個人的な好みを言えば、フレンチに関してはクラシックが好きです。それでも自分にとってエスキスは特別であり格別なレストランだと感じました。日本の食材をバッチバチに使いこなしてフレンチに完成させる店というのは、日本でしか味わえないグランメゾンなのだと思います。 いわば、ラーメンやカレーのように、本家のものとは派生して完全に日本人の価値観で作られ国内だけで評価され進化し続けているように、フレンチももはや日本独特の価値観で進化しているのではないでしょうか。(歴史的に見ても、日本人というのは海外のオリジナルを独特の進化をさせて日本のオリジナルにする能力に長けている) エスキスはまさに日本の価値観で進化したグランメゾンだと思いました。(「モダン」という言葉で一括りにジャンル分けをすることに強烈な違和感を覚えるのはそのためでは?) ★メニュー★ ディナータイムのメニューは2種類で19000円のものと24000円のもの。メニューには料理の他にグラスシャンパン、ミネラルウォーター、お土産も付いています。ワインは1万円、2万円の2種類のペアリングコース。お酒の飲めないゲストへの配慮で7500円でノンアルコールドリンクのコースがあります。 この日は19000円(前菜4品、魚、肉のそれぞれのメイン、お口直し、デセール、プティフール)を二人で注文しました。ワインは2万円のものを。ゲストへはノンアルコールカクテルを。 <前菜1>アミューズ。南瓜、バナナ、生クリーム、ココナッツオイル <前菜2>栗のフランに雲丹を添えて <前菜3>木の子のソテー、ほうれん草とオレンジの風味 <前菜4>白子、キャベツ、ほうれん草のグリル <メイン魚>金目鯛、南瓜、サザエのポアレ <メイン肉>蝦夷鹿のロースト、ブルーベリーのソース <お口直し>栗のクレープ ★印象に残った料理、サービス、ワインについて★ 特に印象に残っているのは前菜4品目の白子のグリルです。ソムリエの方に日本酒も勧められましたが、白ワインと合わせていただきました。ポン酢のような味付の役割があったのだと思います。 そして、エスキスのスペシャリテの蝦夷鹿のロースト。ポムロールのシャトーネナンとばっちりの相性でした。 総じて、クラシックなフレンチだと、古典であるためにたような料理が出てきます。そのせいもあってワインも単一的になってしまうものですが、エスキスは「こんなワインや組み合わせ方があったのか!」と斬新なものばかり。ノンアルコールカクテルも、まさにソムリエならではのセレクションのため全く飽きがきません。 お会計は二人で7万3千円程度。割と安いのではないかと感じます。 ★今後のフレンチ★ フランスやアメリカで食べられるようなクラシックな高級フレンチを、外国人の方がわざわざ日本に食べに来るとは思いませんが、日本独自の進化したフレンチであれば価値が生まれるはずです。和の食材を完璧に使い切るグランメゾンであれば、海外のゲストも喜ぶはず。 エスキスには「モダン」ではなく、10年後20年後の日本のフレンチの基準を想定して作られているようにさえ感じました。 実は12月のミシュラン発表前に「エスキスが三ツ星をとるだろう」と勝手に予測して、予約が殺到する前に席を取っておこうと思い、予約していたんですがまさか二つ星のままでズッコケたのですが(笑)今後も予約を取り続けていきたいと思います。既存の価値基準ではなく今後の世代のスタンダードとなっていただけたらと。 ★銀座という街について★ 銀座という街はとても不思議なもので、歴史は古くから存在しているのですが常に新しいものを入れて銀座の内部で細胞を進化させ、街全体が常に細胞分裂の循環を生み出してきた街だと思います。エスキスというのもの、フレンチを独特の文化まで進化させ銀座の中では新しい芽として生まれています。 今後の銀座はこう言ったスタイルがどんどん流行るのではないかと思っていますし、そこでようやくエスキスが一つの完成された基準として認知されるのではないでしょうか。 僕自身のことを言えば20歳からフレンチを求め続け、今自分は気づけばもうすでに27歳。ですがあと50年くらいはフレンチを楽しみたいので向こうエスキスには最低でも20年、30年の老舗として大きく進化していただければありがたいです。 なるべく長く銀座に通えるように自分自身も新しい価値観を作り続けていきたいと思いました。