南 たすく

南 たすくさんの My best 2018

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埼玉県

割烹・小料理屋

南 たすく

田山花袋は、「蒲団」「田舎教師」などで知られる自然主義派の小説家(と、同姓同名)である。 女性問題で苦しみ、全国を放浪し、熊谷へとやってきた。 『町の四つ角のところに来た。 そこには乗合馬車が一台待っていた。 馬はすでに杭につけられてあった。 「妻沼町へはもうすぐ出ますか?」』 そして、「妻沼聖天山」へと辿り着く。 その本殿「聖天堂」は、宝暦10(1760)年に再建されたもの。 日光東照宮を彷彿させる本格的装飾建築。 その精巧さゆえに「埼玉日光」と称され、国宝に指定されている。 2003年から2011年までの修復工事により蘇った、創建当初の極彩色の彫刻が素晴らしい。 総工費は13億5千万円。 「妻沼聖天山」の中門は、「四脚門」と呼ばれ、境内の建物で最も古い。 寛文10(1670)年にあった妻沼の大火で、唯一残った。 釘を一本も使っていないという。 中門の傍らに、明治5(1872)年創業の割烹「千代桝」がある。 珍しい三階建ての土蔵を持つ建物。 田山花袋は、その暖簾を潜った。 1階はカウンター、テーブル席、小上がりも卓袱台2つだけ。 小さなお店と思われがちだが、2階には立派な座敷がある。 此処は、鰻が有名で、「うな重定食」なら、2500円。 しかしながら、女性問題に悩む花袋の目にとまったのは、「縁結び定食」1500円だ。 「聖天様」は、縁結びの神様である。 そこで、町の各飲食店で「縁結びメニュー」なるものを提供しているのだ。 此方の「縁結び定食」は、ミニうな丼、稲庭うどん、御新香、果物がセットになり、女性に人気だ。 此方の鰻は浜松産。 そして、創業以来継ぎ足しのタレ。 創業した146年前の一滴が含まれているかもしれない。 鰻はふわふわと柔らかく、白飯に染み入ったタレの甘みがたまらない。 稲庭うどんも、上品で、その清廉さが喉を潤す。 田山花袋は、「千代桝」に逗留する。 翌朝、「聖天様」の境内を歩く。 当地出身である源平時代の武将、斎藤実盛を想った。 「聖天様」の本尊を勧請し、北国に戦死した健気な武人。 『無限に長い過去であった。 また無限に長い将来であった。 その長いライフの流れの上に、こうして一夜泊まって黎明の境内を歩いている。』 かくして、新たに着想した小説「残雪」の執筆を、決意したのであった。 (なになに、「田山花袋」の時代に、縁結びメニューはないだろう」って。 そんな「カタイ[花袋]」こと言わないで。)

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埼玉県

和食

南 たすく

島崎藤村さんが、突然現れて、「川遊びに行こう」と宣う。 「投網で、鮎を捕ろうよ」と仰るので、ご一緒した。 「川島町の越辺川(おっぺがわ)と入間川が落ち合うところ。 ここに、伊草の渡しってぇのがあってね」 私は、おずおずと、申し上げた。 「島崎さんが、ここに来られていたのは、昭和8(1933)年頃。 それから、85年経つんです。 今では、鉄とコンクリートの橋がかかって、鮎も捕れないそうです」 「それじゃあ、舟宿の小澤屋は? 堀口大学とか、文士仲間と、よく遊びに行ったのだ。 いつも、あそこで、捕った鮎や、鯉や鰻を喰っていた」 「小澤屋さんは、まず、川辺から堤の向こうに店を移されて、川魚料理屋となられました。 そして、2008年に廃業されたそうです」 「もう、何も残ってないのかい」 島崎さんは、愕然としている。 「実は、小澤屋さんの立派な日本家屋が残されています。 そこに、2017年9月16日、『花しょうぶ』というお店が開業しました」 島崎さんと二人、川堤を越えて、『花しょうぶ』へ向かう。 堤の此処彼処に、紅い彼岸花が咲いていた。 風合いのある日本家屋。 二階建てで、一、二階ともに同じ様な造りとなっている。 川堤の側に広い硝子窓。 窓に沿って廊下、廊下に沿って障子、障子に沿って客室となる。 琉球畳の上に、椅子とテーブルが並んでいる。 客室に届く外光は、穏やかだ。 「冷やしぶっかけと握り寿司三種」1,200円をいただいた。 〈ざる・かけ〉と〈うどん・そば〉が選べるというので、〈ざるうどん〉をお願いした。 野菜サラダ、デザート、コーヒー付。 コシの確りとした、うどん。 ネギと山葵だけでなく、海苔、天かす、オクラ、山芋も付いてくる。 組み合わせを愉しみながら、食べ進める。 握り寿司三種には、玉子焼き2枚もついている。 デザートは、「フレンチトーストの抹茶かけ」。 歴史ある建物に、新しく開いたこのお店に似つかわしい。 「これ見てよ」と、島崎さんが壁に貼られた、舟の写真を指さす。 「左から3人目の麦藁帽子が俺。懐かしいな」 そう言う島崎さんの姿が、すーっと薄れていく。 もう、島崎さんには、その頃のことしか見えていないようだ。 声だけが、堤の彼岸花を越え、川向うへ還っていく。 「青い葦が生い茂って、よしきりが鳴いているね。 小雨が降っていて、却って静かでいい。 東京の近くには、こんな心持ちのいい場所は少ない。 ものさびた橋畔のここの家で、静かに皆と話をするという気持がこの上なく好もしい」

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東京都

イタリア料理

南 たすく

ボクの名前は、ピノキオ(Pinocchio)。 チェルキオ(Cerchio)とは、親友さ。 あっ、ウソ、ウソ。 鼻が伸びちゃったよ。 鼻が伸びないよう、ホントのことを言うね。 チェルキオは、西荻窪のイタリアン。 2015年5月11日オープン。 「cerchio」は、「円」や「輪」を意味するイタリア語なんだ。 今日のランチは、豪華だよ。 シェフおすすめのSpecial、2,800円さ。 あっ、ウソ、ウソ。 また、鼻が伸びちゃったよ。 鼻が伸びないよう、ホントのことを言うね。 ランチのB、1,300円(税別)にしたんだ。 パスタ、サラダ、パン、デザート、飲み物のセットさ。 サラダは、ボリュームたっぷり。 葉物野菜に加えて、赤玉ねぎ、キュウリ、ミニトマト、粉チーズに、クルトンまで。 本日のパスタ3種から、「アンチョビ、オリーブ、ケッパーのトマトソース」スパゲッティを選択。 グリーンとブラックのオリーブや、大葉。 アンチョビやケッパーもたっぷり。 具材の味わいを纏め上げているトマトソースが秀逸。 デザートは、カスタードプリン。 濃厚な舌ざわりと味わいが、たまんないよ。 ボク、ピノキオも、イタリアンな人形として、鼻高々さ。 でも、イタリアンなスパゲッティの最高峰は、ナポリタンだけどね〜〜 わーっ、ウソ、ウソ! スパゲッティのナポリタンは、和製メニューだよ! 鼻が、鼻が、伸びるーっ! 助けて、ジミニー!

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埼玉県

カフェ

南 たすく

樹々が形造る緑のトンネルを、くぐった。 あの時だったに違いない。 此処とは違う何処かに、迷い込んでしまったのだ。 見沼の、森と宅地がせめぎ合う一帯。 そこに、1940年代のフランスブルターニュ地方を想わせる建物が、忽然と姿を現す。 「Cafe de lafet」の看板の下に、重厚な扉。 中に入ると、吹き抜けと、階段と、高窓。 二階は、「モンマガザン」という名前のセレクトショップ。 一階が、目指すカフェだ。 見事に構成された、隙のない、アンティークな空間。 緑のトンネルをくぐってからここまで、何処にも人影を見ていない。 しかしながら、その時まで、何ら違和感を抱くことはなかった。 出迎えてくれた、カフェの主と対面するまでは……。 カフェの奥から出て来たのは、1メートルほどの身長のウサギ達だった。 服を着て、二足歩行している。 オーナーがラフェット氏で、奥さんはアグネス。 控えているのは、長女のアリス、次女のドミニク、そして長男のラファエルとのこと。 他にも沢山のウサギ、そしてヒツジやロバが、店内空間を埋めている。 私は、平静を装い、メニューを拝見する。 此方のカフェでは、ガレットをいただくことができる。 「ブルターニュですからな」と、ラフェット氏は自慢げだ。 「チーズ+ロシア産天然紅鮭サーモンのガレット」セット1,590円(外税)。 セットには、本日のスープ、サラダ、そしてドリップ珈琲or紅茶が付く。 更に、「リンゴのシブースト」セット+390円(単品500円)を付けていただくことにした。 器には、「CAFE de LAFET」の文字が入っている。 器を載せるカッティングボードまで此方の手作り。 販売もされているようだ。 本日のスープはクリーム。 サラダは、別の器に入ってくる酸味のあるドレッシングが美味しい。 ガレットには、レタス、トマト、ピクルス、そしてレモンが添えてある。 素材の良さが伝わる健全な味わいだ。 そして、「リンゴのシブースト」と「ドリップ珈琲」。 シブーストは、カッティングボードの中央に鎮座し、ホイップクリームが寄り添っている。 カッティングボードの右奥には、卵を抱えた小さなウサギ。 ウサギを含めた全体に、シュガーパウダーの雪が積っている。 左手前の空き地にも、ウサギ型の空き地を残し、白雪が積もっている。 その素晴らしい光景に、心震える。 シブーストは、確りと濃厚で、珈琲に良く合っている。 ラフェット氏は、元店舗デザイナー。 コンセプトを形にするのに、三年。 内装に、半年。 そして、2014年11月6日に、このお店をオープンさせた。 ラフェット氏は、ここは教会だと言って、長い耳を立てる。 先程は、「アベマリア」が流れていた。 そして今は、バイオリンによる「主よ御許に近づかん」。 外からもたらされる穏やかな光。 弦を震わす音とともに、ゆったりとした時が流れている。 この曲が終わったら店を出て、元の世界へ帰ろう。 席を立とうとした瞬間、「アメイジンググレイス」の清らかな歌声が聞こえてきた。 これは、抗えない。 あと、もう一曲だけ、此処にとどまろう。

南 たすく

神田珈琲園さん(の建物)が、2018年5月25日をもって引退されるというので、駆けつけた。 神田珈琲園さんは、昭和32(1957)年生まれの、六十一歳。 私と同年だ。 私が二十ン歳の時、神田で働くことになって以来、話し相手となっていただいてきた。 立ち寄るのは、年に一、二回。 仕事で色々あって、家に直帰したくないような日に、立ち寄らせていただいた。 酒が全く飲めない私にとって、神田珈琲園さんがそこに居てくれることが、有難かった。 予告なしの最後の訪問。 にもかかわらず、神田珈琲園さんは、私の指定席を空けて、待っていてくれた。 手前の吹き吹けを上がったすぐの二階席だ。 店舗の入口側は一面のガラス張りになっていている。 そのため、この席からは、店の外、神田駅界隈を行きかう人々を、眼下にすることができる。 神田珈琲園さんは、自家焙煎、挽きたて、ネルドリップに六十一年間拘ってきた。 「珈琲園アイスコーヒー」(500円)は、こちらのおすすめ。 三種類をブレンドしてあるそうで、まろやかな味わいだ。 「チーズスフレ」(セット+250円:単品280円)は、焼きチーズにレモンの風味が爽やかだ。 この席で、折にふれ、神田珈琲園さんと色々な会話を交わしてきた。 大した話はしていない。 天候のこと。 珈琲のこと。 お互いの家族のこと。 神田珈琲園さんのフルネームには、神田北口店という店舗名がつく。 以前は、同じ神田に神田西口店というご兄弟がいらしたが、こちらは疾うに引退されている。 川越、旭川、山口にお子さん(暖簾分け店)がいらっしゃるが、千葉だけは先に引退された。 二階の壁面は、ギャラリーとして活用されてきた。 この日、「神田珈琲園のあゆみ」というタイトルで、誕生当時からの写真展示がなされていた。 「神田珈琲園61年間ありがとう」というコーナーまである。 そこには、寄せられた沢山のメッセージが貼られていた。 神田珈琲園さんの人柄が、多くの人々に愛されてきたことが良く分かる。 私は尋ねる。 「まだまだ若いんだから、もうちょっと一緒にガンバれないの」 神田珈琲園さんは、静かに答える。 「ここ、神田駅の高架下だろ。 六十一年間、高架を支えてきて、もう足腰ガタガタなんだ。 耐震補強のためには、全面建て替えしかないんだってよ。 来年の春には、後継ぎが此処に建つから。 そいつとも、仲良くしてやってくれよ」 私は、何とか笑顔を作る。 「じゃあ、行くよ」 神田珈琲園さんは、満面の笑顔だ。 「おう、最後に、俺の雄姿を撮影してってくれよ。 上に載せた、中央線を支えているところをな」 私は、片手を挙げてそれに応えるだけで、精一杯だった。

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埼玉県

カフェ

南 たすく

密教における瞑想法に、月輪観(がちりんかん)というものがある。 仏教では自心の本性は清浄であると説く。 これをふまえて、具体的な満月輪をイメージするのが月輪観である。 まずは、広観。 胸中に引き入れた満月輪を、宇宙の大きさにまで広げていく。 そして、斂観。 際限なく広がった満月輪を、自身の胸中に戻していく。 飯能、名栗渓谷沿いの県道70号線。 山々の緑と、清浄な名栗川が、素晴らしい景観を形作っている。 そんな路沿いに、突如、漆黒の点が顕現する。 この世界のもとのは異なる質感がある。 路を進むと、点は一つの建物となる。 それは、「月輪-gachirin-」という名前のcafeだと判明する。 私は、「月輪」に取り込まれた。 2013年6月13日オープン。 小さな、一軒家カフェ。 自家製パン、有機ハーブ使用の飲み物など、こだわりの素材を提供している。 ベートーベンの「運命」や「エリーゼのために」を使ったジャズが流れていた。 「お豆腐マフィン」300円と、「カフェラテ」530円をオーダーした。 「お豆腐マフィン」には、ミックスベリー と バナナがたっぷり。 素材感のある、魅力的な味わいだ。 「カフェラテ」は、やや深めにローストした珈琲にたっぷりミルク。 この世の泡沫(うたかた)のごとく、細やかな泡に満たされている。 「カフェラテ」の泡に見入る。 円形で、その色合いといい、満月輪のようだ。 泡を飲み込む。 胸中に、満月輪が引き入れられる。 そして、宇宙の大きさにまで広がっていく。 やがて、腹が「マフィン」と「カフェラテ」に満たされる。 すると、際限なく広がった満月輪が、自身の胸中に戻ってくる。 私は、「月輪」を出て、再び県道70号線を進む。 後ろにある「月輪」が、どんどん小さくなっていく。

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東京都

中華料理

南 たすく

与ひょうは、そのお店の看板に描かれた鶴を見た。 そして、「つうに似ているな」と思った。 与ひょうは、新宿ゴールデン街で、鶴を助けたことがある。 人相の良くない男に、スカウトされていた。 「花札の『松に鶴』のモデルになってよ」 鶴は、頭頂を真っ赤にして首を横に振っている。 与ひょうは、持っていた『牡丹に蝶』の札を投げた。 花札は、ひらひらと飛んで、男の額を直撃する。 男がひるむスキに、鶴を連れて逃げた。 その鶴の名前が、つうだった。 鶴の看板があるお店の名前は、「鶴の恩がえし」。 店頭には、「得+得 ランチ大サービス」のボード。 これを見ていると、店内から声をかける者がいる。 「恩がえしの大サービスなんです」 顔をあげると、そこに、つうが居た。 与ひょうは、つうに誘われるままに、店の暖簾をくぐった。 大サービスのランチから、「チャーハン&野菜炒め」800円をオーダー。 すると、つうが与ひょうに囁きかける。 「あの時の恩がえしに、私の玉子でチャーハンを作りますね。 だから、決して調理場を覗かないでください。」 そう言われると、かえって気になる。 だって、『つるの玉子』といえば、岡山のお菓子だ。 マシュマロの中に黄身のアンコが入っている。 そんなものを、チャーハンに入れられては、たまらない。 調理場は、カウンターの向こう、吊るされたメニュー書きに隠れている。 与ひょうは、立ちあがって、覗き込んだ。 すると、つうではなく、おじさんが調理をしていた。 そして、普通の鶏卵を、中華鍋に割り入れている。 席に座りなおそうと、そっと振り返ると、そこに、つうが居た。 つうは、素知らぬ顔で、「チャーハン&野菜炒め」を運んできた。 チャーハンには、玉子、ネギ、チャーシュー、胡椒。 野菜炒めには、モヤシ、キャベツ、ニンジン、キクラゲに加えて、豚肉も入っている。 ネギの浮かんだ中華スープ付き。 いずれもシンプルで、飽きのこない美味さ。 良い油を使っているのだろう。 町中華の王道だ。 与ひょうは、中華スープに酢を注ぎ込む。 片手でつかんで、ぐっと飲み干した。 代金を支払い、釣銭を返してもらう。 その際、つうが、小銭とともに、手を握ってきた。 店を出てから、手のひらを広げて見る。 釣銭と一緒に、花札を渡されている。 『菊に杯』だ。 そこに、「今度、呑みにきてね」と書き添えてあった。 ■今回の投稿は丸ごと創作ですので、最後に本当のことを書いておきます。 「鶴の恩がえし」は、1991年のオープン。 店名は、お世話になった方や、お客様への恩返しの気持から。 ボロ儲けはしなくとも、長く続くお店にしたいとの思いが込められています。

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東京都

ラーメン

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あの時、世界線変動率は、1%を超え、ψ世界線へと移った。 1996年10月のことである。 元々、東京は、醤油ラーメンである。 そこへ、日本三大ラーメンが侵攻してきていた。 札幌ラーメン、喜多方ラーメン、そして博多ラーメンである。 それぞれのラーメンは、相容れることなく勢力を競う。 そんな時代であった。 そして、1996年10月、中野ブロードウェイに、人工衛星が落下した。 (実は、これが未来からやってきたタイムマシンであった。) 更に、中野ブロードウェイにほど近い場所に、「青葉」が顕現する。 驚いたことに、そのスープは、東京ラーメンと博多ラーメンをブレンドした「ダブルスープ」だったのだ。 その店名から分かるように、「青葉」の店主は仙台出身。 醤油味の透明な豚骨スープを基本とする喜多方ラーメンの影響もあったのだろうか。 まず、博多のトンコツや鶏ガラなどの動物系スープから脂を取り除く。 そこへ、東京ラーメンの濃い、かつお節、さば節、煮干しといった魚系の和風スープを合わせる。 これにより、それぞれの長所を引き立てることに成功したのだ。 一般のラーメンと比較して、約3倍のゼラチン質。 そして、脂分や塩分を控えながらも濃厚な味わいとなっている。 「青葉」のメニューは、「中華そば」「特製中華そば」「つけ麺」「特製つけ麺」の4種類だけ。 券売機には、それぞれの「大盛」を加えた8つのボタンしかない。 「特製つけ麺」950円へと繋がる未来を選択した。 黄色い中太ストレートの麺も、「青葉」で開発したものだという。 喉越しが良い。 具も、抜かりない。 ほろほろの刻みチャーシュー。 とろりとした味玉一個分。 そして、メンマ、ねぎ、全体を特徴づけるナルト。 スープ割りがまた、「ダブルスープ」の特徴が際立つ。 「青葉」は、ψ世界線において創業後、大きく勢力を伸ばし19ヶ所の支店を構えている。 続いて、数多くの「青葉インスパイア系」が登場した。 ラーメン店と、その愛好家は、それまでの常識を変革された。 かくして、多彩なラーメンが百花繚乱する現在へと至るのである。 ※スミマセン。多くの方には意味不明なネタに走ってしましました。 読み飛ばしてやってください。

9

東京都

中華料理

南 たすく

そのお店へ行かなければならない、という思いに駆られることがある。 今回も、ある方のRettyのレビューを拝見して、その心境に陥った。 有楽町駅前の「交通会館」の中にある「交通飯店」。 ど直球の店名。 常連だというイチロ-も、店名と味の直球勝負に惹かれたことだろうと拝察する。 「交通会館」は、昭和40(1965)年6月18日に開業。 その地域は、戦後の闇市より発展した店舗がひしめき合っていた。 「交通会館」の一階や地階にある飲食店街には、何となくその雰囲気が残っている気がする。 夕食時ながら、先客が2人いて、行列の3人目に並んだ。 昔、東京都の住人だった頃、「交通会館」の2階にパスポートを取りに来た時のことを想い出した。 会館内に長蛇のごとく続く行列に、何度も並び直し、1日がかりで手続きを終えたものだ。 このお店では、多くの客が「チャーハン」730円と、「ギョウザ」450円をオーダーする。 どちらも、そのサイズの大きさで有名だ。 ご主人は、一日、その「チャーハン」を作り続けている。 カッカッカッと、中華鍋に、玉杓子を突き立て続けている。 他の料理は、隣の若い方が担当。 女将さんは、接客担当だ。 次々と料理が出される様子を拝見しながら、列で待つ。 「チャーハン」も「ギョウザ」もとにかくデカイ。 チャーハンは、通常の倍以上ある。 今日は夕食で、腹が減っており、これを食べたいという強い思いに捉われている。 今なら、二つイケルに違いない。 順番が来て、席に案内されるや、オーダーを告げた。 「チャーハンと、ギョウザ」。 カウンターの向こうの若い方が、本当に喰えるのかと見返しつつ、女将さんにオーダーを通す。 水を持ってきてくれた女将さんが、「チャーハン」のサイズを確認する。 実は、この店には、「ミニチャーハン」500円があり、「ギョーザ」とセットなら900円なのだ。 私は、「チャーハン」でと、つっぱる。 絶対、喰える。 絶対、ホームランだ。 そう、自分に言いきかせながら、打席に立つ順番を待つ。 いよいよ、その時がやってきた。 ご主人が、私のチャーハンを作るにあたり、再度サイズを確認してくる。 私は、「チャーハン」でと、再度つっぱる。 ご主人は頷いて、調理にかかる。 と、私の腰が、椅子から持ちあがった。 「スミマセン、やっぱりミニチャーハンにしてください」 かくして、配球された「ミニチャーハン」。 小皿に載っているものの、明らかに普通のチャーハンよりデカイ。 具材はハム、ネギ、卵とシンプル。 硬めに炊いたご飯が旨い、直球の味わい。 「ギョーザ」は、ニンニクを使っていない旨の貼紙が、店頭にある。 お客に近隣のサラリーマンが多いことに、配慮しているのだ。 なかり大きなものが6個。 豚肉、キャベツ、そしてニンニクの代わりに生姜が効いている。 と、私の後の客から、「ギョーザ」の声。 お店の若い方が、女将さんに、残り5個しかないと告げている。 その客は、残り5個の「ギョーザ」をオーダー。 その日のギョーザは完売となった。 私は、900円を支払いつつ、女将さんに再度謝った。 「直前のオーダー変更、スミマセンでした」 #交通会館探訪 1 1 交通飯店(2018/02/14投稿) 2 キッチン大正軒(2018/03/27投稿) 3 純喫茶ローヤル(2018/04/26投稿) 4 ジュン喫茶室(2019/04/18投稿)

10

東京都

四川料理

南 たすく

とある野望を達成すべく、準備を進めました。 まず、体調と空腹具合が肝心。 目標は、通常のラーメン2杯分+αと想定されます。 更に、時間調整が必要。 目標は、12時45分から14時30までの限定メニューです。 場所は、神田「天府」。 2011年9月1日オープン。 四川省出身で、四川で料理を学んだオーナーシェフのお店です。 (「四川麻婆豆腐定食」800円を、2017/09/13投稿済) 今回の目標メニュー名は、「お得!時間限定選べる四点セット」。 メニューの中から四点選べてなんと合計800円(税込)。 その選択肢がスゴイ。 四川担々麺、らーめん、塩らーめん、野菜タン麺、麻婆麺、五目そば(醤油味)、五目焼きそば(軟)、五目カタヤキ(硬)、チャーハン(小)、麻婆丼(小)、中華丼(小)、高菜ご飯、シューマイ、春巻、ゴマ団子、杏仁豆腐、棒々鶏サラダ、きくらげと卵炒め、エビチリソース、酢豚、ニラレバ炒め、アイスコーヒー、ライスの23種です。 そして、私の野望は、麺だけ四点をオーダーすること。 「らーめん、塩らーめん、野菜タン麺、麻婆麺のセットでお願いします」 「そんなに、食べられます?」と、女性スタッフが戸惑っています。 私は、「ハーフサイズですよね」と確認。 それに頷いたうえで、女性スタッフは「できるかどうか、確認してきます」と調理場へ。 結果、できないとのご回答です。 野望は、あっけなく潰えました。 落胆のあまり、オーダーの再決定が、ぐだぐだになってしまいました。 五目焼きそば(軟)、チャーハン(小)、シューマイ、そしてアイスコーヒー。 焼きそば、餡がとろりと具沢山で、麺が美味しい。 チャーハンだって、しっとり具沢山。 シューマイは、デカくて、ジューシー。 オーダー後、きちんと一品づつ作っているからこその麺四点不可でしょう。 だからこその味わいと、満足感。 残念なんてことは、ありません……ありませんとも……。