銀座6丁目の交詢ビルに昨年開業した肉割烹です。店内は明るい白木調の内装で清潔感のある温かみを感じるもので案内された席はカウンターの板長さんが良く見える特等席!!このカウンターに使われている桜の一枚板は長さも厚みも素晴らしい銘板で、インテリアや調度品、カトラリーに対してかなりこだわりをお持ちであることがうかがえます。 お料理はお品書きにあるコースのみですが品数を減らしてお肉多目にもできるとのこと、初めての私たちは色々と楽しみたいということで品数はそのままにしました。コースはお肉の種類で値段が変わるので、最初に炭火焼きにするメインのお肉と土鍋ごはんに使う米を選びます。サーロインかヒレで迷ったのですが2人の好みの間をとって多少脂の多い銘柄牛(山形牛)のヒレを、土鍋ご飯には相方の意見で長野県川久保米穀のコシヒカリを選びました。 まず、ウェルカムドリンクとしておちょこに1杯分の薬草のお粥が出された後、乾杯用の食前酒として自家製の山葡萄酒が注がれます。やや土の香りが残る葡萄酒はワインとも違う自然の味でした。 料理が始まるときにシャンパンで軽く乾杯!! 本日のお品書きは以下のものです。 ・河豚の茶碗蒸し ・和牛タン 生ハム仕立て ・キアニーナ牛の炙り ・鳥の白味噌仕立て ・和牛サーロインのしゃぶしゃぶ すっぽんのスープにて ・丸吸い すっぽん安平 ・八寸 黒豆/松前漬け/田作り、牛寿司、子牛の炭火焼、ハチノスのトマト煮、自家製ローストビーフ ・和牛と河豚の白子揚げ 柚子塩 ・厳選黒毛和牛炭火焼き ・食事 土鍋ご飯、赤出汁、香の物 ・白玉ぜんざい ・抹茶 お肉までの料理はどれも素晴らしいのですが印象に残ったのが初めていただくキアニーナ牛、イタリアの白い巨牛で育成数が少ない希少な牛肉で最近輸出が解禁されたとのことで、カブリの部位を軽く炙り芽キャベツと菜の花を添えてブラックペッパーソースに自家製カラスミとパルミジャーノを削って散らした大変色彩の豊かな一皿で、サシが入っても締まった肉質が楽しめます。 もう一つ印象に残ったのは八寸のなかのムース状になった生のカラスミをソースがわりにしていただく肉寿司で、カラスミの塩気と旨味が牛肉にすばらしく合うことを発見!!また和牛と白子の揚げ物は茹でた白子を薄切り肉で巻いて薄く衣をつけて揚げたもの、白子の風味を感じられるよう牛肉との配分が工夫されているそうで、外側はパリッと、中はフワッととした仕上がりでねっとりとした白子がソースのように牛肉に絡みつきます。 メインの炭火焼きの付け合わせは春菊とからし菜の酢味噌がけ、薬味類は石川県すずの塩、生胡椒の塩漬け、九州の丸大豆醤油、フキノトウと味噌のソースです。すいぶん前から炭火で火入れしていたヒレ肉が一口大にカットされ、静岡の本山葵と北海道の山山葵とともに供されます。まずは山山葵と塩で一ついただくと、口の中で山葵の香りとともに温かいヒレ肉が溶けていくのです。これがヒレ肉か?と思う艶やかさとジューシーさと甘味すら感じる肉の味は初めての体験でした。薬味はどれも肉の味を損なわない配慮がなされたもので、特に塩漬けの生胡椒の風味がよくて大変おいしく、これはご飯のお供に少し残しました。 肉のおいしさで我を忘れてしまったところに、日常に戻る準備をするがごとく土鍋で炊いたご飯が出ます。大粒のコシヒカリは表面はピカピカ、底にはうっすらとおこげがあり、赤出汁も含めてこの組み合わせは日本人でよかったと思える瞬間ですね。食べきれずに残ったご飯はお持ち帰りでおにぎりにしていただきました。 最後の白玉ぜんざいは最中の皮を器にして生クリームと白玉、苺にぜんざいをかけたもので、デザインと発想が斬新な和スイーツでした。 お料理のすばらしさは言わずもがななのですが、随所にこだわりがあり焼き場やしゃぶしゃぶのコンロは京都の陶芸家による陶器製の特注品、桜のカウンターは落ち着いた雰囲気を出すためにニスを落として木肌を楽しめるようにしたり、スタッフには通訳(イタリア、英語、中国語)の方もいらっしゃるそうです。小さいですが個室も完備され、プライバシーが欲しいときにも利用できます。「もてなす」という意味をつくづく考えさせられました。 板長さんはもともとはイタリア料理の出身だそうで、八寸の中に組み入れられたトリッパや白味噌クリーム仕立てなど洋を取り入れながら和を追求していき、それがまた新しい流れを作っていくのだと思います。開店してまだ1年だそうですがほぼ1か月単位でメニュー構成を変えていくとこのとで、今後も注目していきたいお店の一つとなりました。 #和と洋の融合