菊酒にへうげる。 重陽の節句を茶懐石志ら玉で祝う機会に恵まれた。 志ら玉は、趣ある書院作りの歴史ある名古屋を代表する料亭で、茶事ができる茶室を備えた茶懐石が持ち味。 古く中国より伝わった陰陽道では、奇数を「陽数」とし、「1月1日」「3月3日」「5月5日」「7月7日」「9月9日」の奇数ぞろ目の日5つを節句としてお祝いする風習がある。 このうち最も大きな奇数 9の月の節句を 重陽の節句といい最高の節句として長寿を祝ったという。 旧暦で菊の花の季節だったこともあり菊を飾り、菊酒を呑んで長寿を願ったため、菊の節句ともいわれている。 他方、茶懐石。こちらは茶事の際、茶の湯を愉しむ前に出される食事として発展した。 客人を気遣う姿勢は茶事そのもの。 食材や器に季節を盛り込み、宴席の花、掛け軸まで気を遣われたその空間を愛でる食事。なんて贅沢な世界なんだろう。 菊酒に始まり、目にも鮮やかな秋の宴。 銀杏のすり流しはの、わずかな季節にしかない緑の銀杏を用いて苦みと青さを愉しむ。 夏の終わりの鱧に秋の始まりを告げるマツタケを合わせる。 一つ一つの料理に使われる食材と器の組み合わせの妙に気付けるか? 月のお皿の隣の料理を食べたらウサギが現れる。 客人も知識を問われるし、知識があればなお楽しめる世界。 水車板に飾られているのは風知草。 おふけやきの器かな? 茶の湯では貴重なお椀を見せていただき へうげるの本当の意味を知る。 昔の人は本当に知的な遊びを愉しんだもんだ。 今なおそれが愉しめる場所がここ名古屋上飯田にあること これは本当にすごいこと。 名古屋の奥深さ、もっと知りたい。