越智寛太

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越智寛太

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2020

横浜駅

ラーメン

一蘭に来た。 いつの様に私は整然とした接客と回転率を期待し、椅子に腰を掛ける。 コートを脱ごうと立ち上がると、ふと私の手がポケットにあるAirPodsproにコツンと触れる。 私は隣にいた女子校生に少し心を躍らせていたが、少々うるさく思ったのそのままAirPodsproを装着する。 ラーメンが来た。豚骨だ。いつもの様な甘くてずっしりとした香りが私の鼻を撫でる。 さぁ、食べよう。 私はその時ラーメンに全集中していた。 かつて無い程に。 私は気がついた。 一蘭の席は目の前が簾によって閉ざされ、視覚が制限されている。 一蘭の席は、席で分断されており、隣の客を気にしなくて良い。 一蘭の席は、余計なコミュニケーションを生じない様に、店員との会話は最小限にされている。 私はそれに加えて、Airpodsproを装着していた。 つまり、聴覚までも制限されている。 私は極めてラーメンに集中してきたのだ。 一口目は、一蘭ならではの豚骨スープが私の舌に衝撃を与える。 チャーシューや、ネギを絡めて麺を啜ると、どうしたと声を出すくらいに次々に食材の味が脳に旋律する。 食べ進めていく毎に、私の舌は限界を超えて微妙な温度やスープの濃度による味の変化を気付き出す。 かつてこれ程ラーメンを気にしたことがあっただろうか。 Airpodsproを外し、私は一蘭の外に出る。 ふと後ろを振り返ると、私は別世界にいた様だ。