神戸太郎

神戸太郎さんの My best 2021

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愛知県

懐石料理

神戸太郎

菊酒にへうげる。 重陽の節句を茶懐石志ら玉で祝う機会に恵まれた。 志ら玉は、趣ある書院作りの歴史ある名古屋を代表する料亭で、茶事ができる茶室を備えた茶懐石が持ち味。 古く中国より伝わった陰陽道では、奇数を「陽数」とし、「1月1日」「3月3日」「5月5日」「7月7日」「9月9日」の奇数ぞろ目の日5つを節句としてお祝いする風習がある。 このうち最も大きな奇数 9の月の節句を 重陽の節句といい最高の節句として長寿を祝ったという。 旧暦で菊の花の季節だったこともあり菊を飾り、菊酒を呑んで長寿を願ったため、菊の節句ともいわれている。 他方、茶懐石。こちらは茶事の際、茶の湯を愉しむ前に出される食事として発展した。 客人を気遣う姿勢は茶事そのもの。 食材や器に季節を盛り込み、宴席の花、掛け軸まで気を遣われたその空間を愛でる食事。なんて贅沢な世界なんだろう。 菊酒に始まり、目にも鮮やかな秋の宴。 銀杏のすり流しはの、わずかな季節にしかない緑の銀杏を用いて苦みと青さを愉しむ。 夏の終わりの鱧に秋の始まりを告げるマツタケを合わせる。 一つ一つの料理に使われる食材と器の組み合わせの妙に気付けるか? 月のお皿の隣の料理を食べたらウサギが現れる。 客人も知識を問われるし、知識があればなお楽しめる世界。 水車板に飾られているのは風知草。 おふけやきの器かな? 茶の湯では貴重なお椀を見せていただき へうげるの本当の意味を知る。 昔の人は本当に知的な遊びを愉しんだもんだ。 今なおそれが愉しめる場所がここ名古屋上飯田にあること これは本当にすごいこと。 名古屋の奥深さ、もっと知りたい。

神戸太郎

美濃焼を愛でながら、美味い酒采に酔いしれる。 東海上級デートなんて番組があれば、間違いなく組み入れるここは取っておきのデートに使いたい大人の隠れ家だ。 ただ、今日はひとり。 器探しは、相棒を見つけるのと同じ。 ならば、自分で焼いた器ならさぞかし可愛かろうと、秋の週末、多治見で初めて自分のお茶碗を作りにきた。 セラミックパークでは1000円でロクロ体験ができる。 かわいいお姉さんに手ほどきを受けながら、焼きあがるのは1月半後。待つ時間も楽しみだ。(完成品写真は最後にちょっとだけあげておきます) そんな体験も東海上級デートに組み入れたい。 美術館に立ち寄り、オリベストリートにある山の花で若きオーナーと貫入の魅力について語り合い、陽も落ちて静かに流れる土岐川に橋の灯りが映るころ立ち寄ったのがこちら二代目 浪花さん。 カウンターには無数の美濃焼のお猪口が並ぶ。 ぶら下がるたくさんのおすすめメニューに悩むことしきり。 喉の渇きを黄金色の炭酸で癒したら、 鮎の塩焼きをもらって次は日本酒。 お猪口を少し手に取り眺めさせていただいていたらそのお猪口で呑みますか?と洗って出していただけた。 そこから大将と会話をしながら今宵のよきつまみを探る。 刺身、独りだからなと言うと、1人前良いところ盛り合わせましょうか? まるで孤独のグルメだ。 奥美濃古地鶏ですが塩焼きが一番おススメなんです。 歯ごたえと旨味が沁みますよ。 筍シュウマイ、熱いけど日本酒に意外に合うから 試してみてください。 どの料理も全くはずれがない。 季節の白エビはてんぷらに。 もうお腹がかなり一杯だよ。 奥美濃地鶏に塗って焼く予定だったフキ味噌と自家製ゴボウ味噌が気になるんだよな。 呟きは見逃されない。 味噌だけ、出しますか? 嬉しいです、感涙です。日本酒もう1合ください。 〆はおにぎりを。梅干しできゅっと。 他人に握ってもらうおにぎりって何故こんなに美味いのか。 結構呑んだけど4500円ぐらい。 あ~やきものの街を堪能するのに、この店は欠かせないなと思いました。 多治見の二代目 浪花 常滑のレストラン共栄窯 瀬戸の手打ちそば 志庵 やきものの街の大人デートにどうぞ。 また絶対に来る。

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岐阜県

フランス料理

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岐阜駅から柳ヶ瀬、長良川にかけての魅力は、冬の弱々しい陽光に揺れる枯れ草のような昭和の落ち着きだ。 岐阜旅のランチは柳ヶ瀬商店街。 大人の女性が昼間から美味しい料理とワインをカウンターで静かに愉しむ店。 半地下の目立たないミシュランプレート掲載店、ラ・カルパス。 コンクリートうちだしの店内。どれも気になるメニュー。1500円のセレクトコースをオーダー。 前菜のニンジンのムース。 一口目は甘くてデザートのように冷たくふわふわ。 粗塩でシュッとしまる。 クリーム煮のオイスターは超大振りでぷりぷりに膨らんでいる。 ほうれん草とオイスターのほろ苦味があっさりとしたクリームで見事な調和。 鶏肉のコンフィは、中にレバーのミンチが詰めてあり、 その深みが口に入れると筋繊維が塩味で柔らかくホロホロ崩れる。 ハーブも緩く効かされていて美味しい。 付け合わせ野菜は硬さを残してそれぞれの味を引き出している パンもまた窯焼き風で、酸味があり美味い。 これで1500円(税込み)はあり得ないコストパフォーマンス。 お値打ちすぎる。 誰もが感動するランチ、ここ、岐阜にあります。

4

愛知県

カフェ

神戸太郎

シードルに目覚めた。 「一座建立」 最近思っていることなんですけどね。 茶道っていいな、と。 ありとあらゆる美の世界が「おもてなし」という一つの精神性の中に究極的に集まっている。 それは茶道の創始者 千利休のこんな言葉に出会ったから。 一座建立 客人を招く際にはできる限りの工夫を尽くす 招かれた客はまたそれをできる限り感じ取り愉しむ、そうして心が通い合い、気持ちの良い状態が生まれる またキリキリしています。 僕の生きる広告の世界は、いつの間にかフェイクが溢れ、プロを自任しない人が広告を売れればいいビジネス、セールスプロモーションと同義にして扱い、ともすれば、世の人から嫌われるようになってしまった。 これではいけないと思うのです。 広告の出し手、作り手は、世の人のために、できる限りの工夫を凝らしてそれを愉しんでもらって、こころ相通じる世界を作り出す。 それによってお互いに気持ちの良い状態を作るアドバタイズメントの復権がコミュニケーションが問われた2020年を経ていま改めて必要だと思うのです。 そんな気分のままに、茶道具の名器が揃う昭和美術館へ。こんな素敵な空間、人がいません。 静寂の空間で一人、美とヒリヒリするまで会話した後に、ようやく息を吐きだすようにランチ。 ルバーブは、本格的なガレットがいただける名古屋でも珍しいお店。 蕎麦粉のガレットにはシードルがよく合いますよ、というマダムのお話に頷き、これまた珍しくシードルをオーダー。 リンゴのお酒。知識がありながらも、どこかシャンメリーのイメージがあり、とても甘いのかなと思っていたのだけど、こちらはすっきり辛口で 後から来るリンゴの甘酸っぱいフレーバーが心地よく喉に流れていきます。 ああ、ようやく息が吸えた。 蕎麦粉のガレットには、アンチョビトマトに玉ねぎのシードル煮を選んで乗せてもらうことにします。 こちらも、さっぱり。甘さと辛さのバランスがとても良き。 ここまで甘さ控えめに食事にしたので、クレープはデザートの気持ちでマロンクリームをオン。 このシードル。本当に美味しい。 ホワイトデーに義理でいただくチョコレートのお返しに使っても良いな。 なかなかこれほど美味しいオーガニックは日本で手に入らないのだろうけど、手を尽くして探してみよう。 「一座建立」 2021年はこの言葉を大事に生きよう。