Taizo Son
渋谷駅
寿司
「凛」とした鮨を食べさせる店。渋谷という鮨屋にとって不毛な場所で、若いが頑ななまでにこだわりの強い大将が、鮨、酒、空間の隅々まで神経を行き届かせようとひとり真剣に勝負している様は、業種は違えど真剣勝負をしているこちらにとっても見ていて非常に心地よかった。 特筆すべきは古の製法の赤酢を使ったしっかりとしたシャリ。噛んで心地よし、ネタとからんで味わいよし、歯の弱くなった老人には悪いが、若き大将ならではのビシッと締まった鮨は自分好みで好感をもてる。 つまみが数品、最後に脂の乗った炙り鯖を楽しんだ後、最初に出てきたにぎりはなんと中トロ、もひとつ中トロ、そして赤身のヅケ、極めつけは写真にある美しい秋サヨリ!サヨリの旬は春、と思い込んでいたら「秋のサヨリも脂が乗って旨いんです」との大将の言。なぜこのような組み立てかと聞けば、つまみと握りのトータルの組み立てでみれば、必ずしも握りが白身から始まる必要はないという考えから。慣習に囚われず旨い鮨を食わせようという若き彼の努力に大いに刺激を受けた。 おまかせでつまみ五品+握り13貫で1万2千円が基本。少々無理をしてでもぜひ若者に行って欲しい鮨屋。