【実録/伊東で噂のラーメン屋】 家族で夕飯後宿に戻り風呂、土産屋で買った地産のつまで缶ビール部屋飲み。 24:00、妻に「やはりどうしても気になるのでさっき帰りに覗いたラーメン屋に行ってくる」 「今からですか…まあ行きたいなら行きなさいよ、私はもう寝ます」 ホテルの玄関も門限あり閉められているのをフロントで「すみませんラーメンを食べたくて」とお願いして開けてもらう。 そこまでして食いたいか 旅行前に検索してて気になっていたんだ。 80を過ぎたお母さんが作るラーメン。 伊東駅前の飲屋街、スナックが並ぶ奥にある。看板は点いてるが暖簾は出ていない。恐る恐る入ると厨房の中に彼女はいた。 「まだやってますか?」 「大丈夫ですどうぞ、風が出て来たから暖簾しまっちゃってね」 誰もいないカウンターの真ん中に座る。何か一杯飲みたいが、ビール大瓶は今の私には多い。ウーロンハイを頼むと「無いんです、焼酎の水割りは?」「では水割りでお願いします。」 水割りと小皿にお新香が出て来てつまみに飲み始める。 彼女は座ってタバコに火を点ける。しばしの沈黙を破り彼女は聞いてきた 「伊東の人ですか?」 「違います、東京から家族で来て一泊してます。8時頃覗いたら満席でしたがどうしてもラーメン食べたくなって」 「あらそう、夜はうちの娘がやってるのよ。夜中は私がね、お酒と餃子とラーメンだけならまだ作れるからね。どうですか伊東は」「初めて泊まりましたが雰囲気が良いですね、そして東京から近いのに魚がとても美味しくて驚きました」 「そうですか、それは良かった。」 「夏が終わるとね、人が居なくなってね、今夜も外は誰もいなかったでしょ?誰もいない。東京の景気はいいですか?」「良くはないですね、大変です」 「いろいろ便利になってもね、どんどん人が要らなくなると景気悪くなるわよね」 おっしゃる通りだな 焼酎がなくなりかけたのを見計らい彼女はタバコを消すとラーメンを作り始めた 出てきたのはこれ以上ないほどシンプルな正油ラーメン¥600。急に寒くなった夜にぴったりの熱々がきた。 同じような味や量で半額くらいのチェーン店ラーメンもたくさんあるだろう。でも目の前で話しながら私のために作ってくれた彼女のラーメンにこそ私は金を払いたいな。 ていうか美味い。 食べ終わりお勘定をすると彼女は「明日も良い旅にして下さいね」と。 ありがとうございます。 もういい旅になってます。 #ラーメン