【 ラ・リスト1000の10位という事 】 ミシュラン二つ星。世界で最も有名なファインダイニングランキング。続く評価基準としてあるのが世界ベストレストラン50で、これはシェフやライター、フーディ業界の人男女同数、1000人による選出で独自色を出す。こちらはかなり、先鋭的なレストランに評価を出している。 2015年にフランス政府のお墨付きで登場した「ラ・リスト」は、世界各国の600以上のガイドや格付け、レビューなどの情報を集積し、独自のアルゴリズムに基づきコンピュータで解析したものであり、その計算方法は非常に透明性が高い事を売りにしている。2019年に、柳家は世界10位と言う得点を獲得した。この年の100位までをざっと見てみれば、なるほど世界的に有名なお店がズラリ、である。(2021も変わらず30位以内にランキングされている。世界で、である。) 「本日はこちらの方にご案内いたします」 やあやあ、これが新館かと外観の写真を撮ってから、柳家本館の入り口で待っていたら、なんと、まだできたばかりであるその、柳家岐山へと案内された。玄関には大きな屋久杉で作られた飾り棚。11月にようやく使い始めたばかりで、新築のため熱を使うにはじっくりと、この木自体にも熱をかけてゆかねばならぬと言う。フル稼働させると木が割れる、そうで、基本は一日一組、だそうだ。聚楽壁、、京都の西陣あたりでとれる、特殊な土で作られる塗である。 新築祝いに作ってもらったんですぜひどうぞ!と、白木の美しい枡のお土産をいただいて、久々の、柳家がスタートした。 前回訪問時(2017)から季節としては丁度1ヶ月後。究極の田舎料理は、たったの一ヶ月の違いで、食材のポテンシャルが変わる。明確に違うことに、驚く。明らかに、鴨も猪も鹿も、太っている。 冬なのだ。12月の初めは冬の始まり、そこからぐんと冷えてくる一ヶ月。特に四つ足は、その為にしっかりと、栄養を蓄えていたのである。 2度目の柳家。私は同じ季節に来たつもりであったが、山の一ヶ月はもっと劇的な変化をしていたのである。熊が出る12月も捨てがたいが、この、1月の素材の劇的なパワーもまた、大変な魅力であって、なるほど柳家の本質とは、我々が思うよりももっとずっと、季節が反映されているのだ。なんと素晴らしい事だろうか。 このお店が無くなってしまえば、ある種の文化すら消えてしまうのではないか、と思うほどに、伝統的な瑞浪の田舎料理である。それも、極めて洗練された。 とにかくシンプルである。組んだ炭火で肉を炙り焼き切る。が、それはもうあらゆるピースがきちんと揃っていなければこんなに突出して美味くなどならないのだ。 瑞浪から阿智の方、山深い方へ。駅から車で30分もかかる山の中の、1番奥の急な坂を登り切ったところに柳家はひっそりとある。静かなこの場所で炭が爆ぜる音を聞きながら、この山で取れた幸をいただく。これは、命の、恵みだ。 その70年と言う柳家の歴史の中で新しく、柳家岐山という別棟が出来、これからの未来へと、この瑞浪の文化を受け継いでゆく準備が整った。時代の流れにもちゃんと寄り沿いながら、柳家はそこにある。 この数日後、家で使っていない大きな平皿がでてきた。勿体無いから使った方がいい、どれどれ、と皿の裏を見るとそれは瑞浪焼きだった。 柳家はもともと、この窯業で栄えた瑞浪の人たちの為のハレの場、だったそうである。