Takahiro.M

Takahiro.MさんのMy best 2017

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神奈川県

懐石料理

Takahiro.M

関内が好きです。 そこに在る澤はもっと好きです。 横浜は華やかだけど濁った街のはずでした。 今から20数年前、札幌から越して来た頃の横浜には、まだ生活臭と機械油の匂いが残っていました。 元町や山手の瀟洒な西洋造りの住宅が並ぶその眼下には、美しい豪華客船だけでなく汚れた貨物船も浮かんでいました。 アメリカの将校の貴婦人や青い眼の子供達が闊歩する重厚な石造りのエキゾチックな街並みの裏通りには国籍不明の娼婦が立って居て、港湾労働者が朝から呑んでいました。 今では普通の街となり、みなとみらいや横浜駅界隈は今日も普通に賑わっていますが、以前の横浜は陰影に富んだ街でした。 そんな昔のヨコハマの光と影の面影を残す馬車道に在る、日本料理 澤。 2人だけでやっている小さな懐石料理店ですが、私は「外で食べ物を頂く」意味の多くをこちらから教わりました。 愉しい席には幸せを、自惚れた日には戒めを、疲れた夜には癒しを、嬉しいときには興奮を、何度与えて頂いたことでしょう。 見た目も華やかで美しい料理達は、お客のことだけを考えた丁寧で洗練された技で、四季の旬を味あわせてくれます。 気さくで、清潔で、質素で、謙虚で、自分達の腕に奢らないから、今日も進化を続けています。 何かというと理由を付けては此方のご馳走を頂いてきました。 別れた先妻も私も世界一好きな店は澤です。 自他共に認める美魔女だった先妻も少しだけ年齢相応になりつつあります。 魚介は海や河から獲ったばかり、野菜や山菜は土から掘ったばかり、果実は木からもいだばかり、そんな素材の味を愚直なまでに丁寧な料理で極限まで引き出します。 生けるものの命を食べて自分が生かされていることをつくづくと実感させてくれます。 フリージャズのライブの様にドラマチックな展開のご馳走を頂きながら、月山、石槌、アイスブレイカーをグイグイ呑みながら、話は尽きません。 ただの勘違い野郎だった私に連れ添ってくれた歳上の女性。 生粋の横浜人で大人の流儀を教えてくれました。 SARSが蔓延する国にも付いてきてくれました。 私の両親や友人を大事にしてくれました。 実の息子みたいに接してくれた義父さん、義母さんのお見舞いにすら行かず、お墓で再会とは最低です…。 本当は根暗な私は、どこに行っても姐御になる貴女の太陽みたいな明るさが羨ましく嫉妬していました。 深々とお辞儀をして送られながら店を出て、初夏の夜風に吹かれながら2人で歩く関内の景色は昔と同じです。 酔いに任せて彼女の横顔に少し顔を近づけて唇を寄せてみました。 「汚いっ!」 逃げられてしまいました。 「顔つきが汚い」 「…。」 隠し切れない下心が顔に出てしまっていた様です。 来年こそは鹿児島に彼女を招待しよう。 下心無しで…。 #名店の中の名店 #上質であるということの意味 #2017年間Best振り返り投稿く

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鹿児島県

ビストロ

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今日はフランス郷土料理の名店、ビストロ・サンバル最期の日。 「鹿児島の人達の日常にフレンチを」というシェフの方針通りの料理に感銘を受け、私自身の日常に組み入れていました。 横浜から鹿児島に越して1年半が過ぎましたが、もっとも通った店は此方です。 羽田からの最終便で鹿児島に戻る今日、最期の日に看取ることは出来ませんでした。 無骨でパンチの効いた皿、華やかでエレガントな皿、優しくシンプルな皿、複雑で鮮やかな皿、五臓六腑に沁み渡るナチュラルな皿。 こざかしい飾り付けが無くとも、安い器を使っていようとも、旬の鹿児島の素材とヨーロッパから空輸する素材をふんだんに使った此方のフランス料理には多面体の美しさが有りました。 路傍に転がる石の中にも宝石は隠れています。 だけど原石はただの石。削られて、傷を付けられて、それから光を当てられて、やっとキラキラと輝きます。 この度の閉店で身を削られて、傷付いたことで、シェフは輝ける条件を揃えたはず。 光を当てるのは食べる側の所業です。 今日までサンバルが在った道。 明日からはサンバルはもう在りません。 ちゃんと名前は有るのでしょうが、私はあの道をサンバル通りと呼んでいました。 正しい名前を覚える気はありません。 私にとってあの道はいつまでも「サンバル通り」です。 #さようならサンバル #閉店しても記憶の中でExellent(エクセラン)です! #クリスマスキャンペーン

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今秋に全国を駆け巡った"5年に一度の和牛グランプリで鹿児島黒牛が優勝!"のニュース。 後付けではなくて、私には当然の結果です。 なぜ当然かと言うと、今年の2月にホンモノの鹿児島黒牛の味を此方で知ってしまったからです。 以下、2月のレビューのリバイバルです。 参りました。うまく説明が出来ません…。 牛肉ってこんなに美味しかったのか、と今更ながら思わされる至極の個室焼肉店です。 東京なら1人あたり諭吉3枚は覚悟するところがその1/4の価格です。鹿児島黒牛の真の実力を思い知らされました。 頂いたメニューは、上タン塩、特選サガリステーキ、上ハラミ、シンシン、イチボステーキ、ツラミ、上ミノ、鶏セセリ、コラーゲンスープ、冷麺、サラダ。 肉質のそこはかとない高さ、丁寧な包丁の入れ方、シンプルだからこそ考え抜かれたタレやスパイス、あっさりしているのにこってりとしたスープ、シャキシャキの新鮮野菜にビネガーが効いた自然な甘さのドレッシングまで。非の打ち所がないとはこのことです。 あー幸せ…。 古民家から引き取った建具を使った梁が剥き出しの設えも重厚な雰囲気満点です。 此方に来る5分前まで優雅にバナナパウンドケーキとカプチーノを頂いており、全く空腹を感じていなかったにも関わらず、凄い量を平らげました。 失礼ながら、叙◯◯なんか目じゃ有りません。 もともと、生来の魚好きですが鹿児島に住むようになって肉派に変わりつつ有ります。 此方では定食チックなランチメニューも有りますが、やはりそれでは本当の鹿児島黒牛の美味しさは分からないはずです。 とにかく肉。肉after肉。 色々な部位の肉達の官能的な味わいを一度でも知ってしまうと、もう虜です。 #クリスマスキャンペーン #日本一のホンモノの鹿児島黒牛

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神奈川県

ビストロ

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日本のフレンチがどれほどレベルが高くて美味しいかを教えてくれた名店です。 5年前に閉店してしまい、心残りのまま横浜を離れました。 rettyを見て昨年に復活したことを知りました。 再開1周年。おめでとうございます。 再オープンしてから初めての訪問です。 シェフはすっかり痩せて別人みたいです。 奥様は変わらない。 ウッディだった設えは民家に変わっているけれど、隠れ家みたいでこれも良い。 満席なのに次々とお客が来店。 入り口にはお客を断る貼紙が貼られています。 1度閉じて良かったのかも知れません。 初っ端の皿は生の鳥貝と厚岸草を味付けを全くせずにカクテルグラスに置いただけの一品。手抜きでは有りません。素潜りして海から獲ったままの味。参りました…。 後は馴染みの味が続きます。 フォアグラとご飯を絶品ソースでまとめ、ビシソワーズには新玉ねぎのアイスクリームを落として自然な甘さを加え、舌平目と合わせる旬の野菜は旨さが逃げない様に茹でたり揚げたり。 美しいテリーヌは海の幸と夏野菜の数々をゼリーで寄せてポロ葱で巻いて。 ただ焼いただけの人参、ズッキーニ、茄子まで美味しくて、まるでご馳走です。 素材の味を引き出し、シンプルかつ優しいのにしっかりとパンチも効いている。 それなのに居酒屋みたいに使える雰囲気と価格。絶賛の言葉しか思いあたりません。 恥ずかしながら私のRettyの拙稿を見て頂いていたらしく、鹿児島のビストロサンバルのことを気にかけていました。 写真で判断されたのか「非常に仕事の出来るシェフのビストロ」と思われていた様です。 「全然大丈夫、閉めたって、いくらでも復活できます!」 長い閉店後、実際に復活されたシェフのエールには重みが有ります。 帰り際、雨降る中をご夫婦揃って深々と頭を下げて見送って頂きました。 住んできた街ごとにお気に入りのビストロが有る幸せ。 鹿児島から飛んで行って本当に良かった。 #下町の極上フレンチ

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逢いたいという手紙を投函してから1ヶ月近くが経過してしまいました。 小学生の頃に北海道から宮崎に転校してしまった初恋の女性からの返事はまだ来ません…。 しかし、東京からの待ち人はちゃんと来ました。(男性…) 元々鹿児島Retty友の美人レビュアーさんと久し振りに食事することを決めていた日取りにまさかの来鹿が決定。 それならと、3人で鹿児島が誇る自然派中華の名店でディナーです。 ・上海式蟹肉フカヒレスウプ ・Aoki式よだれ鶏 ・Aoki式焼き餃子 ・大海老と季節野菜の豆豉炒め(裏メニュー) ・Aoki式牛ネックとトマトの中華シチュー ・Aoki式五目あんかけ焼きそば ・Aoki式杏仁豆腐 ・凍頂烏龍茶 今から15年前、悪いイメージしか持てず中国で暮らすことが嫌だったあの頃。 言葉も通じない都市開発ラッシュの混沌に居る無機質な街で暮らすこと。それまで欧米、中南米、ASEAN諸国で仕事をしてきた当時の私にとってわがままな隣国の暮らしは耐え難い物でした。 しかし上海の「原創私房菜」という一軒のお店で頂いたスウプの、鮮烈でありながら滋味深い、あのときの悦びにも似た身体中に響く快感に昇天してから思いは一変。 その店の近所のフランス租界区に引っ越し、"中国を好きになる努力"を始めました。 嫌悪感を抱いていた相手と、付き合わざるを得ない状況になり、しかし付き合ってから魅力に気づき、だんだん本気で好きになる。 いつの間にか惚れているのは自分の方だった。 そんな中国に対する私の思いをデジャヴの様に思い出させてくれる此方のスウプ。 ひと口目を頂き、余りの美味さに叫んでしまいました。ぐぬぅ…美味いっ! 舌に触れたときの官能、鼻に抜ける芳香、内臓に染み渡る滋味、身体中を支配する恍惚…。 海や山や畑で獲れたものだけで身体を直す本来の中国料理の本懐である食養生を鹿児島で感じさせてくれる若き天才…。 今夜の来賓Asanoさんとは2度目の邂逅。 誰からもいいねなど貰えなかった頃から的確で、時にヒューモラスなコメントを送ってくれていた博識で人たらしの紳士です。 急遽決まった鹿児島出張の折、東京から駆けつけて下さいました。 私と一緒にAsanoさんを迎えるHaraguchiさんは、鹿児島のお茶文化を支える立派なご主人と未来の鹿児島を描いて生きている美人さんです。 3年ものの紹興酒の瓶はいつしか空に、2本目は一気に20年ものに格上げ。 会話が弾みすぎて、いつの間にか私のレビューに対する非難が議題に。 「男性のナニのことを書くなんて食のレビューに相応しくありません!ナニはいけません!ナニはダメ絶対、とにかくナニは…」 上品で綺麗な女性の可愛いお口から連発される「男のナニ」。 言い返せず閉口です。 さて、ただ食物を摂取することと、"食事"は違います。 「本当はどうでもいいことを、ああでもない、こうでもないと、こだわって話す下らなさが最高に楽しいのです」 ミナミの帝王と皆さんに呼ばれているトップユーザーの方から以前に頂いたコメント。 この度はまさにそんな夜になりました。 150年前に19人のサムライがチョンマゲ姿のままイギリスに渡った鹿児島。更に遡ること1,200年前に鑑真が中国からやってきた鹿児島。 遠い日々に外国との交易が盛んだった鹿児島で洋食や中華のレベルが高いのは当然かも知れません。 Sabro Aokiの中華料理は基本的にマイルドですが、甘い、辛い、塩っぱい、酸っぱい、苦いのセンスが際立っており、どの皿にもしっかりインパクトが有ります。 絶品スウプを始め、完全無添加、無化調の料理の数々は特色がありながらも正統派の中華料理から一切ブレることはありません。 愉快な時間はアッと言う間に過ぎていきます。 AsanoさんもHaraguchiさんもお話が尽きません。 年に一度の祭りを控え、花で化粧を施した路面電車が走る鹿児島で、東京の方をお迎えすることに喜びを感じながら夜は更けていきます。 #横浜のマンション売ってしまおうかなキャンペーン #おはら祭りキャンペーン #ハロウィンキャンペーン

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鹿児島県

喫茶店

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「夏の思ひ出」という艶やかなお尻ケーキがRettyを席巻した今夏の東京のスイーツシーン。 地方にいる私も「夏の思ひ出」というに相応しい素晴らしいお店に出会いました。 世界のコーヒー女王Kayaさんをして、「あと1泊できたら翌日も絶対リピートしていた」「20年〜30年経って人生が枯れてきた頃にもう一度ひとりでカウンターに座りたい」と言わしめた名店。 鹿児島最大の繁華街、天文館に行く度に横目で見ては緊張して入らなかった店。 その理由はただ一つ。 私はコーヒー音痴なのです。 自宅ではもっぱらお茶派です。 中国福建省の安渓産の鉄観音茶、緑のきらめきという名の原口製茶の鹿児島産緑茶、AHMADのセイロン茶。 コーヒーで分かるのはエスプレッソの苦旨さだけ。 横浜で呑んでいたときは〆にタクシーで元町のピッツェリアQuo Vadisに行ってピッツァも頼まずにエスプレッソとドルチェだけ頼んだりしていました。 鹿児島に来て驚いたことの一つに珈琲が美味しいことがあります。 至るところに自家焙煎屋があり、それで暮らしていけるだけの収入が得られる。 チェーン店があまりなく、個人経営のカフェが乱立しており、どこも繁盛している。 どこの珈琲も深煎りで酸味が無くまろやかでクリアな味を提供している。 珈琲よりお茶派な理由は、お茶にはしみじみ美味い感動の一杯の経験があれど、珈琲にはそんな経験がないことと、そして独特のすえた様な酸味が苦手だからです。 古くなった珈琲豆は酸化して酸味が増します。それを防ぐためには深煎りしか有りません。 鉄鋼製品には予めスケールとか黒皮と言われる真っ黒な製品があります。 酸化しきっているので、それ以上に酸化せず赤錆がでない。中華鍋やすき焼き鍋やジンギスカン鍋がそうです。 深煎り焙煎とはそれと同じ原理なのではないかと思っております。(自分調べ) さて、此方はバブル期の'86年創業、30年余の歴史がある喫茶店。 まず品が良い。客層が良い。雰囲気が良い。 店に入るなり何とも芳しい自家焙煎の豆の香りが鼻をつきます。 席に着きオーダーしたのはスタンダードなブレンドコーヒーと、アーモンドクリームとモカクリームとナッツが3層になったケーキ、「プラリネ」 マスターの動きが独特です。 丁寧に布のフィルターで淹れるネルドリップ。最後のひと淹れの際にはピクンと首が動きます。 サーヴされたのは美しいリチャードジノリのカップと皿に配置された珈琲とケーキ。 飲み口の大きいカップに注がれたダークブラウンの液体からは上質な珈琲の香りが確かにします。 カップに口をつけて一口啜ると…。 こ、これは!…美味い! 明らかに他のと違います。 フレッシュでクリアでフルーティな酸味と程よい苦味。 珈琲なのに身体が浄化されていく様な味わい。 温度も丁度良くガブガブイケる。 プラリネもまた素晴らしい。 アーモンドクリームが大好きですが、南イタリアの甘ったるいマジパンに閉口した私には丁度良い甘さ。 ペアリングの妙とはこのこと…。 子供の頃、北海道のWorking classだった家庭で育った私には、シューベルトのピアノソナタと珈琲とトーストの焼ける香りで家中が満たされる朝は、日曜日が働く大人にとって特別な休日と感じさせるに十分な説得力が有りました。 平日の朝は都はるみと塩鮭と納豆と家庭菜園で採れた不恰好な野菜なのに。 子供の頃に知った香りと味のギャップ。 それがトーストと珈琲でした。 トーストが焼ける匂いは香ばしく素敵な香り。でも食べると香りとは違う味。 だから子供の時分はたっぷりジャムを塗っていました。 珈琲を淹れる匂いは芳しくチョコレートを思わせる魅惑的な甘い香り。でも口を付けると苦いし酸っぱくてちっとも美味しくない。 だから砂糖とミルクをたっぷり入れていました。 ライムライトの珈琲の味は、飲む前に嗅ぐ香りと寸分狂わぬ味。 子供の頃からこんな珈琲を頂いていたらきっと今頃はコーヒー中毒になっていたと思います。 コーヒー音痴の自分にはカルチャーショックでした。 鹿児島のカフェが凄いのか、自分の舌が拙いのか、たぶん両方とも正解なのだろうけれど、此方が名店であることが1番の正解です。 #絶対行って欲しい店キャンペーン

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鹿児島県

焼肉

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玉乱会のCEO兼プロデューサーのKakizakiさんとの2人だけの夕食。 私には、有名無名関係なく、この方はとんでもない美食家だと思わされるレビュアーさん達が居ます。 N.Aさん、D.Hさん、a.Iさん、y.mさん、h.Kさん。そしてKakizakiさん。 そんな方々に紹介頂いたお店に行くのは食いしん坊冥利に尽きるでしょう。 しかし此方が選んだ店にお連れするとなると勝手が違います。 どんなにハードな練習を積んでも試合が近くなると心が乱れるボクサーの様な心境。 お店選びは熟慮しました。此処は鹿児島。 フランスやベルギーの食材と鹿児島の食材を使ってフランスの多様な郷土料理を深く追求していた「ビストロ サンバル」はお客が付かず既に閉店。 日本各地の旬の食材と鹿児島産の食材を使って超一流の鮨懐石を提供する「名山 きみや」は半年先まで予約不可。 薩摩地鶏を抜群の串打ち技術と火入れで堪能させてくれる焼鳥屋「せんみょう」は定休日。 鹿児島の食材を北京仕込の調理でご馳走に昇華させるナチュラルチャイニーズの雄「Sabro Aoki」と、ワインセラーが充実したワイルドな薪釜ピッツェリア「Sante」は次のお楽しみ。 ならば日本一に輝いた鹿児島黒毛和牛をご堪能頂こう。 厚切りの牛肉を、ただ七輪で焼くだけの小細工無しのスタイルで。 裏通りの大衆的な店で、飾らずに気取らずに、カウンターに横並びで。 初対面のKakizakiさんは重鎮感溢れる風格が漂っています。 闘魂マフラーを思わせるショッキングピンクのストールが鮮やかです。 お土産交換をして、メニューをじっと見つめた後、「全てお任せします」とのお言葉。 ・極厚特上タン ・極厚特上ハラミ ・極厚特上サガリ ・上ミノ ・生野菜 オーダーしたのはこれだけです。 相変わらず美味い牛肉。 口に入れると広がる脂の甘み。 噛むと頬に溢れ出す肉ジュース。 血の味が堪りません。 日本では幕末から明治維新にかけて本格的な肉食文化が幕を開けました。 牽引したのは横浜と鹿児島です。 2020年東京五輪で来られる海外の来賓に対して「日本一の牛肉」を名乗って良いのは鹿児島黒牛だけになりました。 きめ細かく柔らかい肉質にバランス良く織り込まれた、融点の低い霜降りのとろけるような食感と、繊細ながらもしっかりした赤身の味わいが特徴です。 お酒も進み、Kakizakiさんに以前から訊いてみたかったことを訊いてみました。 「あのう、家での食事で1番好きなメニュウは何ですか?」 「…塩鯖とご飯です」 私には外食の師匠とも呼ぶべき方が2人います。2人とも大阪出身で海外で会社を起業した経営者です。 同じ質問に対して1人は「納豆ご飯」もうひと方は「塩昆布のお茶漬け」と答えたことが今もずっと心に残っています。 「塩鯖とご飯」 Kakizakiさんからも似たような答えを頂きました。 やはり皆さんニッポンの"うま味"が強いものがお好きな様です。 しかも頂いたお土産は心斎橋の老舗の塩昆布…。 まさにツボを押さえた名人のチョイスです。 思えばフォロワー数が一ケタのときの私なんぞの拙稿の鰻屋やとんかつ屋に足を運んで頂き、参考通知を頂いたものです。 「食べるという行為の本質においては、本当はどうでもいいことなのに、ああでもないこうでもないと下らない拘りを語りながら食事をするのは最高に楽しいことです。」 かつてにKakizakiさんから頂いたコメント。 確かに…。 SNSなど苦手だった私に、食を通じたレビューとフィジカルな出会いの楽しさを教えてくれたAsanoさんとの邂逅から始まったRettyユーザーさんとの交流。 そんなことを始めて間も無いのに、早くもRettyオフ会の権威みたいな玉乱会を主催するミナミの帝王との邂逅。 この後に2軒をハシゴして、結局私の深酒癖で深夜までお付き合いさせてしまいました。 2月には私が食通大王と崇めるAwataさんとお会いすることも決まりました。 地の利でTop Userになった私は置かれた環境をただただ楽しもうとしています。 #Recommend+Happy=Retty!

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鹿児島県

イタリア料理

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あまり知られていませんが、鹿児島は日本のナポリです。 どの辺がナポリかというと、単に風景が似ているというだけなのですが、1955年から鹿児島とナポリは姉妹都市。 ベスビオ火山とナポリ湾とサンタルチア港。 桜島と錦江湾と谷山漁港。 文字に起こすと、どうもしっくり来ないのですが、本当に似ているのです。 鹿児島の風景をご覧下さい。落涙する程に美しくて大好きです。 さて、飾り気のない剥き出しの薪釜で何でもかんでも美味しく焼いちゃうピツェリアの此方は、5年先まで予約で埋まっている鹿児島随一の鮨懐石店、名山きみやのご主人の紹介です 名店は名店を知る。 やはり流石の美味しさです。 •ピッツアマルゲリータ •牡蠣の窯焼き •野菜の窯焼き •新じゃがとゴルゴンゾーラの窯焼き •ポルチーニのスパゲッティ 焼いただけの料理ばかり、でも旨い! 良い素材を吟味し、ただひたむきに窯で焼く。 マルゲリータはムラが有るのが堪らなく好きです。チリオイルを掛け忘れる痛恨のミスも酔った舌にはご愛嬌です。 野菜が美味しい店、大好きです。 人参なんか手づかみで頂き、その土臭いワイルドな風味と食感に、身体が元気になるのが分かります。 ワインセラーも広く、凄い種類。 此方に来るとオーダーするサンジョベーゼとカベルネソーヴィニヨンのワインを頂き、すっかり酩酊です。気付けば1人で約2本を開けていました…。 この日は、鹿児島のRettyユーザー5月度1位、Haraguchiさんとのディナー。 プレゼント交換などという可愛いことをして何だか若返った気分です。 いつしか、話題はRettyユーザーのことに。 「食事」をするという事は、世界共通の人付き合いの基本のき。 美味い、美味くないだけでは語り尽くせない記憶の連鎖が「食事」の醍醐味と思います。 人は未来を信じて生きられるほど、楽観的ではないと思っています。 きっと過去の記憶にしか生きられない。 だから呑む。翌日にどんなに苦しくても呑む。 素敵な店で、素敵なオトナ女子との「食事」なのに、1人酔い痴れて、そんなことを考えてばかりいたことを反省です。 #タグで振り返ろうキャンペーン

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鹿児島県

焼き鳥

Takahiro.M

いつも満員で、今まで振られ続けた理由が分かりました。 とんでもなく美味い焼鳥屋に出逢ってしまいました。 遅めの時間に何とか入れたものの、しかし焼鳥はことごとく売切れです。 鳥はとにかく有るものを頼み、牛、豚を加え、酒の肴とビールを注文。 最初に出されたささみを一口頂いただけで、ここは凄いと確信しました。その後出てくるもの全てが案の定素晴らしい質! 鳥が美味いことで有名な博多から来た方もレベルが違う、博多が1番じゃないんだ…。と驚いていました。 はっきりと覚えている幼少の記憶が有ります。 それまで母の作る鳥の唐揚げ(ザンギ)が好きだったのですが、小学2年のある日、食卓に上った唐揚げを頬張ると、中からヌチャ〜ッという得体の知れない食感の臭い脂分が口中に広がり、思わず吐き出しました。 あれが私の輸入ブロイラー初体験だったのだろうと思います。 今でもスーパーやコンビニで売られている惣菜の唐揚げを食べたときに滲み出すアレが苦手です。 もも肉の皮と身の間のゲル状のヌルヌルとした臭みの有る白い脂の塊。 出来るだけささみや胸肉を買う様にしていますが、もも肉を自分で調理する時には皮を剥いで脂を包丁で削ぎ落とします。 一方、中国や東南アジアで鳥を頂く度に驚愕の美味さに感激します。 あのヌチャ〜ッが全く無くて、引き締まっていながらもジューシーな肉質の虜でした。 特にフィリピンのChicken Inasalという炭火焼は大絶品です。日曜になるとオフィス街の広場に屋台村が形成され、あらゆる料理や有機野菜、自家製パン、低温殺菌牛乳、手造り雑貨等の店が並ぶ様は圧巻であり、炭火で香ばしく焼かれたチキンにココナッツビネガーとカラマンシ(フィリピンのすだち)で作る特製ソースを付けて頂くと、その美味いこと…。(画像有り) さて、鹿児島の地鶏は東京で食べていたブロイラーとは全然違います。 その味はアジアの地鶏と同等です。 恐らく種類もお互いに赤鶏と同じではないでしょうか。 鹿児島の人達の真のソウルフードが鳥刺(肝も生です)である位に、実は鳥が新鮮かつ上質なのです。 何しろスーパーに普通に朝引き地鶏が並んでいるのですから立派です。 ビールの後は、芋焼酎のロックを煽りながら以下のメニューを次々と頂きました。 ささみ レバー 皮 もも 牛サガリ 牛タン 九条葱豚巻き 焼ホワイトアスパラガス 焼ししとう 茄子煮浸しの山かけ 生トマト 九州の鳥の旨さはよく云われますが、此方はその中でも別格です。 横浜で大好きだったあの焼き鳥屋も、もう行きたいと思わないかも知れません。 #塩加減も抜群 #聞きしに勝る名店です #予約しないと入れません #潰した鶏は当日中に頂くのが鹿児島流 #鳥皮はキムカツみたいなミルフィーユ風 #次はもっと早く行き、せせりを必ず頂こう #これは絶対食べてほしいキャンペーン

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鹿児島県

ステーキ

Takahiro.M

'62年創業、鹿児島最古のステーキハウスの地元産黒毛和牛のタンシチューは先代から受け継がれたドミグラスソースと相まって実に見事でした。 子供がヒーロー物に憧れるように、親しくなれるはずもないのに、10代の頃からかれこれ30年以上も憧れて勝手に崇めている親分と師匠と先生がいます。 親分は永遠の不良と呼ばれる世界で最も成功したR&Rショーバンドのギタリスト。破天荒で不健康な伝説は枚挙にいとまが有りません。しかしイギリス人でありながら'30年代にアメリカ南部で生まれた黒人ブルーズを調弦から忠実に再現し、自身の存在が巨大化した後も変わらぬ敬意を表し続け、黒人ミュージシャンのポジションアップに多大なる貢献をしています。親分はパイレーツオブカリビアンの主人公の父親役として還暦を過ぎてから銀幕デビューも果たしています。 師匠は異常に顎が長い元スポーツエンターテイナーで現国会議員。大人なのにパンツ一丁で大衆に裸を晒す職業に就いてしまった劣等感を哀愁に変えて背中で語る様にやられました。色眼鏡で見られる職業が市民権を得る為の真の戦いは過酷を極めたでしょう。湾岸戦争時にフセイン政権下のイラクで捕えられた日本人人質41人を怪しげな人脈を駆使して救出した時は本物のヒーローの様でした。日本にタバスコやスペアリブを根付かせ、マテ茶を持ち込んだのも師匠です。 先生は終戦後、満州から命からがら引き揚げた後、大分の田舎高校から東大現役合格。自殺未遂とできちゃった学生婚を経て、修士号を捨てて、ある企業の創立メンバーとなり、規模が大きくなると窮屈になり退社。その企業は日本最大の教材メーカー、学研です。 ねじ曲がった左翼思想から天皇制を批判して、自前で王国を設立も、人望がなく人が付いて来なかった為、動物を集めて国王に就任。 ムツゴロウ家畜、いや動物王国の創始者です。 親分と師匠と先生に共通している魅力はは、”ギャップ”。見た目と全然違う生き方をしている。 男も女も人間とはギャップに弱い生き物です。 ステーキハウス藤安は、ドアを開けるなり険しい表情のシェフの顔が飛び込んで来ます。 たいめいけんの茂出木シェフからチャラさを排除した様な出で立ちは、襟元のマリンブルーのスカーフがカッコ良さを際立てています。 鹿児島の真の食通YukikoさんとのRettyでのコメントのやり取りで存在を知った此方、はじめからお目当はタンシチューです。 しかし店内に漂う焼ける芳しい牛肉の匂いに心が迷います。 ランチステーキかタンシチューか。 シェフの険しい顔を見るに、いつかタイ料理屋でチャーミングな女性店長とやった様に、じゃんけんでメニューを決められる雰囲気では有りません。 迷いに迷った挙句、タンシチューを注文しました。初志貫徹できたことにホッと一息です。 まずサーヴされるのはポタージュです。 これが柔らかく、角が無い味で美味しい。 自然な牛のダシが僅かに効いた優しい一杯です。 次にサラダ。キュウリが新鮮で爽やかな気分になります。ビネガーが強めの手作りドレッシングが際立ちます。 そしてメインのタンシチュー。 フラットな皿にタンが2枚乗り、上からドミグラスソースがかかっているという想像と違うスタイルです。 おもむろにソースをすくって口に運ぶと、これが実に美味しい。 まさしくトマトと赤ワインと果実を凝縮した味わいです。 いよいよタンを切ってソースを絡めて一口頂きます。ソースの味が先に消えて、後に残る柔らかいタンを噛みしめると、乳飲み仔牛肉の様なミルク臭を感じます。 いちいち鼻で呼吸をして香りを楽しんでしまうこの芳醇。 シンプルなのにゴージャスです。 揚げたジャガイモ、茹でた人参と、軽く湯がかれたオクラに生のクレソン。 付け合わせの野菜も良い感じ。 これらに例のドミグラスソースを纏わせて頂くと、思わず目を瞑ってしまいました。 鹿児島黒毛和牛のタンを大事に一切れずつ、噛み締めながら頂いていたはずが、堪らずにペースが上がり、あっと言う間に完食です。 デザートはレアチーズタルトを選択。 これまた自然で質素な好みの味、深煎りのコーヒーと共に平らげました。 私が興奮して食べている間中、目の前のシェフは玉ねぎを刻んだり、ソースを煮詰めたり、フランベしたり、実に多忙。 お客も次々に来ては入りきれず待ちが発生。 決して便利な立地では無いのに繁盛店です。 外で待つお客が気になり、そそくさと席を立った帰り際、「ありがとうございました!」思いの外、ハイトーンなシェフの声。 振り返ると照れ臭そうな、しかし満面の笑顔のシェフと会釈をして別れました。 ギャップ萌え。このことなりです。 期待以上でした。 次は堂々とステーキを注文します。 #投稿1番乗りキャンペーン