【綺羅星の箱庭】 初訪 29.7 日本のレストラン界で燦然とした光を放つ、青山,外苑前のフロリレージュ。 無機質な外観の建物の地下1Fに佇む当店。入り口を開けると照明を抑えたシックな雰囲気が漂う。 エントランスから通路を抜けて内扉を開けたそこは、綺羅星の箱庭。フルカウンターのオープンキッチン。 まさに劇場である。 本日のコース ◆ 合わせてペアリングをオーダー ◎ ◆投影、とうきび とうもろこしをくり抜き、クリームと混ぜ合わせ焼き上げる。とうきびの粒一つ一つの甘味。どこか懐かしい家庭のシチューを想起する感覚と、遡る夏の日の実り豊かな畑。原体験への回帰と、未知なる驚きとの遭遇が交錯。 ◆枝豆 ズッキーニ 初夏の豊穣なる恵み、枝豆とズッキーニ。フロマージュブラン,長野県産チーズと共に。枝豆の、青々としながらエグ味ない爽やかな味わいと、ズッキーニの軽快さが、フロマージュブランの酸味とチーズのコクに包まれた一品。やはり原体験は、夏の日の畑まで遡る。 ◆冬瓜 鮑 冬瓜はパスタに隠れる。薄くスライスした鮑と合わせ、赤ワインビネガーで一つに。 この、冬瓜が優しくも堂々した存在感を放つ。鮑が一皿すべてを支配しそうなものだが、冬瓜に鮑が寄り添っている、そんな感覚を覚えた。また、冬瓜と鮑,赤ワインビネガーの構成に脱帽。 原体験はやはり、少年時代のあの夏の日。 ◆旨味、椎茸 椎茸が登場。原木からの純粋な素材そのままより、味わいの奥行きと醸す風味を幾重にも増して。 ◆サスティナビリティー、牛 明確なテーマ。循環,持続可能性を考える一皿。高級店では定番の未経産牛ではなく、経産牛を用いた一品。味が劣るというがどうか、、。狭量な味覚では判断のしようがないが、この一品の味わい深さは理解できる。 コンソメとジャガイモのピューレが、牛肉に奥深さとまろやかさを加える。 しゃぶしゃぶがモチーフか。 ◆ヘテロ、牡蠣 牡蠣のフリットとオカヒジキ。敢えて海と山の恵みを引き合わせる。牡蠣エキス入りのアイスと、液体窒素で固めたレモンのメレンゲを添えて。レモンの強烈な酸味と牡蠣のコクが調和。牡蠣のポタージュも共に。モチーフは牡蠣フライか、、家庭への回帰と未知なる味覚との遭遇。 ◆カツオ 赤紫蘇 炙ったカツオと赤紫蘇のソース。敢えて山と海,敢えて同色。下に茄子が隠れている。モチーフはカツオのタタキか。 赤紫蘇の香りは、少年時代の夏休み、暮れなずむ夕刻まで回帰する。 ◆分かち合う 沖縄島豚,アグーを焼き上げたメイン。メインは、この日居合わせたすべての観客と分かち合う。 断面の、薄く透き通った白桃色の美麗な様。外見からは、肉質を感じさせない、清澄感のみが凛と伝わる。 荏胡麻のソースと赤ワインのソースで演出。島豚の上には、九条ネギとおコゲを被せる。 口にすると、鶏のモモと胸を同時に味わっているような、はじめての感覚。味覚の未体験。精勤な働きアリたちの劇場でなければ、美味いと叫んでいる。 ◆レモンのソルベ ハーヴのゼリーとともに。圧倒のレモン。丸かじるよりもレモンだ。突き刺さる程のレモンなのに、最後余韻は穏やかさが漂う妙。 ◆再生、ミルク ブランマンジェ,ミルクの濃厚さが口に拡がる。不思議と牛乳特有のクセは消え爽やかさが包む。南部鉄器で熱し、上から胡麻油を。 ◆贈り物、アマゾンカカオ シェフの知人がアマゾンで栽培ないし採取したカカオ。改めておもうが、食材に国境はない。 ◆小菓子 さくらんぼ ◎ランスロピエンヌ クラマン コートドブラン ◎マルコ オーストリア ◎日本酒 伊達7 ◎サントーバン ブルゴーニュ ◎テッタ マスカットベリーA ◎サンプレフェール ローヌ ◎マリークルタン シャンパーニュ ブランドノワール ◎シャトークリネ ポムロール ボルドー ◎テレスクォーツ ロワール ◎純米吟醸 福祝 ◎ラム ジーンマリーマーティン 食と空間に一貫して流れる哲学と娯楽性。目にし口にしたものからは、シェフの、食への信念と豊穣なる食材への賛美が惜しみなく溢れる。 綺羅星の箱庭が魅せる芸術は、原体験への回帰と飛翔する再構築。 ここには、ここからと、これからがある。 フロリレージュである。 #モダンフレンチ #外苑前 #ミシュラン☆ #フルオープンのカウンターキッチン