Yasumitsu Kaibe
北天下茶屋駅
コーヒー専門店
「見たってや〜」でお馴染みは『じゃりン子チエ』の父親、テツ。この店の女将は「よしえはん」。 午後一時(頃)開店。大阪では知られた「丸福」珈琲の分家。 よしえはんのお母さんが二年前に亡くなり、今はよしえはんがひとりで店を切り盛りする。 出される珈琲は丸福のそれに似て、極限までの濃さである。苦味が強い(YUFURAの丸福、参照)。なんでも、初代丸福の店長はアメリカで珈琲の入れ方を学んできたのだそうだ。 亡くなったお母さんとよしえはんの人柄もあって、いろんな人がやってくる。ファッションデザイナーがいるかと思うと、日本一の皮革を商う恰幅の良い白髪の老人がやってくる。 この日は、この老人が「こだわってるやつ、おるなぁ」と言って入ってきた。私の自転車を見たのである。後ろの荷台に鞄を南京錠で吊るしてある。その鞄の皮の品質に関心を持っての発言だった。 私が帰ろうとしているときに入ってきたが、牛革の話になり、帰れなくなった。 一度、自分の会社に来いと言い、今日は名刺を持っていないと言うので、名刺用の紙を指し差し出すと、あまり上手ではない中で名前と会社名、電話番号を記してくれた。そこで出て行こうとすると、「あんたのわいな?」 もう少しで、礼を失するところであった。もう1枚の紙を取り出し、私は肩書きで肩書き、名前、電話番号を記して渡した。 一緒に店を出、しばらく話しながら、阪堺電の踏み切りを超え、私は路地を右に曲がり、彼の人はまっすぐ闇に消えていった。