知らないお酒をゆっくり一杯飲みたくて、評判の良さそうなバーをGoogleさんに聞いて訪問しました。2020.12.23
パドロックさん。
南京錠と言うそうです。禁酒法時代のバーの裏名とか。
岡山駅から歩いてほどなくそのお店はありました。派手すぎず、でもセンスを感じさせる入り口。当たりの予感です。
ドアを開けます。からん。古い英国の執務室のような内装です。うん好き。見渡すと初老のマスターと若い男性と目が合いました。マスターが微笑んでくれました。「何名様でしょう」「一人です」「かしこまりました」マスターはカウンターの端で椅子を引き落ち着いた声で呼びます。「ではこちらへ。」
カウンターは木の一枚板。椅子の高さは低めです。オフィスの机より10センチくらいでしょうか。一人用のソファのような椅子に腰を降ろし、綺麗な木目に肘をついて棚を眺めます。目の前に色鮮やかな瓶が綺麗に並んでいます。背の高いスツールではなくわざと低いカウンターにしているのでしょう。ゆっくり流れる時間を作り出しています。
若い男性がカウンター越しに向かいに立ちメニューブックを広げてくれます。値段はだいたいオーソドックス、ワンショット800円前後。抑え目の値段設定ですね。チャージいれて税込2,000くらいかな。品揃えもいいです。ウイスキー、カクテル、ワイン、焼酎まで何でもあり。ウイスキーだけでも山崎マッカランの定番からボウモアラフロイグのアイラ系に、知らないお酒まであります。よしここは聞いた方が良さそう。
「すいません」「はい」「普段は、山崎、ボウモア、カリラ辺りを飲むのですが、おすすめはありますか?」
少し悩んで持ってきてくれました。
「アルコールが若干高いのですが、なかなか手に入らないウイスキーです。ラフロイグの限定です。」
うれしー。こういう普通じゃ銘柄も知らないようなお酒をご存知なのが専門家さんならでは。飲む飲むー。飲みますよー。
「ではそれでお願いします。チェイサーと加水用の水をお願いします」
その後は幸せな時間でした。
ストレートでよし、チェイサー入れてよし、加水すればかすかな甘みと豊潤な香が。たまりません。
後で調べてみました。頂いたのはたぶんこれです。
ラフロイグ カーディス フィノ 2018 51.8%
何も知らずに頂きましたが、一見さんにこんな酒を出してもいいのかと。ボトルで18,000円、そもそもあまり出回らない、それなのにチャージ、お通しナッツ、ラフロイグ1ショット、チェイサーで税込2,800円。安すぎます。家飲みじゃないんだから。お会計をお願いしたらマスターが「希少品ですので少しお高くなってしまい申し訳ありませんが...」とおずおず出してきた金額が2,800円。勘違いしたかなと思ってました。いい酒だったように思うけど普通のラフロイグだったかあ、まだまだ馬鹿舌だなあと。いやいや、パドロックさんが脅威的だっただけでした。全く知らない酒をハズレ無しで飲ませていただいて、内装、雰囲気、接客、文句なしのサーブに、あげく希少品。後で調べて目玉が飛び出しました。お客さんにメリットしかないじゃないですか。
最後はマスターがわざわざ道路にまで出てお見送りいただきました。
あのお酒をあの価格で提供できるバーがどれだけあるか。内装、接客ともに文句なし。お食事も美味しいそうです。いやはや、すごいバーに出会えました。