神戸太郎

神戸太郎さんのMy best 2018

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三重県

季節料理

神戸太郎

「重森三玲のお庭がお好きなら菰野の『ちそう』というお店に行かれると良いですよ。」 錦で器を売る「かたくち屋」の店主(着物姿が美しい)から購入した小皿をこちら東福寺の「市松の庭」のようですね、と評した際に添えられた言葉。 学生時代、アバンギャルドなアングラ演劇を志向していたのと同時に、何故か寺社の庭を見るのが好きで庭巡りをしていた僕が、重森三玲なる作庭家に出逢うのは必然でした。 庭は自然か芸術か…この問いに対して、庭を芸術と捉えた作庭家、重森三玲。グラフィックデザインのようなモダンな庭に、流れを生む石組と地割。東福寺の市松の庭、北斗七星の庭に限らず、松尾大社の曲水の庭、竜吟庵の無の庭、、驚嘆のセンスに時が経つのを忘れ、見入り、また当時、舞台美術の着想を得てきました。 気になりつつも約ふた月が流れ、今年で最後を迎えたソーシャルタワーマーケットで、ちそうの女将とまさかの出逢い。 まだ若い女将、僕がいつも眼鏡を買う女子店員さんとお友達なんだもん。ご縁って恐ろしい。これは、、必ず訪れねば。とようやく重い腰を上げ、秋の菰野路を旅することに。 お酒が呑みたい僕は女将と相談の上、電車で伺い、お昼のコースをいただくことにしました。 メインはお魚かお肉を選択できますが、最近お肉が続いていたのでお魚をお願いします。雨が降りませんように、とメールしたところ、雨のお庭もまた美しいので愉しみにお越し下さいとのお返事。 四日市で乗り換えて中菰野という無人駅に。生憎の細雨。そこから山の紅葉を眺めながら、田んぼや畑の点在する住宅街を地図を頼りに7-8分。 ちそうの看板のある松の門を潜り、長い石畳を歩いた先に、古民家の門。その先、中庭を抜けると御屋敷の引き戸。開けると柑橘の仄かな香りがする土間。 畳の玄関部屋には季節の香りを漂わせる香具が吊り下げてあり、下の水を張った器に静かに香水の雫が垂れる仕組み。 奥へ通されると大広間から前庭が全面にどどーんと拡がっています。わー、素晴らしい。静的なる庭に動きがある。華道のように風が波が流れている。なんてこった。三玲の庭を眺めながらご飯とお酒を頂ける幸せ。 まずは日本の白ワインをグラスで頂き、お料理がスタート。木の子のスープ柚子胡椒仕立て。こっくりしたスープは秋の幸せ。 雨だからこそ部屋もしっとり、苔が雨粒に光ります。美味しい。。。 続いて小皿の盛り合わせ。 里芋バジル、豆腐に穂紫蘇とエディブルフラワーを。原木しいたけには、ブルーチーズ。山芋にパクチーとナンプラー、バターで。近くで取れたての蕪はそのまま齧る。これはフルーツ?って程に瑞々しい。 あとね、豆腐に塩味をつける穂紫蘇、これだけでお酒が呑めます。 売って欲しい…。 日本酒、田光で。酒器がまた素晴らしい。 箸を休めて、庭を見て。再び美味い酒と料理に舌鼓。感性が喜ぶ豊かな時間。 裏庭はまた三玲の一つの顔であるモダンな 縞柄石庭。1896年生まれとは思えない、いや、永遠のモダンを体現するお庭。 瀧自慢にお酒を変え、皮目を炙った石垣鯛とルッコラのサラダを戴きます。この石垣鯛がまた絶品!ルッコラのサラダが日本酒に合うアレンジでこれまた絶品! 締めは雑穀米、おみをつけ、季節のお茶は、毎月茶屋さんに作っていただいているそう。 デザートはフルーツポンチを。 ゆっくり2時間かけて味わう至高の時間。 季節を変えて、また訪問を心に誓う、そんなお店。 なぜ、この地に三玲が作庭をしたのか? 横山さんというこの地でお医者様などをされていた実業家さんが、三玲に惚れ込みお願いしたんだとか。生涯で約200と言われる三玲の庭。なんと贅沢な。そしてちそうのご主人はご縁あってお借りすることが出来たんですと嬉しそうに語ります。 流れる世界の中でなにごともご縁に導かれている。そんな風に想い重ねる秋の菰野路でした。 あ、オトナ男子の皆様、こちらに大切な女性をお連れしたら、とても喜ばれると思いますよ。その際には是非、僕の大好きな作庭家・重森三玲さんについても少し勉強して下さいね。お庭や現代アートに興味がない方も彼の庭を観ると、きっと何かがココロに宿るはず。ぜひ! ※かたくち屋さんで買った市松の庭を思わせる小皿は、栗きんとん すや 本店のレビューにて写真を載せています。こちらも、是非!

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岐阜県

炉端焼き

神戸太郎

素晴らしい食体験をしてしまった…という感想。 生きてきた中で一番美味しいお店だったかもしれません。 某ログ4.75の評価は伊達ではありませんでした。 車を降りたところは山の中、灯りも少なく虫の音に名古屋に比して空気もやや肌寒く感じます。 目の前にある古民家の扉を潜ると、高い天井と艶ある木造建屋を流れる温かな空気にいきなり時間がゆっくり流れ始めます。 奥のお座敷に通され、部屋の扉を開けると、真ん中に大きな炭火が燃える囲炉裏、そして、火の番のお母様がちょこんと座られていて、串に刺された鮎にゆっくりと火を通されています。 ようこそいらっしゃいました。 鮎は見たこともないほど大きく、そして紅色を帯びています。 まずはビールと前菜。 桜鱒のお刺身に、蜂の子を佃煮にしたヘボ。川魚にありがちな臭みは全くなく、口にすると旨味が膨らむ桜鱒。うわぁ、すぐ日本酒に参りたい! ヘボも初めて食べましたが、甘みの中に山椒かな?爽やかな刺激があり、珍味という嫌な感じは全くしません。ただ、酒が飲みたい。 日本酒は4合瓶でワインのようにクーラーと一緒に。地元のお酒をとお願いし、岩村の女城主を。 一人一人焼けた大きな鮎をお皿の上へ、まるで優雅に川底を泳ぐかのように並べて、召し上がって下さい、と。今年、もうそろそろ終わりの鮎。紅色を帯びているのは季節に依るものだそうです。骨は綺麗にするりと抜けます。 こんなに大きいのに頭から頂けます。 内臓部分の苦味と表現すべき部位は、単に苦いではなく、言葉にできない清涼たるほろ苦さ。こちらの夏の緑綺麗な川苔が脳裏に浮かぶから不思議です。 身はほくほくに膨らんで臭みなどまるでない白い美味しさ。これ食べたら、もう他の鮎食べられないよー。 続けざま松茸が串に刺されて焼かれます。 時折お母様が焼け具合を見ながら、トプンッとたまり醤油ベースのタレにさっと潜らせて焼くものだから、松茸のあの芳しき香りと焼けた醤油の香ばしい匂い、炭火の柔らかな煙香が合わさり、堪らない芳香が漂います。 焼かれた松茸。はぁ〜。 大き目に割いて口に運ぶと、クシュッとした歯応えがあり、その後すぐ鼻腔を先の香り三重奏の濃密バージョンが襲ういます。いや〜、ヤバイ、秋、ヤバイ。 次はこの地区にしか生息しない日本の固有種、味女ドジョウ。アジメとはドジョウの中で最も美味しいとされるが故についた名前だそうで、唐揚げにて、高山の天然野菜と共に。確かに、カタチはドジョウの唐揚げながら、上品な白身魚を食べているかのような味わい。 そして、松茸以上に貴重とされる老子茸と香茸が炭火に焼かれ、たまりを纏って順に供されます。昨日、今日、明日のお客様は良かったですね、うちでも捕手さんから良いものを分けてもらえた時しか供せないのですが、たまたまこんな貴重なキノコが二種類も同時に手に入ったもので、とお母様。 老子茸は深いコクのある苦味に森の奥の落ち葉、微生物の沢山暮らしている豊かな土壌を感じます。深い食感。 香茸はその名の通り、胃袋に入って尚、翌日の朝まで微かに馨しい香りが感じられるほどに、焼きたては物凄い香水を食べているかのような香りがします。 天ぷらは、松茸、紫杏茸、釈迦しめじ、黒皮茸、正源寺茸、舞茸に香茸。抹茶塩を合わせていただきます。 トイレで出会った別組のお客様。 京都からバスチャーターで年一、ご家族でお越しになる常連さんだそうで、こちら本当に日本一美味しいと思いますと。 部屋に戻ると焼き手さんが先のお母様の息子さんに。鹿のヒレ肉が焼かれています。 こちらもジビエの野性味ある臭みなど全くなく、ただ他のお肉ともまた違い、鹿のさっぱりとした美味しさ、野趣ある食感だけが口に広がる美味。 狩人さんの腕が重要だそうで、お腹などに弾が当たると血の味が肉に付着し、それが臭みになるそうで、頭に一発、でないと仕入れないそうです。命を戴く話、感謝しながらこうして、一番美味しく頂かないと。 ここでまたお口直し的に酒菜が。 香茸、冬瓜、茗荷、いくち(アミガサ茸)、蕪に湯上り娘という品種の枝豆。 囲炉裏では、鹿に続いて猪。 こちらはステーキのように最後は強火で表面を軽く焦がすかのように焼き上げられて供されます。鹿に続いて野趣あるもののさっぱりと甘みのある肉汁、締まっていながら口の中でほろほろ柔らかく崩れるような猪、食べたことのないジビエです。 締めは長良川天然うなぎ。白米にうなぎのタレがかかったものと、山椒の炊き込みご飯。フルーツ。清流鰻の脂は優しい。 食べてる最中は、ずっと、 あゝ、この幸せな時間がいつまでも続きますように。 食べ終えた今は、またこの時が訪れますように、と。皆さま、長生きしましょう。旅しましょう。日本にはまだまだ美味いものがあります。

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愛知県

魚介・海鮮料理

神戸太郎

海老への愛が止まらない。 さすが、海老LOVEシティ名古屋。こんなところに究極の海老まぶしを隠していたとは!! ここは海老せんべいで有名な桂新堂 本店。良く姿造りの海老せんべいを全国有名百貨店で見ますよね。その本店地下に、ランチだけ、予約できない海老をふんだんに使用した食事が楽しめる店があるんです。 その名を百福庵と申します。 一日先着50名限り。 11時から来店順に一回店舗奥のエレベーターに通していただけます。 メニューは、海老まぶし膳2160円一択。 席に着いてまず前菜の活け車海老を塩焼きにするかお刺身にするかと聞かれます。 勢いよくタライで泳ぐ海老を眺めて、残酷ながら、刺身で!とオーダー。 今さっきまで生きていた車海老、まだ身が少し動く刺身を山葵醤油で頂きます!プリップリ、そして、ふくよかな甘さ。 ほっくり玉子焼きでお口の味を整え、次いきましょう! 椀物は甘海老真丈。透明な餡の中に紅白素麺の下に仄かにピンクの海老真丈。ほくっとしたあと、プリッ。こちらはまた違う優しい甘さ。 お出汁の味とよく合います。 吸物は桜海老とおかひじき。 白く色が落ちた桜海老が一匹、哀れ椀の表面を漂っております。小さな海老も数が集まれば力強い味わい。おかひじきがシャリシャリといい味だしてます。 さ、ここで、焼き車海老と赤海老そぼろのまぶしが登場。表には焼き車海老がびっしり敷き詰められており、ピンクの花が咲いたよう。木の芽がまた香り高く春感を高めます。 まず、四等分。 一膳目は、そのまま車海老の旨味を。 と、茶椀に取ると中から赤海老の大ぶりなそぼろがポロポロ。 ふむっと口に入れるとふわっと海老の香りが鼻を抜けます。美味い〜! 二膳目は、出汁醤油と白ネギ、メチャ辛い柚子胡椒→これが美味い!を加えて、味の変化を楽しみます。ピリッと痺れたあとに海老の旨味は素敵すぎるコンビネーション! 三膳目は、程よく温めていただき白身が少し固まった生卵を海老まぶしに掛けて。 え、これ!至高のTKG、卵かけ海老まぶし とはこのこと。だし醤油に先の柚子胡椒を加えたらこれはまた、オトナ嬉しい、今まで食べたことのない旨さ。 最後四膳目は、こちらのお店特製のだしを掛けて。この出汁が飲めるほどに美味い。どうやら北海道産甘海老と鰹、昆布で取っていて仄かなあっさりとした海老の香りが効いています。 柴漬けと交互にいただきます。 さらさらと口の中に流れる車海老、赤海老そぼろ。これを最高と言わずして何をそう言うんだろう。 さらにお菓子で緑濃い緑茶に、季節のえびせんべいを。ちなみにいまは桜風味で、食べ終えると、盛り付けの下に桜が現れる仕掛けもまたよし。 1時間掛けて頂く至高の名古屋海老ランチ。お腹は満腹、お値段は安すぎると感じました。 この出汁、お店で売ってるようで、一人暮らしのお客様との宴席の手土産に出汁と姿造りの海老せんべいなんて、いいんじゃないかな。今度また必ず使います。

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愛知県

焼肉

神戸太郎

神戸太郎的 2018年上半期 やばい肉名古屋1位、全国なら2位に輝きましたお店をご紹介です。 ここは雨の尾頭橋。ナゴヤ球場がドラゴンズの本拠地だった頃、夜は盛えていたと聞きます。その名残か商店街の近く、住宅街の中にポツンと焼肉泰久館の灯り。看板がなければ民家です。 中に入ると中は結構広くて、お座敷、テーブル席が数席。ビールを頼んで、お肉は10g単位なんだ、と話していたら、店主さんがやってきて、大きな肉塊を片手に、「他所はね一人前っていっても70gや80gや店によって違いますんや。うちはね、明朗。きっちりgで提供するのが誠実さだからね」とのこと。 肉塊を見せながら、サーロイン、リブロースを説明してくれたもんだから、よしっ、サーロインステーキ200gお願い!ってことに。 サーロインは分厚く大きくカットしてもらい、店員さんに一番美味い焼き具合に丁寧に焼いてもらった後、真ん中にバターを投入!ポゥッと上がる火柱が収まれば完成。急いで召し上がれ。 やばいぐらい美味い!焼肉ではないぞ、ステーキだぞ。ステーキは鉄板、焼肉は穴のある網的な鉄板で焼くから、余分な脂が上手く落ちて、ぐんぐん食べられます。 さっきの塊で約1キロらしい。 塩タンや上ロース、レバーを戴いて、こちらは好みの焼き加減で。 タンなんて、ギュッと噛めば、ジュワワ〜シャリンッと肉汁が湧き出た後柔らかくかみ切れ、これはかなり天国に近い場所。 店主さんのサービスで今日はこれを、と差し入れてもらったのは剣先イカの下足。 これがね、不思議なぐらい焼いても生イカくらいに柔らかいのだ! シメにクッパを頼んだら、一人前でも結構な量に。またまあサービスのデザートにメロンとさくらんぼを戴いて、お値段は一人8000円見当。 通常メニューも美味いが、その日の黒板メニューがまたすごく美味いらしい。 秋は松茸とサーロイン、冬はたらの白子のピリ辛鍋など、焼肉に加えて魚貝も鮮度抜群らしい。 今度は同席希望者を募って、松茸サーロイン食べに来るぞ! 冬もたらの白子鍋を! いやあ、お値段以上に贅沢した気分です。

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愛知県

魚介・海鮮料理

神戸太郎

2月某日。冬を納めるべく、愛知の海の幸、ふぐづくしを味わいに日間賀島へ。 大阪以西では古来からフクと呼ぶフクれる魚、河豚。平安時代に既に布久と書いた書物があるそうで、その頃食べて命を落とした人もいたんだろうなぁ、と遥か昔に思いを馳せつつ、毒ではなく、福よ来いと、フェリーで日間賀島へ向かう。 名駅から約1時間。西港から島の中心部に向かい坂を少し上がると、綺麗な旅館 すず屋 海遊亭。 ふぐづくしと、知多の海を一望する屋上にあるお風呂への入浴が付いたプラン。このプランで一番人気のお宿が運良く手配できました。 旅館のロビーで一息ついた頃、お迎えに従い、エレベーターて和室の小広間へ。 まずはふぐの皮ポン酢に、ふぐ皮の煮こごり、ひまか細モズクとタコワサビ。ふぐ三箇所部位が楽しめるお刺身てっさ。 これらは全て日間賀島近海で取れたとらふぐ。 分厚く切られたふぐ皮はしなやかにコリコリ。煮こごりは綺麗な琥珀色のゼリーが予想を超える深い旨み。 てっさは細ねぎを巻いて専用ポン酢で。特に皮と身の間ぐらいのプニュッとした部位、そして身のモチモチが対照的で、天然ふぐはあっさりながら甘み、食感がすごい。 続いて、特注しておいたふぐの焼き白子。 生クリームのような舌触りながらあっさりとジューシー、焦がされた部分の香味が薫り立つ、これ至福の一品。 次にきんふぐの唐揚げ。地元ではきんつと呼ぶらしく、とらふぐに比べ身がほっこり大きいのだそう。絶妙なる塩胡椒加減にレモンをかけてしゃぶるように戴く。熱さをほひほひと愉しむ。 ここで、サービスの日本酒、次いでビールから切り替えて、ふぐのひれ酒投入。うーむ、この薫り、味の深み、香ばしい!出ました!うま〜い!柏手三つ! ふぐづくしはまだまだ終わりません。 さらに、てっちり。まずは昆布出汁、冷たい状態からふぐを入れ、少し浮き上がったところでふぐの身を紅葉おろし入りのポン酢で頂きます。上品な脂ののった白身をはむっ。ほー、美味いねー。柔らかいねー。 野菜、木の五、お豆腐はそのあと、ふぐから出た出汁で味わう。あー、こんな湯豆腐ありなの?たまんない。 シメは卵を溶きいれ、ふぐ雑炊を作っていただく。塩加減を確認させていただき、薄味に仕立てて、刻み海苔をさっと。 まずはそのまま、途中でポン酢を二、三滴垂らして味を変えて二度楽しみたいんだもの。あー、言葉にならない多幸感。愛知に来て良かった。 デザートのシャーベットをいただいたあとは、高層展望風呂を戴き、ほこほこでおみやのタコ飯用の干しダコを買って、夕焼けを眺めながらフェリーで帰名。 全国的にはナゴヤメシばかり注目されるこの地ですが、季節ごとの海の幸、山の幸、そして昔から変わらない何もない島時間をもっとずっと楽しみたいな。それこそが豊かなこの地の本当の魅力なのかもな、と、ね。

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愛知県

日本料理

神戸太郎

金のシャチホコ 上がりました!! 「見たか聞いたか 名古屋の城は 五十やぐらの絶頂に 金のしゃちほこ雨ざらし♪」 東海道の旅人が、天下様でも叶わぬもの、と尾張ご威光に驚いたという唄に合わせ、名妓連のお家芸 「金のシャチホコ」が見事に上がります。 やっとかめ文化祭のお座敷ライブなるイベントで訪れた料亭、香楽さん。敷居は高いと言われるんですが、ちゃんと敷居は削ってありますので気軽にお越しを笑 と若女将。 歴史ある佇まい、秋のお庭、金屏風の料亭で名妓連の舞妓さん芸妓さんにお酌して頂いてお座敷遊び、さらに美味しいお料理を頂けるなんて、夢のような一夜でした。 今宵のお料理は、 向付に鯛、平貝、車海老、エリンギ、長芋昆布締めにゼリーをかけたもの。ゼリーが美しくぽん酢味でしゃりしゃりの平貝やひと炙りした鯛を美味しくまとめ上げます。 一杯目の生ビール、ガス圧が強くいつまでも泡が消えることなく美味しいです。 椀は、のどぐろ、今市蕪、松茸 今市蕪が甘いのだ。のどぐろはまるで鰻の白焼きのようにふわっと濃厚な旨味。松茸はひと噛みで鼻にあの芳しい香りが立ち上ります。 お造りはひらめとかんぱち。 ひらめは熟成されており、ねっちりと舌の上で旨味弾ける。かんぱちも脂がのってて美味しい。 ここで、名妓連さんによる踊りと小唄。 かつ子さんの三味線の響きは日本酒に合います。 休は栗と銀杏の飯蒸し 干し子ぞえ 干し子の旨味を伴った塩味だけで、むっちり餅米に包まれた秋の味覚を愉しむシアワセ。 やっこの踊りや、金のシャチホコが上がった後は、焼物を食べながらお座敷遊び。 ビール瓶上げや野球拳でひと盛り上がり。 焼物はまながつおの柚庵焼き、豆苗のおしたし、絹かつぎにたたみいわし。これがまた熱燗 黒松白鹿 喜十郎にぴったり。 煮物 焼き茄子、帆立、法蓮草、生うにに銀餡をかけて。茄子もこの季節、こうして焼いて皮を剥かれ、生姜と食べると本当に美味しいですね。 ご飯は秋鮭のお茶漬け、香の物、水菓子にフルーツのゼリーよせ シメがお茶漬け、って、とても良い!日本の伝統芸に伝統の〆。お料理全ての完成度がさすが料亭と言えるクオリティの高さ。 舞妓 こ糸さんとひこ乃さんのバイオリンとピアノまで飛び出し、やんややんや。 ああ、あの金のシャチホコ、演技も良さそうだし、年末年始に向けて、家でこっそり練習しようかな。

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岐阜県

日本料理

神戸太郎

山深き東濃。紅葉始まるこの時期だけ秋の栗会席ランチを頂ける料理旅館が中山道 しぶろくの四十六次の宿場町大井、今の恵那にあります。 ここはあまり知られていないのでお忍びに、こっそり使いたいお店。 宿場街の角地にあったため角屋と名付けられた創業1624年の旅籠屋、明治には旅館いち川と名を変え、いま14代、15代、16代の三人の女将からおもてなしをしていただけます。 秋の栗ミニ会席は3500円。絶対にお値打ちです。 風情ある暖簾をくぐり、旅籠屋の雰囲気を残す玄関から長い廊下を案内され、梅の間に。どの部屋からもお庭が見えます。 前菜は焼き栗、老茸、焼き茄子寄せ、栗麩田楽、ピーマン酒粕漬け、長芋の塩焼。 まずは素朴な旨味、焼き栗からスタート。 老茸は真っ黒な炭のように見えますが、しっかりとしたキノコの味がします。 ゼリー状の寄せからは焼き茄子がしっかり味わえ、これが美味かった! 栗麩田楽もまた味噌に栗の素朴な香りが負けず漂い美味。 続いて小鉢の栗胡麻豆腐。 お造りの鮪とあじめ胡椒こんにゃく。このこんにゃくも柔らかなゼリーのようなのですがピリリと後から胡椒が効いてくる。お酒が進みます。 ここで三代の女将がお部屋にご挨拶に。当地の歴史をご説明いただきます。 今年初の松茸の土瓶蒸しは、すだちを絞り爽やかに。お吸い物を楽しんだ後は、松茸、銀杏、海老をそのままいただきます。 秋の味覚、日本人に生まれて良かった。 海老のイガグリ揚げは揚げても栗の風味が残り強い一品。栗チップスや大葉の天ぷらと。 鉄鍋の栗を食べて育った栗旨豚の鉄板焼きはポン酢で。柔らかく、甘みが濃い感じがします。 栗のコンソメスープは、お粥のような優しい味付け。栗の素朴さにまた戻ってきましたね。 最後は恵那米の炊きたて栗ごはん。お出汁だけで炊き上げたかのように薄味で、栗味が引き立つようにしっかり計算されており、ついお代わりをお願いしてしまいました。美味かった! 栗のプリン山岡細寒天寄せをデザートにいただき、充分にお腹いっぱい。秋の味覚と栗でお腹いっぱいにする贅沢時間。 大正10年夏 この旅館で若山牧水が詠んだ句です。 屋根の上を さしおほいたる 老松の 小枝に遊ぶ いしたたき鳥 岐阜、東濃の秋は本当に贅沢です。

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愛知県

フランス料理

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久屋大通の北側に古くから残る民家を改装したフレンチレストラン アブサン。 個性的な和室、洋室の個室の中から、予約時にお相手に合わせてお部屋をチョイスする。 お祝いの席、特別感が高まる洋室も良いが、今宵は和室でおこもり感。寒い冬の夜にはこんな選択もあり。 中国の和室といった感があるお部屋に調度品。ゆったりのソファ席でお料理をいただきます。 襖が空き、料理が丁寧に一品ずつ運ばれてきます。 アミューズの繊細な薬味のムースをシャンパンで戴いた後は、冷菜で蟹の身にアボカドを合わせた一品。まるでビーツソースを流したかのようなお皿との相性が抜群。 パンは白パンとフランスパンを、高級新鮮な薫りがふわりと鼻を抜けるオリーブオイルで。お代わりも言って下さいね、と。 熱々のグラタンを頂いて、名物のオニオンスープ。まるでココアのような色味。甘い、濃厚、コクが凄い。赤ワインが頭をよぎるが、次は白身魚、白をボトルで。 本日のお魚は松笠鯛のポアレ。オレンジのソースとさっぱりしたホクホクの白身、パリパリの皮がよく合います。 メインは僕は鴨を選択。甘いベリー系のソースを掛けると、鴨の野性味を殺すではなく、逆に濃密な旨味が引き立つ感じが面白いです。 デザートのケーキ、コーヒーを頂いたところで、お店からもサプライズのプレゼントをご用意頂きました。 カフェ利用や、二軒目利用、おひとりさまディナーをカウンターで頂く利用法もありますが、誰かのお祝いをしたい夜に、是非、お店の方にきちんとお相手の情報を伝えて予約して使われると良いかと思います。 ありがとうございました。

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愛知県

バー

神戸太郎

オトナのタシナミ、いや、タノシミ。少し前から勉強していたウィスキー検定2級、3級。無事にダブル合格致しました。 今夜は一人で静かに喜びを噛み締めようと、前から一度はと思っていた空港線に面した高岳の本格モルトBAR NEATに。 こちらは、ウィスキーのオールドボトルの取り揃えが名古屋有数の素敵なBAR。 名駅にも支店がありますがそちらはジンなども豊富なのに比べて、こちらはウィスキー特化のBARになります。 オークションなどで集められた見たことのないボトルの数々。普段見慣れた銘柄も、全く違うボトルの形をしています。 ウィスキー好きなら並んだボトルを見るだけで、つまみなんか無くてもニヤニヤが止まらない、そんな憧れの場所です。 さて、と。今日は味がちゃんとわかる範囲内で、二杯呑もうと思っています。 飲み口が甘く、柔らかなピートもあるものを選んでいただきたいのですが… オールドボトルには味だけでなく、飲み頃というのがありまして…抜栓後の時間や量によっても味が変わるんですよ。 今日はこの90年代初期のハイランドパークなど如何でしょう?80年代のものもありますよ。ラベルがシルクスクリーンのもの、そちらがそうです。90年代のものを更に濃くした感じでしょうか。お値段はそれほど変わりませんが、今は90年代のものが具合が良いと思います。 まず最初の一杯でハイランドパークの軽やかなイメージが覆ると思いますよ。 では、オススメの90年代初頭のものをいただきます。 ハイランドパークといえばシェリー樽。 今のハイランドパークはただその感じはあるのですが何だか物足りなさを感じ、最近呑んでいなかったモルトです。 しかし、このオールドボトル。全く別物。 のっけから熟した香水を思わせる匂い。 舌で感じる古いバニラ、レーズン、微かに南国フルーツマンゴーのような濃厚な甘さ 。 舌先から喉に掛けて流れる熱いアルコールの痺れすら甘く感じるほどの濃厚な香りが再び。 後から鼻腔を柔らかくしっとり抜けるピートの味わいは、現在のガシガシしたものとは全く違って鼻腔と喉にかすかに残るか否か… 濃厚な色合い、怪しげで甘い味、香り。瞳から感情が読み取れないのに何故か妖艶な感じがするモデリアーニの裸婦像が頭をよぎります。 愉しんでいただけましたか? 現行のものとは麦の品種も違うんですよ。 昔はシングルモルトはほとんどブレンド用で、中から数パーセントだけ、蒸留所の方がいい原種だけをシングルモルトにして販売していたので、そのあたりも味の違いかもしれませんね。 それだけ愉しんで頂けたなら、次はグレンモーレンジのオールドボトルはいかがでしょう?。 あぁ、モーレンジは2級のテストでも出ましたね。世界で四番目に呑まれるシングルモルトですか。とてもヘッドが長いポットスチルの並ぶ蒸留所の写真が示されて、これはどこの蒸留所でしょうって。長い=モーレンジかな?と正解が出せました。だからこれにしようかな?だけど、モーレンジって、色んな樽を使うから本当の意味で個性が僕もよくわからないんですよね… ではこちらの陶器に入ったグレンフィデックの70年代半ばのものはいかがでしょう?陶器のものは当時から贈答用ですので、ちょっと良い原酒が使われているのかな?と推察するのですが。 では、そちらを。 梅干し、ミントのような清涼感があり、美しい水の流れが浮かびます。まずは舌にぴたっと合わさる感じ。これまでの年月以上に若さを感じます。まあ、エイジが8年だからでしょうか? 当時は12年とかは少なかったんですよ。 ピートはか弱く優しく。後からカカオのような甘み。 そうですね、こちらは、、絵画ならルノアールでしょうか。 スコットランドの金髪栗色の瞳をしたレースをつけ23.24歳の良家の子女を正しく色彩華やかに印象的に描いたイメージですね。 締めにハウスボトルのラガブーリンを呑まれますか? いや、今夜はこれでやめておきますね。 なんだか、満ち足りた気分になりました。 誰かが今夜のためにとっておいてくれて、それがこうして嬉しい気分の夜に呑めて本当に幸せな気分です。 ありがとうございました。 ウィスキーが好きで良かった。 まだまだ、奥深い世界を知りたいと思った。 また新たに1級の勉強を始めよう。さらに美味しくウィスキーを愉しむために。 そうだ、そうしよう。

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愛知県

うなぎ

神戸太郎

ある年齢になれば、ここでしか食べられない逸品を持つ名店をきちんと押さえておくことは大事だと思います。 それが老舗であるならば、そこには歴史とロマンという物語が存在し、食味だけでない想い出という美しき味も相手に贈ることができるのではないでしょうか。 名古屋で共に働いてきた仲間を送る夜。明治維新150年の今年、選んだのは創業明治23年、納屋橋のほとりにある味噌すきの宮鍵さん。個室もたくさんありますが、少し賑やかに送り出したくて、三階の大広間を予約。 池上正太郎さんも愛したこの鶏の味噌すき。当時は名古屋コーチンを使っていたようですが、火が入ると硬くなりすぎるという理由から今は三河地鶏が使われています。 と、その前に軽くおつまみを頂きましょう。 霜ふりと肝焼き、皮焼きがいいかな? 新鮮な鶏肉。霜ふりはお刺身のように山葵醤油で、肝焼きはテリテリと甘すぎないタレが酒によく合います。臭みなんて全くありません。皮焼きはカラリと焼き上がっていて、コリコリシュワシュワ、コラーゲンが溶け出します。 さ、いよいよ、味噌すきを。 お店の方が全て目の前で鍋を作ってくれます。ここで注意すべきは味噌ハネが凄いので、大事なネクタイを外すこと。大事なお洋服は着てこないように。白シャツは味の犠牲にして良いものを。 油を引いた金属鍋に鶏がらスープを入れ、大人男性の拳大の秘伝味噌をゆっくり投入。味噌を溶かしながら鶏肉、お野菜諸々を入れていきます。その間、お客は手元の生卵を丁寧に溶いて待ちます。 グツグツと泡が立ち、具材が良い茶色に染まってきたら食べごろ。味噌が少しでも跳ねないように引き摺るように小皿に取り、ごく甘い味噌を纏った鶏肉、野菜を溶き卵の中に潜らせ、程よいお味に整えて、お口にホイッ。ほー、美味い、名古屋食文化の一つの頂点がここにあります。 生卵は足りなくなれば、足すことができますから、安心してダボダボ使いましょう。 ここで幾多の別れと出逢いがあり、夢が語られ、涙が流れてきたんでしょう。 誰もが同じくこの甘い味噌すきを愉しんできたのだ、そこに自分もまた加わるのだと考えると、ロマンがありますよね。 最後はきしめんをイン。 こちらも生卵を潜らせ頂けば、お腹いっぱい! 味噌鍋に代表されるかしわ料理と共に鰻も、両方絶品な宮鍵さんですが、元は味噌すきから始まったといいます。肩肘張らない大事な夜に是非、使って欲しいお店です。 さ、名古屋を忘れず、頑張ってきてね。 またいつか一緒に仕事をしましょう。