深山 健太郎

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深山 健太郎

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田神駅

和食

(つづき) ▼甘長ししとう揚げ浸し 「これ、ししとうですかね?」ちょっと、お待ちを。夕暮れの川面を滑る川風に吹き飛ばされぬ様、トートバッグにしまったメニューを取りだす。「甘長ししとう揚げ浸し…としてありますよ。揚げ浸しぃ!?」また、ここでテンションが上がってしまう。初夏の気分全開である。辺りは薄暮に包まれ出した。白ごまが降ってあるのを見て「何これナムル?」という貧弱な発想をした自分を密かに恥つつ、それに箸を伸ばす。あぁ、浸してある。油の甘味とツユの甘味と一体となって、このツユに素麺を漬けて食べたい衝動に駆られる。聞こえてもいないハズの風鈴の音が聞こえてくるような気すらしてくるのだった。(←病気?) ▼再びのあじフライ 口の中が油っけで満たされたので、満を持してタルタルをまとう、あじフライを成仏させる。ああ美味しい。単にあじフライを口にしているだけなのだが、きっと耕平さんの作る、ビーフストロガノフとか、ハヤシライスとか、めちゃめちゃ旨いんだろぉなぁ。と勝手に妄想を広げて遠い眼差しをしつつ、つけ添えのトマトとさつま揚げを頬張る。 ▼アスパラガス(メニュー記載なし)ヤングコーン真蒸 ここで口直しにアスパラガスをポクポクと、イサキのツマの貝割れからのヤングコーンへと渡り歩き、いよいよ主役の鮎に備える。 ▼天然小鮎 唐揚げ 長良川を目の前にして、食事をしていると、つくづくこの川には鮎は不可欠だという思いを強くする。だから、和食のお弁当に、ほんのチョットでも良いから鮎の風味が欲しくなるのが人情というものだ。そこの願いをこうしてキチンと叶えているのは、きっと店主の耕平さんの心意気なのだろう。側聞する所によると、かの川原町泉屋さんの焼き鮎は、五代目当主の泉善七さんのこだわりもあって、長良川の鮎ではなく何を隠そう琵琶湖の天然アユが使われると聞く。「食堂こより」の“宅飲み弁当”。価格のバランスを崩すことなく、「天然アユ」を入れて頂く努力に感謝を奉げつつ、スダチを振った。初夏の柑橘の酸味と小鮎のワタのほろ苦さ。いい。丁度良い。終盤に残しおいて大正解だった。この量で満足できる。 果たしてこれから目の前で繰り広げられる鵜飼い漁、鵜達の追うアユは一体どの位まで成長しているのだろうか。 ▼信長しいたけ照り煮 さぁ辺りはすっかり薄紫色になり、間もなく鵜飼が始まろうとしている。遠くの“まわし場”では、篝に灯す松割り木の“トボ”に火をつけるための焚火がたかれている。振り返る金華山の左肩には大きなオレンジ色の満月。思わず、相方と歓声を上げる。舞台は整った。間もなく「すぎ山」旅館さんの灯りが全部消えますよ。と案内をする。宿泊客が居なくても全室灯りをつけて、鵜飼の篝火が近づくと共に消灯する演出。ここにも長良川温泉を支える杉山さんの心意気を感ぜずにはいられない。既に、お弁当の中は暗くて良くわからないが、最後に一番下にあったお惣菜でフィニィッシュだ。箸をつけると、どうやら本当にそれは黒いもの。口にしてじゅわっと甘い豊かな汁を味わう。シイタケだ!しかも物凄いデカイし、肉厚!何これ!ご飯を食べきってしまった事を少々後悔しつつ、深みのある甘さを惜しみなく繰り出して来る肉厚しいたけを夢中で食べた。凄く気になる。再びトートバッグからメニューを取りだし、スマホの灯りを頼りに見る。「信長しいたけ照り煮!」あー聞いたことがある。信長シイタケ。肉厚で有名だったはずだ。しかし、煮含めてこその、このお味!何て素晴らしいのだろう。岐阜を好きになる理由がここにもあるじゃないか!それにしても、耕平さんの箸運びを計算し尽くしたお弁当には恐れ入る。一番下の伏兵。決して醤油辛くはないこの甘味は箸止めのデーザートと捉えても良いし、もし、他のお惣菜の上に乗っていたなら、下のお惣菜たちに豊かな汁気を吸わせてしまっていただろう。 嗚呼、お腹も心も満ち足りた。何て幸せなんだ。 耕平さん、ご馳走様でした。 諮った様に、篝火がゆらゆらと近付いて来た。さあここからは冷酒に専念しよう。待ちに待った特別な夜のメインイベント。いよいよ始まりだ。

深山 健太郎

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田神駅

和食

◆鵜飼観覧のお伴にお薦めのお弁当 「食堂こより」さんの“宅飲み弁当”¥2,000-(税込み) 6月からwithコロナ体制での通常営業に戻った「食堂こより」。テイクアウトのみの自粛モードから店内飲食ができる様になった為、当然、お弁当の予約ルールも前に戻る。2日前の予約で夜の部のみ。(17:30から)夜の席が立て込む場合は予約を受けられない場合もあるそうだ。幸い、今回は予約を受けていただけた。前回とは入れ物が代わる事をご承知おきくださいとの丁寧なご案内。お店に付くとキチンと用意されたお弁当を前に、店主の杉山耕平さんが念のため聞いてくれる。「もう直ぐ食べられます?」実は、前回、鵜飼観覧用にお弁当を頂いた時は、「今回は暗がりでモグモグやるのではなく、しっかり明るいうちにお弁当を愉しんで、腹ごしらえをしてから鵜飼をじっくり観ます!」とお伝えしていたので、それを覚えて下さっていたようだ。しかし、今回はちょっとシチュエーションが違う。会社の方と川原で待ち合わせ、鵜舟を待ちながら頂くパターン。「いえ、そ~ですね。30分後くらいになるかなぁ」と答えると「おっ!そうですか、じゃ、もうちょっと強力にしときますね。」ともう一度包みを空けて何やら対応をしてくれている。こういう気遣いが実に嬉しい。 行ってきます!とお店を後にし、川原へ到着。キャンピングテーブルやディレクターズチェアをセットした頃に、待ち合わせのお相手が到着。 片口とぐい呑みは関西を拠点に創作活動をされているガラス作家の「やぎもとこ」さんによる「水月」と「ほしあかり」を用意した。これに、それぞれ小坂酒造場の「百春 爽」と「百春 WHITESUMMER」を注ぎ分けて準備完了! 「乾杯!」もそそくさと済ませ、ちょっと膨らんだ処がある、お弁当のアルミホイルをワクワクしながら剥がしていく。 ▼ゴマフグ白子鼈甲餡掛け カッコイイ、「食堂こより」さんのスタンプ入りの入れ物の蓋をあけると。ナルホド丁度冷やしていた処の真下は雲丹!である。その下にあるのは、ゴマ豆腐と、入れ物にひっつかないように配慮された大葉…と思いきや、ゴマ豆腐よりはるかに濃厚でクリーミーなそれは、白子だった。しかも、タラのだと高を括って食べるが、な?何この複雑な濃厚さは?慌ててメニューを見ると、チラ見でゴマ豆腐と誤読したが「ゴマフグ白子べっこう餡掛け」と記してあった。フグの白子ぉ!?もう、ここからいきなりテンションMaxである。大はしゃぎしながら、ご飯にすすむ。 ▼するめいかと新しょうがご飯 サンショウの若葉を散らした「するめいかと新しょうがのご飯」。新ショウガの爽やかな薫りとスルメイカの微かな香り。敷いたホウ葉が食味をそそる。ご飯の色づきはイカメシのそれ程でもなく、味も主張してくる訳でなく、他のおかずの引き立て役に徹している。素晴らしい!フツーの美味しい晩御飯のように箸が進んでしまうのを抑えられない。「落ち着け!落ち着け!」必死に自分に言い聞かせる。相方が言う。「そうそう!これお酒の当てだからね!」そう言いながら彼は大人の余裕を見せ、おもむろに枝豆に手を伸ばす。 ▼枝豆(メニュー記載なし) 笑っている。人はあまりに美味しいものを食べると笑い出すのだ。「何だよコレ!枝豆からしてもう違うよ!別モンだよ!」。普段我々が口にする“ビールに枝豆”の枝豆くん。決して貶めるつもりはないのだが、冷凍食品は所詮、冷凍食品の域を越えられない事を改めて、舌に知らされる。メニューに載らない控え選手がこのレベルなのである。「食堂こより」恐るべし! ▼あじフライ 辺りは黄昏時になってきた。思わず、反射的に白い物のかかった揚げ物をひとくち、かぶりつく。ん!タルタルソース!ちょ!待って、まだ待って!耕平さんのトラップを愉しむのはもう少し後にしたい。まだ、口の中は和食モードで居たいのだ。開けかけた洋食屋さんのドアを慌てて閉めメインディッシュに目を移す。 ▼いさき塩こうじ焼き 左隅で堂々と松皮の焼き目で先ほどから魅了して来るのが、メインディッシュの一角を占める「いさき塩こうじ焼き」である。どれどれと箸先でほじりながら口にする。う~ん。タルタルめ!美味しすぎて良く判らないじゃないか。ならば、と冷酒「百春 爽」で洗い流し、もう一度。あぁ、美味しい。丁度良い塩加減。だって、6月のイサキが美味しく無いワケが無い。今度は飲み比べの「百春 whitesummer」をやってみる。ほぉ!何かフルーティ。ちょっと梅酒のような香りすらする。しかし、塩麹と冷酒というのは、なぜこうも相性が良いのか?交互にノンストップモードの無限連鎖に突入しかけた時、会い方が話しかける。(つづく)

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田神駅

和食

◆こより食堂「お弁当」¥2,000(税込) 鵜飼観覧船に乗る人、岸辺から観覧する人、そのどちらにもお薦めしたいのが、こより食堂さんの「お弁当」。とっても美味しいのです。どの位、美味しいかと言うと、東家の鵜舟が出るところを望遠レンズを構えて左岸の「すぎ山」さんの真正面で待ちかまえていたのに、お弁当のあまりの美味しさに気を取られて、気が付いたら鵜舟は跡かたもなかった位、夢中にさせる美味しさでした。 長良川の流れに見立てた空豆ご飯。サワガニが潜む石は丁度良い塩加減の空豆。ちりばめた山椒の若葉が、岸辺の岐阜護国神社の木立のみずみずしさを連想させる良いアクセント、サラダ菜は金華山を彩るツブラジイの若葉です。そして、ご覧ください。煎り玉子には魚卵が入っているではありませんか。やがて成長し回帰してくる鮎を連想させますよね。勿論、今の時期は未だこの大きさの稚鮎も、姫竹と共に天ぷらで我々の舌を楽しませてくれます。やさしい衣に包まれつつほろ苦いワタを口にした時、私は塩焼きの時期が来るのを恋い焦がれます。そして、節間の長い姫竹に自然の営みの勢いはコロナの影響を受けていないことを改めて感じ勇気づけられるのです。勿論、最初に口にした近海天然ツバス(ブリの幼魚)のお造りに、海の中もそうであることをありありと感じました。 とにかく、ここのご主人は仕事が丁寧で美味しい。「美味しいのは当たり前でその先にあるものを提供したい…」という志の高い方です。エンドウ豆がバラバラにはずれぬようにひとつづつしっかり鞘についた糸が切れぬようにしている繊細さは見事としか言いようがありません。そしてメダイかタラかと思うほど肉厚な幽庵焼きはなんと鮃だそうです。身の大きさが伺いしれますね。鮃の旬は2月などと釣雑誌には昔、良く書かれていましたが、最近はそうでもないことをwebで知りました。 そして、飛騨牛の煮物を口にした瞬間、懐石料理の和室から、突然、デミグラスソースの香りが漂う美味しい洋食屋さんのドアを開けた気分になるのです。凄いギャップ!まるでピエロのズボンを連想させるような黄色と緑色のカラフルなズッキーニの付け合わせと共に、ご主人のちょっとしたイタズラの様に思えて、思わずふふふふとほほ笑んでしまうのでした。 梅肉和えのわらびで、再び口の中を和風に戻し、サワガニを…。あっ!美味しい!勝手に苦みを連想して口の中に入れたので、その甘焦がしとでも言うような軽やかな風味に、風船づくりをした飴細工のような印象すら持ちました。じゅぶじゅぶとした芳醇さに包まれた飛騨ホウレンソウと帆立の春巻きは、上品な出汁のお味を感じる一品。これだけジューシーなのに春巻きの皮がダレていない事に驚きます。実は、ここまで食べながら、ちょくちょく目線を送って正体を確かめようとしているおかずが…。目にも鮮やかな深紫色のそれは、断面がイチジクのようでもあり、甘かったらデザートにしたいし…と思いつつ迷って一番最後に手を付けました。ん!?里芋?いや、菊芋?いや、何?…答えはムラサキジャガイモ。初めて知った食材でした! …という訳で懐石料理を頂いた様な満足が味わえる、岐阜市川原町の「食堂こより」さんのお弁当。競合する川原町泉屋さんの「鮎弁当」より430円お安い価格設定は、「ウチは鮎の塩焼きを入れてませんが、その分他のお料理をお楽しみいただけます!」というご主人の戦略が伺い知れ思わず唸ります。お薦めです! https://jinseibalanceball.com/lunch-koyori/ 追伸) 今、“幽庵焼き”や“飛騨牛の煮物”は金華山のチャート石を表していることに気付きました!多分そう。改めてスゲェ! #お弁当