美味しい ‼︎ その、優しさと温もりに包まれて、 私は安らぎを感じました。 皆さんは、何を感じられるのでしょうか? 練馬区に長く住む私です。 同じ区内にある<田中>の噂は耳にしています。 各界の著名人が、こよなく愛する名店。 秀れたお弟子さんを、育てあげていることなど。 是非一度はと思いつつも、行きそびれ、 やがて、田中氏引退の報が---。 ショックで愕然としたことを、 今でも鮮明に覚えています。 それだけに<たなか>が、あの<田中>と知った時には、居ても立ってもいられぬ思いで、 この日、夫婦で訪れました。 行き止まりの道の、奥まった所にある田中邸。 お孫さんが、蕎麦屋さんをやりたい、との事で 自宅を改装しての営業です。 玄関を開け、靴を脱いでの入店です。 席に案内されて、 田中のかけそば、せいろ、海老天、玉子焼き、 そばがき善哉をお願いしました。 <田中のかけそば> もっとも印象に残る一品です。 ほのかに香る、鰹出汁(柚子が入っているかも)に 誘われ、お汁をひとくち。 衝撃が走りました。 でも、それは優しく温かいものです。 更にお蕎麦を頂くと、それが体中に広がりました。 もう、言葉になりません。 これほどまでの、かけそばに出会ったことは ありませんでした。 シンプルなだけに、 職人さんでも難しいと言われる、かけそば。 出汁が強いと蕎麦が死に、その逆もまた然り。 茹で加減、お汁の濃さなど。 それを、何事もなかったのように---。 ただ、しみじみと味わうばかりでした。 <せいろ> やや青みを帯びたお蕎麦で、盛り付けが美しい。 とにかく食べ方に悩みました。 素で食べると、お蕎麦の風味が穏やかに広がります。 おろしを加えると、今度は甘みが広がります。 お汁で頂くと、ひと味違ったお蕎麦の風味。 更に、おろしを加えると、また甘みが。 もう、どうして良いのか分かりません。 でも、かけそば、せいろ。 ともに、挑戦的な味わいではなく、 優しく、微笑みかけられているような 気がしてなりません。 こんな気持ちになったのも、初めてのことです。 海老天、玉子焼き、善哉。 評判どおり、いや評判以上の味わいです。 作り手さんの心を、 こちらも心で頂く味わいです。 特に玉子焼きは、私にとって、 王子の<扇屋>さん以来の名品になりました。 <海老天> さりげなく見えますが、盛り付けが美しい。 抹茶塩が、これほどてんぷらを引き立てる ものとは、知りませんでした。 出しゃ張らずに、海老天の旨味を存分に 生かしてくれます。 <そばがき善哉> そのまま食べると、爽やかな餡子の甘みの中に、 ふわ〜とした蕎麦の風味を感じます。 ところが別添えの塩昆布が秀逸。 これを加えると、甘み、風味が濃く感じられ、 まるで別のものを食べているような、 錯覚に落ち入ります。 薬味ひとつで、様々な味わいと世界を演出して くださる、 これが< たなか >なのかも知れません。 器も、さりげなく、気品のある美しさでした。 すると、 調理場から蕎麦湯を手にした田中氏が----。 これには、もう感激しきり ‼︎ 投稿されたYamamotoさんは、 こちらのお蕎麦を、 <神の手>に見えた、とコメントされましたが、 言い得て妙だと、つくづく感心します。 すると、私のこの安らぎ感は----。 私は、 <神の御手>に抱かれていたのでしょうか。 #ホワイトデー