精魂込めた最上質の料理が何にも勝るクリスマスプレゼント ここぞという時に最高のパフォーマンスを発揮出来る人は多くない。それは火事場の馬鹿力とは全く違うもの。計算をし尽くして、試しに試して本番に臨んだとしてもそれは簡単ではない。そして、それは失敗してもやり直しが効かないものなのだ。 その点で料理をアートで例えるならば絵画よりは音楽や舞踊に近い。 2019のクリスマスにここラディーチェで、最上質のパフォーマンスを体験した。 前菜とデザートのシンクロ、メインは去年の一皿の残像を今年に重ねるトリック。知的でユニークなストーリーには感動。 一つ一つに込められた思いや努力に感謝。 思い出に残るクリスマスディナーになりました。 25日の夜は残席があるようです。 お時間のある方は是非。お勧めです。 ◆冷たい前菜 ・蕪のムース 釧路の雲丹 フワッとしながら濃厚な味わい。 ・自家製リコッタチーズのクレープ巻き サーモンとアボガドがトッピングされた精巧な料理。 ・ゴルゴンゾーラ シュー ワインとよく合う一品。胡桃と甘く煮たリンゴが上手くマッチ。 ◆温かい前菜【絶品】 ・サワラと魚介スープの紙包み 目の前で紙切って開けてくれる。その演出はまるでクリスマスプレゼント。中には香草が乗ったサワラ。そして、透明感のある金色のスープで満たされている 。 このスープは多種の魚な貝、野菜をベースに長い時間を掛けて作られたらしい。この透明感を保つためには相当な神経を使っただろう。あのホテルオークラのダブルコンソメに似た、とても贅沢なものだった。 サワラは煮崩れせず旨味をしっかり残した絶妙の煮加減。血合いの酸味も無くスープに負けないしっかりとしたサワラ自身の味が感じられる。素材自体もかなり上等なものだったのだろう。 ◆パスタ ブロッコリー、スティックセロリ、ヤリイカ、からすみのソースが食欲を誘う。 ◆メイン(魚) ・アーモンド、カシューナッツ、クルミを乗せたスズキのグリル 去年のメインは白甘鯛のムニエルだった。香ばしく褐色になった鱗の香ばしさと、生ピスタチオの緑色のソースが瞼に残っているだけにこの料理を見てハッとした。 スズキの皮の部分に砕いたナッツ類がビッシリと乗せられ、一体となってグリルされている。ソースはえんどう豆のソース。 思わずこの佇まいが去年の記憶と重なる。そんな思い出をくすぐるような仕掛けに驚く。 ナッツの油を伴った褐色の香ばしさはスズキの上品な旨味を引き立て、緑色のソースが円やかに全体をまとめてくれている。 ◆ドルチェ ・柚子のソルベ ・キンカンとキウイを乗せたクレープ ・落花生のクリーム シュー 出てきた瞬間にアッと驚く。他の席からもあちこちから驚きの声が上がる。 前菜と全く同じ出で立ちのドルチェなのだ。構成から色合いまでがそっくり。 細部に至る細工のこだわりからユニークなシェフのメッセージを感じる。 左から順に食べることを勧められる。ならほど、右の落花生のクリームは濃厚な旨味でコーヒーをより楽しく感じさせてくれた。