2011年のオープン以来、祇園で注目を集めるリストランテ。イタリア料理店とは思えない京町家をリノベーションした店舗は、白木の格子戸がお出迎え。しかし、格子戸を開ければ全面ガラス張りのエントランスで、オープンキッチンとカウンターが目に入ってくる。店名の245とは店の地番から。 オーナーシェフの吉岡正和さんは「CANOVIANO」京都三条、大阪江坂でシェフを務めた人物。閉店してしまった三条のCANOVIANOは、京野菜イタリアンとして人気だったが、こちらでも京野菜を中心に美山産のジビエなどを使って、遊び心満載の料理を生み出している。 美しさと美味しさ、そして独創性を兼ね備えた料理の数々は、一皿一皿メッセージとストーリーがある。この日のラビオリに使われていたのは美山産のアライグマだが、ロードキルではなくてちゃんとハンターが旬の今の時期を狙って仕留めたもの。その背景には畑や寺社を荒らす害獣としてのアライグマの存在がある。 また色の使い方が素晴らしい。黒子のフリットの黒と白のコントラストに鮮やかな花のアクセント、鰻の薫製の冬の色味に映える南天とトウモロコシの赤に銀杏の黄色、シャラン鴨のエディブルフラワーの黄、そしてサラダのカラフルな色合い。逆にトマトのパスタでは敢えてトマトの色味を隠して白く仕上げる。 さらにテクスチャーのコントラストも秀逸。黒子のフリットは竹炭で色をつけたパン粉で白子をフリットしたものだが、色のコントラストと同じく食感のコントラストを演出。サラダは色味もさることながら、素材によっては揚げたり茹でたり生だったりと、色々なテクスチャーを感じる事が出来る。それを一つのボウルに入れて個々の食感のみならず全体でも楽しませる、研ぎ澄まされたセンス。 キビキビとしたキッチンでのシェフの動きに迷いはなく。ソムリエの方との盛り付け、サーブのコンビネーションもスムーズにこなれている。さらにお客さんを邪魔をせず飽きさせず、付かず離れずのフランクなトークバランスもいい料理のエッセンスに。京都に来たら必ず足を運ぶ店がまた出来た。