞けばこの場所は4番目だそうで、創業当時は益田駅前にあったのだという。元旅館を全面改装している、とのことでなるほど、確かにこの大きな階段の作りや美しい張板の廊下は、そういう名残である。 島根のこと、益田のこと、たとえば蛤や、のどぐろのこと。ああ、この店が都会になくって、益田にあって本当に良かった。日本最高の居酒屋、と言われる店は、間違い無く私の中でもさすが、日本最高の居酒屋とはこれである。と、言わしめる素晴らしい酒場であった。

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【 サプライズ 】 足繁く香港に通ってきた。尚且つ、私は旅行者ではないのでガイドブックに乗る店ではなく、現地の人と現地の人が行く店のテーブルを囲むことが多い。そうして長年食事を共にしてきた人に随分とフカヒレをご馳走になっているのだが。 その日のディナーで最初に出てきたそのスープのツボには、明確にそのスープの名前が刻まれ、蓋の上部には仏様がいたのである。 噂で聞いたことがある。それは福建省出身の料理人とこのスープの話になったのだ。まさに幻のスープ。金も手間も暇も、発想が根本からぶっ飛んでいるスープ。福建省名物だが、そんなものを本当に出す店があるのか定かではない、ぐらい、のそれ。彼は言った。作れるよ、作り方はわかるけど、それ一人いくら取ればいいと思う?!って話だ。 佛跳牆。それが私と、私の隣に座るビジネスパートナーの前に二つ置かれた。 名前の由来は「あまりの美味しそうな香りに修行僧ですらお寺の塀を飛び越えて来る」という詞にあるとされる、それだ。 あまりの驚きに理性を失い意識が混濁していた私は、蓋の正面をこちらに向けることなく写真を撮り、その下にある蓮の葉の蓋が取り去られるのをぼんやり見ていた。 これがあの、佛跳牆なのだ。香港で、広東料理でそれが振る舞われるとは全く予想していなかった私は、完全に虚を突かれた。 この日はまさに久しぶりの香港を懐かしむような日だった。極上の鳩のローストも相当印象的であったし、他の料理もどれもが素晴らしい出来栄えの、これが広東料理だよ。と言うものだった。 だが、 本当にそんなことは全てどうでもよくなってしまう圧倒的破壊力を持ってその、佛跳牆が存在した。このレストランの始まりであり、終わりである。 聞けば数日前からオーダーしていてくれたのだと言う。要するに、簡易的に作る方式ではなく、中には高級乾燥食材がギシギシに詰まっており、長い時間蒸し続けられて加熱調理されたスープである。 香港の、広東料理の奥深さをひしひしと、噛み締める。もう食べてないものは流石にないだろう、と思っていたが、それそのものが存在してしまった。 その味は、官能の純化された塊である。

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沖縄県

バー

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【 これが五閑慎吾のワールドスタンダード 】 今日も今日とて、エルレキオ。 日本のトップバーテンダーであり、世界で戦えるその人、五閑慎吾のアナザースカイは沖縄。 彼がファウンダーのバーテンダー集団、SGクラブ。その最新店舗のエルレキオです。そして、この店を支えるのは上海にあるSGクラブの分店、The odd coupleを立ち上げから携わったバーテンダー、ジンカクテル日本一にもなった杉浦聡氏。(五閑慎吾のキャリアスタートはNYですが、彼が初めてファウンダーとしてお店を出したのは上海。ワールドベストバーに名を連ねたのも、渋谷より上海の店の方がずっと前です。) カクテルは彼と慎吾さんとで、ダジャレを言い合いながら作っていったそうで、そこら辺のバックストーリーを聞きながらも楽しいです。 流石の素晴らしい手技。素晴らしいアイデアのカクテル。美しい店内に整えられたコンセプト。完全にワールドスタンダード。アジアベストバーに必ずランクインしてくるバーでしょう。 那覇へお越しの際はぜひ。やっけーヒージャーパワーとか、本当にすごい。 期待を超えてくるバー。さすがSGクラブ。 #今日も今日とて #エルレキオ #安里 #国際通り #那覇 #アナザースカイ #地元のポルノスター #本物の宮城さん #やっけーヒージャーパワー #ハイになるダイキリ #ワールドスタンダード #明朗会計 #世界レベルで見るとかなり安いんです #カクテルレベルは世界基準値 #バーの価値観を変える #カクテルの定義を変えてゆく

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【 さて、次にどこに行きます? 】 在台北の、大好きなご夫婦とディネの後はバーへ。いくつかあるバーの中からどこへ行くかは娘が選んだ。 台湾のバー文化は大変進んでいる。とにかくおしゃれで快適で楽しい。バーって、本当にこんなに楽しいところなんだ。 この店はフツーのビジネスビルみたいなどうでもいいエントランスから、オフィスビル然としたエレベータに乗った先にある。先にあるのは焼肉屋で、焼肉屋の中を通っていくと、隠し扉があってそれが、すーっと開くと、中にはゴージャスなバーがある、というスピークイージーなバー。 カヴァラン。台湾で醸造されるワールドクラスのウイスキー。その醸造所が経営する、ウイスキーカクテルバー。 とにかく隅々までかっこいい。メニューブックは大きく写真を使い、まるで写真集のように見開きで、そのいくつかあるシグニチャーカクテルのイメージを想起させる。例えばそれは夏の抜けるような空であったり、閑寂な寺院の一コマであったり。深い緑や、ローカルカルチャー、様々なイメージを基にしてそれがある。 なんと美しく整えられているのだろう。それらがサーブされた瞬間の高揚感や心の綻びは、日々を忘れさせてくれるバー文化として台北に根ざしているのだ。 私はこういうバーがとても好きだ。カクテルの一つが、その特異な内装が、いきなり世界を異化させるほどの力を持つ。それらを、皆で楽しめる世界観。 例えばそのカクテルの名前はテンプルストリート。お香とか漢方とか、カビとか燻みとかを感じる。カバランウイスキーに、台湾ブラックティー、龍眼、昆布茶、無花果、冬瓜。 夜の謎解きはいつも楽しい。 日本にワールドクラスのバーは少ない。腕のいいバーテンダーもたくさんいるし、いい酒もたくさんある。でも、ワールドクラスのバーにはなかなかなれないのは、会計システムのいい加減さだ。ワールドベストに入ってくるようなバーは、最後にきっちりレシートをだして、何がいくらかかっているかを明示する。当たり前のことだと思うけど。 日本ではなかなかこういうバーは生まれにくいだろうなと思う。

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北海道

居酒屋

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【 最高の居酒屋に巡り合う 】 その扉をあけて「ごはんたべれますか〜」と店内を見渡しながら私は、あ、失敗したと思った。あとでもう一度くるから、といいながら、一度お店を出た。そのお店は、カラオケがある居酒屋で、とてもじゃないがご飯が出てくるようなお店の感じでもなかった、メニューもない。 しかし、確かにGoogleなどではとても評価が高い。しかし、あまりにコッテリと、地元の老人色がべったりとくっついているような、そういう空気感だった。 しかし、ぐるりとこのエリアを一周してなんども逡巡したが、この日はこの店で骨を埋めよう、と決めた。倶知安の居酒屋は外国人が多くなってから、どうも居酒屋らしい居酒屋、というのが少ない。寿司屋はセットメニュー押しだし、というかどこもかしこもが”外国人が頼みやすいメニュー”という感じで、いまいちぴんとこない。 意を決して、2度目の扉をあけて帰ってきたよ、という。奥の席に腰掛ける。座ると、どうも店の空気が違って見えた、コッテリと濃くて暗い店内は、どっしりと落ち着きがあって、居心地が良い。程なく、お料理は適当に出していくからね、いるかどうか聞くからいるなら言ってね、と、そういう感じでスタートした。 結局のところ、このお店で4時間ほどは過ごしただろうか。後ろにもう一軒、どうしても行かないといけない店があったので切り上げたが、一人で飲んでいてこんなに幸せな気持ちになれる店は、そうはないだろうと思った。 私は、この店でみんなの息子であった。この歳になって、息子として可愛がられることがあるとは夢にも思わなかった。 声の大きな店のママはなんと、私の母よりも少し年齢が上で、借金して昭和40年に立てたお店は、一代では倶知安でいちばんの老舗だよ。というとおり、そう、老舗がいかにして出来上がったかを物語っていた。 お料理は奇をてらわず、しかし全てが完全に本物のおふくろの味というものである。なんせ、お店の人がみんな50〜60、70ぐらいの女性だから間違いない。滋味深く、愛情に溢れたお料理にゾクゾクする。 それよりもすごいのはお店の空気だ。とにかく素晴らしい。常連客たち全てが、私に敬意を払いつつも暖かく迎えてくれる。なんという素晴らしいお店だろう! やはり、とにかくママがすごい。84歳とは思えぬ元気さで月曜から土曜まで、お店に立っている。陽気で、昨日も酒を飲み過ぎて二日酔いだった、なんていう。とてもじゃないけど84には見えない、とにかく若い。本当にそれは驚きしかない。 隣に元魚屋と、北海道の魚談義。色々知らないことがたくさんある、たとえばタイは北海道では撮れない、だとか。反対側のご夫婦は、私に酒をご馳走し、今度来たらうちに泊まっていけと、電話番号を渡してくれた。 時期的にニセコはもうシーズンオフを迎えつつあって、ゲレンデのコンディションはお寒いものだったが、それゆえに、私は倶知安の街をいつもよりも深く楽しむ。ああ、なんて温かい町と、ひとなのだろうか。 私が帰るときに、アカペラで大阪の演歌を歌い出した。ここにはカラオケの設備があって、この日なんかはWBCのチェコ戦を見ていたのだが、そんなことよりももっと楽しい時間が、ここには流れていた。 そういえば、この手のお店の会計はちょっとドキドキする。沖縄のお婆の店なんか、おでんだけで1人5000円ね!とか、そういうことがあったりしたなと思い出したが、ここは真逆の、まさかの2500円ポッキリ、だった。

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【 小籠包概論 -3】 3:湯包洪 9時半。 今回食べた中で圧倒的な熱量。どこよりも熱いスープを擁した小籠包です、しかも激安8個100元。新進気鋭の超人気店で、私が行った後何人も行ってみた!素晴らしい!という連絡をもらい、2日連続食べた人もいたほどこれからもっと有名になる店。(食べたのは正月、1月2日です) さらに言うなれば午前6時から営業とのこと。私の予想において、午前6時に食べればさらに生地は美味しいと予想。まさにスチームトゥテーブル。目の前で包まれ蒸され、どの店よりも最短、あちあちで運ばれる小籠包。 やや生地は厚めであるが、100元の小籠包としては突出した出来栄え。 とにかくスープが熱い、餡がうまい。また、つけだれが辛く、これもまた特殊で面白い。 スタンダードの源味と、ニンニクの小籠包を食べてみたが、ニンニクのは鼻血が出そうなほどニンニク。この過剰さは面白いし嫌いじゃない。 たまたま見つけたが相当な人気店のため、圧倒的な回転と売り切れごめん閉店スタイルは味に寄与。そして旅行者には比較的食べやすい(平日だし)。 小籠包に必要な皮打ち立て、つつみたて、蒸し立て、という三拍子が揃っている素晴らしいお店。相席のお兄さんは初台湾で、鼎泰豐よりも上とのこと。やはりあのスープの熱量低下は問題。 これからは”朝は迷わず湯包洪”である。実際、2日連続行こうかと思ったほど、安くて美味くて、最高。言うなれば、皮がもしもっと薄くなればあと100元値上げしてもだれも文句はいうまいて。