ご縁があってお誘い頂き、ミシュラン三つ星連続十数年の店で夕食。個室なので料理の撮影ができた。歯応え歯触り、剛と柔の組合せの妙を楽しんだ。店名を和訳すると「本質」や「神髄」なので、店主の意気込みが伝わる。 ①白子に朝摘みピーカンナッツと水菜と青唐辛子添え 煎りたてアーモンド散らしにグリーンオリーブと梅のソース (写真#1) 冷たく冷やした白子のヌルヌル感とカリッと香ばしいアーモンドのカリカリ感、それに水菜のシャキシャキという歯応えの組合せを楽しめる。色味がよいので写真を一番目に出したが、実際はババロアの次に供される。 ②せいこ蟹内子のペーストに微塵切りの芹を練り込んで載せた アーモンドサブレ(写真#2) これも複数の素材のテクスチャの違いを楽しめる。サブレはサクサク、芹はシャキシャキ、内子はネットリである。 ③イタリアの少し苦みのある野菜であるタルティーボの温かいスープ (写真#3) 具には、ちぢみほうれん草やパンチェッタ(豚バラ肉)、オリーブシードの芯の部分を使っている。パンチェッタの出汁と塩味にタルティーボの苦みが合うのである。ガラスの器であるが、熱々で供されていて身体が温まる。 ④山羊乳のババロア・百合根とヘーゼルナッツ載せ(写真#5) 当店の代表的なメニューのひとつだと伺った。プロヴァンスのオリーブオイルとゲランドの塩で味を調えている。百合根などのほっくりした歯応えとババロアのヌルッとした食感の落差を楽しむのである。実は、店主の企てはオリーブオイルと塩を堪能してもらうことだったそうで、事前に知っておけば良かった。 ⑤ 黒トリュフとホッキ貝、クスクス(写真#6) まずは黒トリュフの香りを十分に楽しみ、その下にホッキ貝、土台は香ばしく焼き固めたクスクスである。そのクスクスも焼く前に鳥(名前は忘れた)の出汁で煮含めてある。 ⑥海老芋のフリット 穴熊のソース(写真#7) 出汁で炊いて薄いコロモを付けて揚げた海老芋への火の通し方が秀逸で、コロモの部分は丸で包装紙かと思ってしまうくらいの硬さであるのに、内側はトロリとしたタロイモ・里芋系のテクスチャーを保っているのである。それに鹿児島で獲れた穴熊肉と甘い香りとプリプリ食感のあるジロール茸を和えてある。なお、ジロール茸の和名はアンズダケである。同席の方から「芸が細かい」という声が上がった。 ⑦鰆ステーキとカボチャのラビオリ(写真#8) 当店の自慢の三要素のひとつに「火入れ」があり、それを体現した一皿である。芯は生に近く外側は火が通っており、中央部の舌触りは実に官能的であり、箸休めとしてのラビオリが実に効果的であった。ラビオリの中身は甘みの強いカボチャであり、ズシンとくる味のコンテチーズのソースを使っていて、鰆の軽みのある肉によく合う。 ⑧蝦夷鹿のステーキ(写真#9) 生のままではないのかと思わせる色味と歯応え舌触りであった。蝦夷鹿など食べたことのない私にはコメントが難しい。食感は豚レバーを少し柔らかくしたもので甘いマデラ酒のソースを使っていると説明された。 付け合わせは揚げたレンコンの上に蒸し焼きにした西洋ネギ(仏語でポアロー)を載せたもので、肉のネットリ感とレンコンのシャキシャキ感の対比が楽しめる。 ⑨コーヒーのシャーベット(写真#10) 実に巧みに出来ている。写真でも確認できるが中身は一様ではないのである。わざと氷片の大きさや味の違うものを混ぜ合わせてあるのである。私には氷の細片が入っているように感じたが、目で見る前に食べ終えてしまった。 ⑩ヘーゼルナッツのムース シュークリーム(写真#11) ムースもさることながら、ビー玉サイズのシュークリームに含ませてあるリキュールの甘みに身体がほどけていく感覚がした。シュークリームの皮がキャラメリゼされていて、それも楽しい。 ⑪ブルガリアの菩提樹茶(写真#12) 珈琲、紅茶、ハーブティーの三択から、ハーブティーを選んだら出てきた。菩提樹の皮を薄く切り出して煮詰めたものかと勝手に想像していたが、菩提樹の花を使っているようだ。リラックス・安眠効果があるという。 ⑫メレンゲのアイスクリーム(写真#13) 当店の定番メニュー。常温で放置したバターのような柔らかさに驚く。その滑らかさを浮き立たせるように容器には楽焼きのようなザラザラしたものを使っている。その容器を手で触れるとぞくりとするくらいに冷やしてある。なお、上に能登半島の海水を拭きかけてあるそうだ。山羊乳のババロアは欧州の塩で、こちらは日本海の塩、どう使い分けているのか気になるのである。