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Hitoshi Tanakaさんの My best 2022

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1

富山県

弁当屋

Hitoshi Tanaka

お取寄せお節料理のホームラン王である。冷凍で送られてくる料理に期待はしていなかったが、完全に裏切られた。もっと大きいのを頼めば良かったと正月早々に大後悔しているのである。 冷凍向きの素材を選んでいるのではない、お節の材料は決まっているのである。海老には海老の、黒豆には黒豆の食感がある。どれもこれも、損なわれていないのである。損なわれていないどころか、きちんと美味いのである。恐るべし千里山荘。来年も発注します。 以下、ご参考まで: 私、米国暖房冷凍空調学会(American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers)の会員でした。たまたま、学会の会報雑誌に冷凍食品の歴史に関する特集記事があって、その物語をよく覚えているのであります。 エスキモー(イヌイット)が余った魚をイグルー(雪ドームの家)の屋根に載せて、冷凍させているところを目撃して事業化を思いついたニューヨーク生まれの男が、試行錯誤の末に冷凍食品の製造に成功した。冷凍の機械は既に発明されていたが、量産や商業化に耐える品質の製品を作るのは難しかったのである。 当時は既にアイスクリームの流通網があったのでそれに載せて、試験販売しようとした矢先にあの1929年の大恐慌が起こった。そこから十年間の雌伏の期間を過ごさなければならなかったという物語があるのだ。 何はともあれ、冷凍庫に食材を突っ込めば冷凍食品になるのではないのである。千里山荘もこのレベルのお節料理を作るのにどれだけの年月と費用を掛けたのだろうか。 詳しくはここで、 https://en.wikipedia.org/wiki/Clarence_Birdseye なお、この米国の学会は会費さえ払えば大抵の人なら入会できます。

2

東京都

寿司

Hitoshi Tanaka

銀座の高級店で流石のお寿司を頂く。驚き、喜び、納得の素材、ワザ、もてなしに目尻を下げ、鼻孔を膨らませ、口角を上げて幸せなひとときを過ごせたのである。 素材の良さは当然だが、他店にない工夫が興味深い。例えば、最初の茶碗蒸しは写真のようにイクラが敷き詰めてあり、眼を楽しませてくれる。なお、具材は百合根だけである。 写真#1は、ネギトロの握りである。赤い部分の下にはきちんとシャリが存在している。葱の存在感を抑えていて脂の甘みを存分に楽しめる仕掛けになっている。軍艦だと海苔の印象がまず先に来て、しかもすきみの舌触りの中に夾雑物として海苔が出てくる感があったことに気が付いた。もちろん、軍艦巻きのほうが口内に変化があって楽しいのであるが、圧倒的なマグロの脂に全身全霊を委ねてしまうのもたまには宜しいかなと思わされるのである。 なお、どろどろのすきみを握るにはある特殊なワザを使うが、企業秘密なので、知りたい方は現地へ赴いて確認されたい。 生ビールもサッポロの「白穂乃香(しろほのか)」しか置いていない。そして、これが素人が買えない飲食店専用ブランドで、非常に細かい泡で、スルスルと喉を通っていく。恥ずかしい話だが、ランチビールを生まれて初めてお替わりしてしまったのである。 撮影し忘れた握りがある。メジマグロの握りである。年齢の若いマグロをめじと呼び、親マグロとの違いはBEEF(牛肉)とVEAL(子牛肉)の違いがある。熟成期間や漁場(餌)、季節の違いはあるだろうが、これほど目の詰んだ筋肉質でしかもサクリと歯が入るタネは経験がない。 個々の握りを描写してもきりがないので、登場者の構成を述べおく。写真#8は大根の漬け物で、ここで4拍の全休符がある。この香の物の塩気と香りがとても控えめで、次のネタの味や香りに影響を残さないのである。これも人生でこれほど穏やかな漬け物を頂いたのは初めてである。 写真#10は毛ガニの握りである、淡泊な蟹肉をほぐし、蟹味噌を和えることで味に奥行きをつけ、北国の海岸に斜めに降り注ぐ雪の情景が浮かんでくるのである。 写真#14は、雲丹のオプションである。通常は右側の箱入りの馬糞雲丹で、右の小さい皿がオプションの紫雲丹である。板さんが優しくオプションになさいますかと尋ねてくる。そして、流石に銀座なのでオプションの値段を訊く客はおらず、折角だからと紫雲丹を選ぶ客もいるのである。私がどちらを選んだのかは写真を観て察して欲しい。 話は前後するが、写真#11は赤貝の紐をつかった「ヒモキュウ」で、隣の客の赤貝がとてもウマそうだったので、コース外で特注してしまった。コリコリした紐の歯応えと海の匂い、シャキシャキの胡瓜、香り高い海苔に、白胡麻のアクセントが堪らない。 なお私の選んだ「梅」コースでは赤貝は供されないのである。赤貝に入れる包丁のスジも他店と異なることに気が付いたが、これも企業秘密なのでここには記さないでおく。 しめ鯖も思い出した。身の厚みだけでなく、どういう仕事なのか食感が口内の粘膜に官能的な刺激を与えて身もだえしてしまうのである。 以下は、思い出話: かなり前のことであるが、この店の並びの飲み屋からいい気分に酔って出てきたら、おのでらの前に大きな黒塗りの車が停まっていて、見るからに偉い人と思われる人物が乗り込んで、店の方々がお見送りをしていたのを目撃した。ただただ別世界の店だなあ。一生に一度も行くことはない店なのだなあと諦念していたのである。 しかし、Rettyの投稿でお安いランチがあることを知り、一番安い「梅」コースを予約したのである。(実際のコース名は「花」)ランチなら少し背伸びで手が届く値段である。リピート決定である。 名店に出会える機会を作って頂いたRetty運営の皆様とRettyの投稿仲間にここでお礼をしておきたい。

3

京都府

居酒屋

Hitoshi Tanaka

京都人に嫉妬した。この店が京都にあるからだ。これが京都の底深いところだと思い知った。 「琵琶湖のくじら」はどろりとした日本酒でやや果実の香りがする。990円 お造り盛り合わせ、海老のぷりぷり感が凄い。 琵琶湖直送の小鮎の天ぷら1000円 鯛小袖寿司330円

4

福島県

そば(蕎麦)

Hitoshi Tanaka

郡山駅からバスに乗り次の停留所で降り、直ぐの店。11時半の開店時に三件の予約客があるような人気店は初めてだ。日本家屋を改造して二間を使い、ピアノ、ベース、ドラムの軽快なジャズが流れている。 少し罪悪感があるが、ぬる燗を頂いて蕎麦を待つ。酒の味が分かるほど酒豪ではないので、田酒とお会計票にあったのでそれと知った。つまみは数の子の粕漬けで、これが良い前菜になる。 蕎麦は細く、濃いつゆでをちょんとつけて啜る。小海老だけのかき揚げが素晴らしい。蕎麦の歯応えと海老の歯応え、蕎麦の冷たさとかき揚げの熱、交互に食べると目尻が下がる。 もう一つのかき揚げは現地で採れる「あおばた豆」で、乾燥したものを一晩水で戻してから揚げているそうで、反発力が小気味よい。 蕎麦田楽も歯応え歯触りが面白い。外側は火炙りで硬く、内側はそれほどではない。主張しない優しい味の味噌で蕎麦の邪魔をしない。

5

滋賀県

ステーキ

Hitoshi Tanaka

滋賀県といえば近江牛、そして近江八幡駅から徒歩一分の有名店がここ。店はビルの二階にあり、一階は経営母体の肉屋さん。そこで予約したステーキランチを食べた。 写真#5にコックさんが鉄板で焼く姿、写真#5にその鉄板と牛肉の写真があるが、ランチの安いコースはコックさんの背後にある厨房でステーキを焼いて出す。目の前で焼いて頂く高いメニューにしておけばよかったという後悔は先にたたないのである。 写真#1のサーロインステーキは、写真#2の上側に並んだ調味料で頂く仕掛けである。左から滋賀県守山市遠藤醤油、自家製のおろしポン酢、抹茶塩、天然塩であるが、遠藤醤油の醤油は濃い口で塩味が強いがこれこそ醤油というボディーであった。そして、殆どこの醤油だけで食べてしまったので、よい子の皆さんは真似をしないように。 店員さんに相談して、ミディアムレアで焼いて頂いた。サーロインの歯応えを予想していたが、脂身も少なく、歯応えもローストビーフの内側の部分のような感じでいわゆるステーキを食べている感触ではなかった。一噛み、二噛みすると、するすると喉を通ってしまうのである。 写真#2のポタージュスープはポテトではなくサツマイモで、その甘みと強いとろみを堪能した。濃厚なスープを引き立てるクルトンがうれしい。 写真#3のサラダは一階の肉屋でも販売しているほど人気の和風ドレッシングである。なお、写真の順番はいうまでもなく肉を優先して並べてあるので、提供はサラダ、スープの順になる。 次回は高いコースにするぞ。

6

京都府

京料理

Hitoshi Tanaka

寺町通りを上がって一保堂まで行く前に右に折れる。簱地の敷地で奥まった路地を入ると名店が現れる。カウンターのみの店内は茶室を意識した造りで、料理を置いて愛でるカウンターも畳敷きである。 まずはカウンターに据えられた茶釜の湯で淹れた桜湯でお出迎えである。(写真#1,#2)浮かしたぶぶあられが舌をくすぐるのである。次に、ご挨拶として朱色の盃へ店主自ら日本酒を注いでくれる。一啜りすると味覚が鋭くなるような気がしてくるのである。 酒盃と一緒の先付けの椀(写真#4)は下半分が玉じめである。茶碗蒸しと違って、溶き卵を出汁で割って加熱凝固させたものである。(広義では茶碗蒸しである。大将は茶碗蒸しとも説明していた)そして、玉じめの上には原木で作ったナメコが出汁入りの餡とともに載せてある。 椀の蓋を取ると擦りおろした柚皮から立ち上る香り、加えてなめこの不揃いな大きさと歯触りが良いリズムを醸しだす。焼き茄子が玉じめに入っていると説明されたが、がっついていて気が付かなかった。 写真#5のお凌ぎは、出来立ての唐墨と新米を使った飯蒸し、カラスミのヌルッとした食感が官能的である。炊き立て餅米のモチモチ感が、なんとも言えず。カラスミの塩気がお米への食欲をそそるのである。さらに、脇に添えられた銀杏が熱々なのが嬉しい。ここにも香り付けに柚子が使われていたが、カラスミの味に圧倒されていて柚子が負けていた感がある。 この時期に横浜の魚河岸内にある寿司屋のFacebookに、カラスミを作る工程が掲載されていたので、今がカラスミの季節であることを知り、その工程を覚えていたので味もひとしおである。 写真#6、#7の椀は、蟹のしんじょうである。上に薄めの焼き餅、金時人参、ほうれん草、柚子皮を載せてある。手前が出汁で炊いた椎茸である。しんじょうはとても柔らかく作ってあり、その食感が大事だそうで、椀を運ぶ途中で崩れてしまうこともあると聞けば、如何に儚く作ってあるか理解できるであろう。そして、餅も頗る良くできている。関西は丸餅と聞いていたが、この店の餅は方形である。 さて、私は若い頃だが10年以上も餅つきの仕事を経験している。正月のちん餅としてのし餅とお供え餅、寒餅、3月の節句餅を搗いたり、のしたりしたので、餅については五月蝿い。そして、ウルサイ私をして唸らせる餅が椀に出てきて、両方の眉毛が上がってしまったのである。焼いた餅を椀に仕立てると水分を得て柔らかくなる。しかし、グニャグニャになると料理としては台無しになってしまう。そこで表面を焼き固くして水分の吸収を防ぐ工夫をする。しかし、この店の餅は焼き時間と餅の厚みを調整していて丁度良い食感を作っているのである。 写真#1の本日のお造り、手前左から藁で炙った鰆の西京焼き。これがほろほろと崩れて焼けた味噌の香りを深く吸い込んでしまうのである。 中央下が、鱈の白子である。 本鮪の赤身はわさび醤油であるが、季節の鰤は醤油ではなく鬼おろしで頂く。鰆は葱、柚果汁などを加えたちり酢(ポン酢)を付けて頂く。 色鮮やかな紅葉の枝を添えた盆の上には、銀杏の葉をかたどった皿の手前が丹波の大黒しめじの天ぷら、後ろの焼き魚はメヌケで味噌に漬けて焼く西京焼にしてある。松茸と同じくらい貴重であった本しめじを人工栽培したものを大黒しめじと呼ぶが、軸の太さと歯応え、そして「匂い松茸、味しめじ」というくらいの旨味で笑顔になる。 ちなみに「西京」とは明治の初め頃に、東京に対して京都を「西京」と呼ぶ運動があった。面白いことにその名前はこの料理の名前にしか残っていない。 手前中央の小さな器には鱈の白子、京都では雲子と呼ぶが、吉野餡(葛餡)とポン酢、浅葱に一味を掛けて頂く。ぬるりとした白子の歯触りを吉野餡がさらに滑らかな喉越しを増す。そこに浅葱のシャキシャキ感が爽快さを加えて宜しいのである。 写真#8の朴葉をかたどった皿には、車海老のうま煮、そしてカステラ玉子といって卵黄と魚のすり身を合わせて数時間かけて低温で焼いたものが載る。その右にあるのはニシンの産卵期ということで出汁で味付けした子持ち昆布。 写真#9はかぼすの皮に入れたイクラとスモークサーモン。玉子と鶏肉の組合せと同じなので、「親子和え」との説明があった。上に大根おろしと柚子を載せている。 写真#10はほうれん草のお浸しであるが、詳細は忘れた。 写真#11は海老芋を出汁で炊いてから揚げたものと琵琶湖のワカサギの天ぷらで上に泡雪塩を載せ、お好みで酢橘を搾って食べる。 続きはコメント欄をご覧下さい。