おまかせの極意ここにあり @代々木八幡 ザッザッザッ。 涼しげでリズム感のある音が聞こえる。 見上げると、神経を集中して鱧の骨切りをする大将の真剣な顔が見える。 今宵の宴の始まりだ。 匠の所作を見ながら料理や酒の話、そして世間話を。カウンター越しのこの楽しみこそが おまかせ の極意。 しとしとと小雨の降る梅雨の夜。 猛暑の夏を乗り越えるべく、上品にしてパワフルな料理を堪能させていただく。 [先付]賀茂茄子 田楽 自家製の玉味噌と上賀茂の大茄子。 カランカランと賀茂茄子を揚げる音に続いてパタパタとそれを焼くのに炭を仰ぐ音。 風情あるな。 山椒の香り共に夏の贅を頂く。 [前菜]潤菜 キウイ 広島のスーパー潤菜。 [小吸い物]ながれこ 夏かぶ 下田の床節と東北の夏かぶ、吉野の葛で。 ことぶしだけで取った出汁が素晴らしい。 品のあるコクとボリューム感のある旨み。 この時期の蕪は小ぶりで甘くないので素直に出汁が沁みるんですよと大将の解説。 なるほど、その通り。 [向付]鱧焼き霜 梅肉 天草の鱧を自家製の梅肉で。 燃えた骨を丁寧にハサミで切っている。 淡白な味のイメージを持つ鱧だが、香ばしさと共にしっかりとした旨み。 やはり上物は違う。 [椀]葉隠すっぽん 日光の水とすっぽんのみの汁。 ミニマルさを極めた最上等の料理だ。 身体に沁みる出汁。 プリプリの皮、骨まわりの筋肉。味わいと食感の変化も楽しい。 [箸休め]万願寺唐辛子 茗荷とじゃこ山椒。 [焼物]四万十鮎 バジル酢とはじかみで。 まるで泳いでいるような景。 頭から尻尾まで全部食べられる。 ほろ苦さとバジル酢のマッチが斬新だった。 [小鍋]葱鍋 トマト 恐竜のスープ。 グツグツと煮立った状態で到着。 爽やかなトマトの酸味と軽快なネギの苦味。 [食事] ・まずは白米 ぬか漬け、きんぴら、味噌汁 と共に。 ・中川牛のカルビ肉じゃが 家庭料理の王様がこう化けるのか。豪華なる独創性を感じる料理。 ・TKG 黄金の玉子で〆る。 [水菓子]春日居の夢桃香(ゆめとうか) ◇黒龍(福井)純米大吟醸 ◇夏どぶろく(青森) ◇田酒(青森)火入れ 純米吟醸 山田錦 ◇而今(三重)純米大吟醸 白鶴錦2022 ◇十四代(山形)秘伝玉返し 本丸