川中紀行

川中紀行

レトリック(言葉の組合せによる文章表現の工夫)を駆使した、食レポ(料理の味わいと感動を伝えるレポート)にチャレンジします。

  • 6投稿
  • 0フォロー
  • 0フォロワー
  • エリア(すべて)
  • />
    ジャンル(すべて)
川中紀行

川中紀行

good

さがみ野駅

コーヒー専門店

赤みが美しいその珈琲は、ほどよい果実味で時間を潤わせる。「RED POISON COFFEE ROASTERS」IN ZAMA. きめ細かな珈琲の粒子が 薄墨を流したように カップから空中に広がり、 鼻腔をゆっくりと満たしていく。 ほんのりと舌先に甘みを 感じたのもつかの間、 舌の脇からブドウのような 酸味がわきあがり、 味わうように飲み込めば、 喉の奥までコク深く広がる。 そのブドウに似た果実味は、 舌の上ではじけるような刺激を放ち、 抽象的なモニュメントのように 幾本もの繊細な線を伸ばして、 しゅわしゅわと舌の上に漂う。  Burundi Kyanza Kibingo Natural。↓ やがて珈琲が冷めるにしたがって、 果実の酸っぱさは徐々に角がとれて まるみを帯びながら揺れゆく。 舌の先はいつの間にか酸味とともに 甘みを探して動きだすが、 グラスを置いてしばらくしても、 口のなかいっぱいに、 ベールひろげた果実の酸味は、 味わい深く舌を湿らせ、 慈しむようにまたひと口飲めば、 時間は潤いをしみ込ませて流れ、 それだけで本のページが進んでいく。 神奈川県座間市さがみ野。 相鉄線「さがみ野」駅から歩いて 3~4分の左手。 「RED POISON COFFEE ROASTERS」 その深みあるお店の歴史はWEBサイトで。

川中紀行

川中紀行

good

由比ヶ浜駅

ケーキ屋

およそ甘みの全てに舌で甘えるかのように、「キャラメルバナナケーキ」。 #レトリカル食レポ フォークで持ち上げて口に持っていくと、 ほのかなバナナの匂いが鼻腔を包む。 バナナの果肉とキャラメルクリームが じんわりと濃く染みわたったスポンジは、 くにゃりとした程よい弾力と共に、 バナナともキャラメルとも違う 濃厚な甘みをじゅわりと広げたかと思うと、 一気に口中にあふれる甘美なうねりとなって 味覚に押し寄せ、 私は、甘みに甘えるかのように応える。 ふと、舌先にまろやかな 温かみにも似た 甘さがふれたかと思うと、 上あごを、一気にまるみのあるふんわりとした 蜜のようなうっとり感で塗り替え、 舌の横から濃厚なキャラメルの渦が わき上がれば、 舌の根元には濃密な甘露が 噛むほどにしたたる。 目をつぶる陶酔のなか、 舌の上を時折、 一本に凝縮された甘い 官能が横切る。 * 江ノ島電鉄線「由比ヶ浜」駅、 改札を出て右へ数分歩いた左側、 「クローバーリーフ」。 そのどれもが、 これまで舌が覚えていた スイーツの基準を変える。

川中紀行

川中紀行

good

エチオピア(中煎り)がもたらす、華やかな酸味 [#レトリカル食レポ]。 カップを上げてひと口ふくめば、 しっかりと四隅まで行き届いた 華やかで甘酸っぱい味わいが舌を満たす。 そのまま鼻のそばにもっていくと、 鼻腔をしっとりと、 ほのかな酸味に誘う香りが、包む。 そしてつぎのひと口では、 舌先に青りんごっぽい味を感じたかと思うと、 同時に舌の奥では酸味が際立ち、 ふくみつつ回すと、とろりと波打つ。 すると、ラズベリーテイストの酸味が、 舌の上で飛び散るかのように 勢いよく広がったかと思えば、 やがて ゆっくりとやわらかく変化しながら、 舌の横からすべり込んだのは、 ライチのような優しさ。 酸い余韻を繰り返し味わい、 醒めてくるにしたがって、いつしか それは、ゆっくりと浮かび上がる、 キャラメルっぽい風味に変わる。 エチオピアの味わいの素晴らしさを 店主に伝えると、 「2020 年の品評会で1位になった」 とのことで、調べると 第 1 回のエチオピア カップ・オブ・ エクセレンスという大会で優勝を果たした 「ニグセ・ゲメダ・ムデ農園」の 豆(中煎り)であった。 田園都市線「鷺沼」駅近くの 「ザ・モダンコーヒー サギヌマコーヒーバー」、 1万kmの距離を超えた、至福の出合い。

川中紀行

川中紀行

good

中央林間駅

カフェ

重なり合う甘みと塩味、穀物味のレイヤー。ハム&チーズトースト。 指先で長方形のハムチーズトーストをはさんで、 濃い桜色の生ハムとチーズの黄が 柔らかな曲線を描いて重なり合う 断面を見ながら スローモーションのように前歯でかじると、 パンの焦げめがカリリッと音をたてて 耳に美味しい時間の開演を告げる。 生ハムの繊細な肉味を、 とろけるようなチーズの舌ざわりが受けて 優雅に抱き合うみたいに ゆるりとした感触が口にひろがるのと同時に 舌先がなめらかなチーズの甘みをとらえ、 生ハムの塩味が、それを追うように、 パッ、とスパークリングの感覚にも似て わきあがる。 繊細な粒々イメージの塩味が、 チーズらしい甘みを包み 舌と口腔から伝わるメローな感触と共に、 くるくると混ざり合うそのとき、 パンらしいずしりとした穀物テイストが、 生ハムとチーズのブレンドに加わって、 さらにその奥にある味わいを、 手探りするように噛みしめていた。 大和市中央林間「daily」。 今日も、ご近所の味で。

川中紀行

川中紀行

good

中央林間駅

カフェ

※写真は、dailyランチとほぼ同じメニューのテイクアウトです。 まずは南蛮漬けを軽くつまむと、 さっぱりとした酢の風味に絡まって 揚げごぼうの繊維質の風味は 人参に玉ねぎ、ショウガに囲まれ、 束に重なり合い味わいを深める。 ほっくりとした南瓜に目を奪われ、 その甘みを楽しめば、 胡桃が楽しそうにプチと歯をたたき、 小さく切ったベーコンが じんわりと南瓜の味にとける。 シャキシャキとしたキャロットラペには、 レーズンがするりと甘みを届け、 噛むほどにあふれる鶏の旨みが、 あんからにじむ茸の滋味と 一つになって舌をくるむ 鶏肉のあんかけ煮を際立たせる。 小松菜のおひたしに箸を移せば、 歯の先からお出汁がじんわりと口に広がり、 小気味よく味蕾をくすぐる 菜の花やしらすがほろりと脇を締める。 漬けた桜の花弁が味に奥行きを出す 十六穀米は、一粒一粒を 脳に刻むように頬張る。 つぎつぎに、 味覚の隅々まで楽しませる ひと品、ひと品は、 この小さな弁当の箱の中で、 幾重にも層になって 口もとほころぶ、 滋味のうねりを呼ぶ。   お麩を蒸して揚げたというフライは、 誰もその正体を言い当てられない妙味、 らしいが、 これは、隣で食べている人にあげた。 「食堂カフェ daily」。 今日もご近所の味で。