岡田健志 Takeshi OKADA
六甲道駅
カツ丼
最初に一言。Goodに限りなく近いexcellent。 これ、賛否両論あると思いますが、美味しいけれど『カツ丼らしさがない』とも思った。多分、わざわざは行きたいとは思わない。 まず、最初に、良いところを書きます。 食べた瞬間、出汁とかえしの味がぷーんと香り、しかも上品にまとまってる。一口目で、すっごく美味しい。ある意味で上品さに感動しました。 目の前で作ってる店主のこだわりが感じる味でした。 関西風のマイルドな味付けに対する好みはあるだろうけど、これを美味くないという人はいないのではないかとさえ思える。それくらい、味がうまくこなれている。 ヒレカツしかないのも、上品さという、おそらくは店主の目指すべき方向性を感じる。 自家製豆腐もかなり好み。醤油は最低限でいい。 沢庵も思いの外うまく、厚みがあるので、噛むことを楽しめる。 非常にトータルバランスが良い。 さて、では、この店に通いたくなるか、というと。。カレーは一度試すだろうけど、ヒレカツ丼についてはそこまで惹かれない。 いや、食べ始めはいいんですよ。 食べ終わりに、あまり満足感が得られない。量の問題ではない。 ここからは気になる点を。 最大の難点は、カツを細かく切ってること。 食べやすい、親切と好評価してる人もいるので、好みの問題なのだろうけど、僕は残念に思った。 まず、写真の通り、小さいまま卵でとじるので、衣のサクサク感はほとんどない。 四谷三丁目の名店『鈴新』は、とじ方も選べるほど。衣にも出汁が染みた方が好きな人もいるだろう。でもサクっと派にはその楽しみがない。しっとりが好きなら、ゆっくり食べるという選択肢もあるが、最初から細切れでは、それもできない。 細かく切ることの難点はもう一つある。 肉を「噛みしめる」という喜びが得られにくい。 なぜ、ステーキハウスではサイコロステーキを選ぶ人が少ないのか。 それは、肉を噛み切る時の肉汁と充実感を求めているから。 いくら味付けがよかろうと、ご飯を大盛りにしようと、細かく切られていたら、その歯応えや充実感が得られない。食べ終わりに不満が残る。 カツ丼やラーメンって、ちょっと罪悪感がある食べ物だと思う。 『あー、カツ丼、食っちゃったなぁ。でも、すっごい充実したから、ま、今日くらいはいいか』という感覚なんですよ。罪悪感を上回る充実感が、このカツ丼にはない。 美味しいカツ丼ではあるものの、食ったという充実感は得にくい。 せめて、調理前に、切り方を選択できるだけでも大きく感じが変わると思う。 選択できるようになったら、通うかも。