谷村哲夫

久しぶりに山本さんの料理を頂きに行った。セイコ蟹、松葉ガニ、天然虎河豚などの食材も彼の手にかかれば魔法のように香りが立ち上る。やはり彼は日本を代表するシェフだ。

6時の予約で店に入ると主人が毛ガニを捌き、蟹味噌とほぐし身を和えて前菜を作っていた。濃厚な味でカニ酢も不要。次に星カレイの刺身だ。塩銀杏の和え物に続いて鰹煮浸しが美味い。その後は岩手の松茸が惜しみもなく使われた土瓶蒸しには夏の名残りの鱧が入っている。夏野菜のゼリー寄せと穴子の天ぷらが続く。その間に〆のご飯が土鍋で炊き上がり、自家製の惣菜でいただく。腹一杯で時計を見たら9時半だ。美味い料理と友人との会話で「あっ」というまの時間を過ごした。

今夜はアメリカ人の友達と麻布でディナーだ。次の世代を担うシェフタケダさんのレストランだ。 前菜は大分のシカメ牡蠣で小粒ながらこれで大人貝。とうもろこしのエスプーマ下には毛ガニ。稚鮎の前菜。鰹のタタキ、酒盗をベースにした繊細なソース。パリッと焼いた三河の鰻を日本のハーブで餡掛けにしたもの。鱧のカダイフ風で下のソースはパッションフルーツで、沢蟹もそのままいただけます。メインは夏の蝦夷鹿。デザートは 桃のコンポートなどなど。日本のワインを一皿毎にペアリングしてくれる。 1万円のコース(ペアリングの酒は除く)とは思えない充実だ。そのうちに予約が難しいレストランになってほしい店だ。

夏だから敢えておでんを食べる。友達2人とゆるりと白ワインを飲みながら会話を楽しむ。鴨と水茄子を同時にいただくと口の中ででは何とも言えぬ味わいを出す。太刀魚も季節を感じさせる。今年初めての松茸をいただくが、これは韓国産という事らしい。香りはなかったよ。出汁の旨味を堪能出来る店だ。ワインもリーズナブルだ。