Ryoichi Sato
広尾駅
和食
【軽快な和食と艶めいた男女】 南青山にあります当店スダチ。 過日は、傍らに携えた女性とランチに足を踏み入れた。 ◎外観と内観 ファミマが入るビルの地下1Fに佇みます。目印にファミマを覚えておかないと、通り過ぎるかもしれません。 当店もラ・ボンバンスも、大人の隠れ家がコンセプトでしょうか、看板に衆目を集める効果は期待されていない。翻せば秘密めいた空間であり、ワクワク。 階段を地下に潜り扉を開けると、間接照明が仄かに灯るシックな空間が拡がります。ランチ時でも、洒落乙でムーディーな雰囲気は抜群です。 ◎オーダー 8,000円(税/サ込) 過日のオーダーの他は、4,800円のコースがあります。ディナーは12,000円(税/サ別)の一本。 アペリティフにグラスのスパークリング(1,000円)を。ボトルの終盤だったようで、シャンパンセーバーでも多少気抜け。 連れ合いはガス入りの水で喉を潤す。 ◆前菜 茶碗蒸しです。アサリの塩気と磯の香りが、まろやかな茶碗蒸しの中で、寄り添いながらも確かな個性を発揮しています。 湯葉とチーズで表面を覆い、アサリの他には海老芋でしょうか、銀杏の代わりに秀逸な口当たりを生んでいる。上からオニオンスライスを揚げたヤツが、アクセントにオン。 趣向を凝らした秀逸な一品でした。フレンチのアミューズみたいなもん、一品で心を奪われた。 ◆八寸 色彩豊かで目にも楽しい八寸。これでもかと、春の恵みがふんだんに登場。 そら豆から時計回りに、イイダコの煮付け,蕗,銀タラの西京焼き,クリームコロッケ,蛍烏賊のジュレ,鮪とねぎのヌタ,桜海老と葉わさび。滋味溢れる素材の味わいを堪能する一皿です。 どれもこれも美味かった。スパークリングをペアリングしましたが、冷酒を合わせるべきだった。酒の肴に最適解。 ◆椀物 蛤と白子,蓮根のしんじょ 吸い物にすると、グンと香りが引き立ちます。蛤の塩気と弾性の強い食感に、白子の、ねっとり口内を占領するコク,シャクシャクと小気味よい蓮根の食感を、しんじょで一つに。椀物のおかわりなんて聞いたことないですが、いつか頼んでみようとおもう。 ◆焼物 アカガレイの一夜干し 煮付けでよく見るアカガレイ。焼いても旨いな。一夜干しにすると、余計な水分が抜けて旨味成分のイノシン酸が凝縮…教科書みたいなことを言っている。 ◆炊き合わせ 蟹身と白魚,大葉の揚げ物,椎茸が入った一品。具材から滲み出る旨味が溶け合い、格段に飛躍する風味が、得も言われない。旨味の相乗効果、Yeah。魚介と椎茸,揚げ物から出る風味は抜群旨いなあ。海苔とミョウガ,あられがアクセント。 ◆鍋 ・牛ロースのすき焼き,温泉たまご 一人前のポーションで、すき焼き。コースですき焼きが味わえるのは想定外。割り下に牛ロースと春菊,ネギ,豆腐のシンプルな組み合わせが、変にひねらず美味しい。温泉たまごに絡めるのは初体験、グッド。 ◆飯物 ・鯛茶漬け 胡麻ダレに絡んだ鯛の切り身を、土鍋で炊いたご飯にのせてかき込む。これは、見た目そのまんま、胡麻ダレのコクと塩気が濃ゆい。出汁を注ぐ前に、具材のみを口にすると、胡麻ダレが圧倒的なパフォーマンスで口内を席捲し、鯛の風味は些か仄かにさりげない。 出汁を注ぐとサラサラズルズルかき込めるのですが、出汁で胡麻ダレが中和される一方、鯛の風味はと言うと、舌が求める突き刺すような旨味は感じられない。 胡麻ダレの鯛茶漬けは、長崎などの西にみられる郷土料理ですが、当店のそれというより鯛茶漬け自体と、稚拙な味覚の相性がすれ違ったのだと思います。 ◆甘味 ・白い◻︎ー◻︎ー,イチゴのムースタルト 白い◻︎ー◻︎ーはグループの定番,スペシャリテなよう。視覚と味覚のギャップを驚きという。華原朋美が桃の天然水を世に出したときを思い出した。 イチゴのタルトは、一般的なそれより果肉の酸味と仄かな苦味が伝わる味わいで、フレンチの華麗で甘美なデセールとは趣きを異にした、和食らしいエンドロールを見たように感じます。 ◎推奨シーン カウンターに男女の対。供される品々の味わいは言うに及ばず、間接照明が演出するシックな空間に比して、白木のカウンターの向こうが放つ、料理人たちの整然とし淀みない調理も絵になります。 過日はランチでしたが、昼の時間帯でもムーディー群抜。テンポよい軽やかなコースに舌鼓を打った後は、明治通りの桜を並んで歩いて愛でましたが、夜の帳が下りてたら六本木のリッツカールトンにでも連れ込んだでしょう。 軽快な和食と艶めいた男女 広尾 スダチ である。 #ラ・ボンバンス系列 #軽快な和食 #カウンターの風情