上信越道、東部湯の丸インター近くにあるコメリは、近隣系列店の中でも規模が大きいので沓掛(輕井澤)から遥々出かける事があります。コメリの2つのセンターのあいだの道に出て北に登つていくと、蕎麦屋の黄色い看板が目について、その看板の黄色は如何なものかと思ひつゝ、しかしそれがなんとも浮き世離れした商売氣の感じられない風情だつたので、その店まで行って見る事にしました。営業日が金、土、日曜日だと謂ふ事で、その日は入れなかつたのですが、営業日に改めて訪問しました。 車は4台は停める場所があります。お店は奥樣の実家の一部を店舗に改装したのださうですが、今流行りの古民家の佇まいといつた事は毛頭意識に無く、什器もご主人の知り合いの寿司屋から譲り受けた重箱など、人の親切や好意、繋がりを大事にしている方と思ひました。 扨て、蕎麦ですが、初めは普通に美味しいと思つてゐました。お聞きすると小諸の大西製粉の蕎麦粉とご自身の畑で採れた蕎麦のブレンドださうです。これまでわたくしはそば粉が良ければ美味い蕎麦ができると思つてゐたけど、腕が良ければどんな蕎麦も美味しく打てると云ふ事に漸く氣がつきました。さう云ふと大西製粉の粉が惡いと言つてゐるかのやうに誤解されるか知れませんが、さうでは無くわたくしも素人蕎麦を大西製粉のそば粉で打つて來たのにいまいち美味しくないのは腕が惡いのだといふことを全く判つてゐなかつたと云ふ事を漸く悟つたと云ふ意味です。閑話休題 ご主人一人の労力を考へて驚くのは、普通のせいろの他、更科そばに季節の産物を捏ねた変わりそばもある事です。6月は胡麻でした。月毎にかはり、紫蘇やバジルも去年のメニューにありました。この「かはり蕎麦」は、塩で食べても香りが立つてとても美味しいです。 この2種類をあはせて頂くことが出来るメニュもあります。 ご主人は鮎釣もお好きで漁の解禁日(2018年は6月16日)の土曜日はお休みになります。でも翌日日曜日は営業するところが律儀だなあと感心しました。その日曜日に來合せたお客さんは運が良ければ今年初物の天然鮎にありつけた事でせう。 普段は千曲川の支流を漁場とし、たまに出身地大阪の南から和歌山の有田川その他まで遠征するさうです。その時の釣果は天然鮎としてお店で一匹300圓で供されます。天然鮎ですから小振りですが、腑の臭みのない苦味が味わえます。これまで食べた鮎で一番美味しいと家人も言つてゐます。あと押し寿司もありますがまだ頂く機会がありません。 お人柄の良さに蕎麦打ね師匠になつて頂きたいとお願いし、去年から今年にかけて10回以上も教わつてゐます。これは弟子が不肖につき、いつかな上達の目処が立ちません。蕎麦打ち教室は看板にも書かれてゐて、頼めば受けて貰えるやうです。弟弟子に先を越されるのが目に浮かび余り紹介したくなかつたですが。メニュの細かいご紹介は後日とさせてください。RETTYを知るまでまさか紹介するつもりも無かつたものですから。
この店のシェフが師事した、エルミタージュ田村直伝の桃のスープをいただけると聴いて、それを目当てにまた、敬愛する近隣のご夫妻と颱風の夜に訪問しました。 これを頂くには6000円のコースを選択しなくてはなりませんが、桃の料理には桃をそのまま頂く方が美味しいと謂ふ声もなんのその。桃の美味しさが新たな味覚を創造できるのではと云ふ期待で無条件に惹かれてしまいます。味はつて見て勿論おいしかつたのですがどう表現すべきか!スープを飲んだ後、冷凍された桃の身を皮だけ残してこそげ落としながら頂くことに夢中になつてしまひ、スープそのものが美味しかつたかどうか?後から考へると、わたくしのような凡人には期待したほどには満足できなかつたと白状します。ですが毎年桃の季節に一度は賞味したいと思ふ一皿です。 地元産の新鮮な野菜のサラダ、子持ち鱧を原木椎茸を臺にして、茄子を挟んでオーブンで焼いた一皿、そして甘鯛の鱗の美味しさを堪能できる塩焼き、牛ランプのステーキ、多彩なデザートを堪能できるのですから、親しい知人と会食するには輕井澤からの距離(片道30分くらい)を差し引いても、輕井澤のお店より遙かに満足することが出来ると思ひます。