➖ 蠍座の女♬ Ⅱ 妻の誕生日祝い ➖ ~ 生誕祭と入籍日をイタリアンで祝う ~ 昔、どうしても食べてもらいたい皿があった。 今では、どこでも食べられる皿になった。 その昔、フレッシュバジルもバジリコも無い時代、自宅の庭でバジルを育てたご夫婦がいた。 どうしても食べてもらいたい真心がそうさせたのであろう。 そんな皿を広めたのは飯倉片町にある「キャンティ」 オープンしたのは1960年。 ご夫婦の発信力はサロンを通じ最先端の人々を魅了した。 その人達は後にキャンティ族と呼ばれていく。 顔ぶれは皇族、政財界から文人、芸術家、芸能界と幅広く海外からの客人も多かったと聞く。 その一人、女優・加賀まりこさんがデビューしたのも1960年。 ここではお姫様のように可愛がられていたそうだ。 巷ではジェノベーゼとも呼ばれる皿、ここキャンティではオープン以来『スパゲティバジリコ』と呼ばれている伝統の一皿であり魔法の皿。 今、スパゲティバジリコの皿を目の前にしている女性がいる。 彼女が生を受けたのも1960年。 その彼女とは僕のアモーレ。 今日はアモーレの誕生日と入籍記念日のアニバーサリーディナーに「キャンティ」さんを訪れた。 今年、身の回りで余りに多くの不幸が続いた。 妻の高校時代からの大親友も悲しい事にその一人に数えられる。 ふと彼女を思い出す悲しげな妻。 非日常の空間で美味しい食事と思い出話。 少しでも気晴らしと友の供養にもなって欲しいとディナーに出向いた。 私にとっても、この店の往時を少しだけ知り、語ってくれた親友が他界して早十年になる節目。 「キャンティ」を選んだことに特別な理由はない。 あえて理由を探すなら、私の感性。 こちらの扉を開けるのがいつだったか遠い記憶。 今日は記念日。 たくさん食べたいからメインによってお値段が変わるコースをチョイス、基本は同じです。 ◇ オードブル / 16種類ある中から5品目選択。 ◇ パスタかスープを選択 ◇ メイン / 肉、魚6種類から選択 ◇ デザート / 10種類ある中から3品目選択 ◇ コーヒーか紅茶 結論を先に言うと全部外れの無い店です。 が、しかしオードブル選考でつまずきます。 定番以外はホールさんの説明と皿との壮絶なにらめっこ状態になります。 抜粋して本日の印象深い皿を紹介します。 まずはボジョレーとサンペレで乾杯。 スタートはスティックピザ。 庶民の舌な私はここでKO! 久々のキャンティ舐めてました。 オードブルのマリネの数々は新鮮さを活かし後味スッキリ。 チキンレバーペーストとトリッパの煮込みが絶品。 スパゲティバジリコを初めて食べた妻はウットリ。 皿をさげられてもテーブルには残り香の魔法。 ここで忘れ物に気づく、オニオングラタンスープを急遽追加。 これまた妻はウットリ。 蔵王牛ほほ肉の赤ワイン煮には降参、煮込み(赤茶)系料理の王様です。 デザートでサプライズの皿を用意して頂きました。 お隣の席の方からも拍手を頂き恐縮です−ありがとうございました。 ここのプリンはなんて美味しいのだろう。 私的には飾りは要らない品です。 はしょりましたが妻が囁く『美味しい〜』を何度も聞けた最高のアニバーサリー。 さすが「キャンティ」さんです。 今となっては古めかしいレストラン。 実直な料理を素直に皿に盛るレストラン。 それらと相まって伝統が最高の調味料になり寛げる空間。 そんな味わいを求める方には最高のレストラン。 西洋料理は軍隊から始まった。 帝国陸軍がフランス料理を公式メニューに、かたや日本海軍はイギリス流の植民地料理カレーが主流になった。 イタリア料理が広まったのは軍隊とは異る。 イタリアンを食べさせたいという愛から始まった。 これこそがキャンティを訪れた最大の理由。 まさに愛を感じる店なのです。 『子供の心を持つ大人たちと、大人の心を持つ子供たちのためにつくられた場所』 これがキャンティのモットー。 ここにいるだけで黄金期のザワつき、輝くオーラを脳が活動写真のように映し撮る。 やはり、人生マンジャーレ、 カンターレ、アモーレに尽きるかもとイタリアンなアニバーサリーディナーを明るく締めくくるお調子者。 店を出て眺める東京タワー。 改めて昭和人であることを再認識した夜。 次のお楽しみは訳あって数年遅れの銀婚式。 来年二月と先の話で鬼に笑われますが、東京タワーをはさんだ先にある店を予約済み。 バタフライのラペルピンで小洒落てみた夜。 六本木の夜はまだ続く。 投稿日の今日は良い夫婦の日。 今日も美味しくご馳走さまでした。