Oyama Kaede
勾当台公園駅
ラーメン
深夜のラーメンはどうして背徳感があるのだろうか。 居酒屋で飲むとふと“今日の〆のラーメンは何にしようかなぁ”と考えてしまい いそいそと会計を済ませて夜の街をフラフラと歩く。 23時を過ぎた頃に空いている ラーメン屋さんは繁華街にしかないだろうとあたりを付けて、 コロナウィルスが落ち着いてきて、灯りを取り戻したネオンが煌めく街に繰り出しす。 威勢の良い掛け声を掛ける夜の街のかかしをすり抜けて、ポツンと佇む店へ吸い込まれていく。 入ってみると壁一面に有名人のサインがズラーっと並ぶ。 きっと彼・彼女らも同じように、 まだ満たされないお腹を抱えて この店にやってきたのだろう。 そんな先人たちの足跡を眺めていると 頭にタオルを巻いた店主さんがラーメンを 運んできてくれた。 薄い醤油色のスープに黒い海苔。 ちょっと乗せてみましたといわんばかりの ネギの下には輝く小麦色の麺。 嗚呼、この規則正しい正統派ラーメンが 食べたかったのだ。 蓮華でスープを口に運ぶと 動物系のコク深い味わいが口の中に広がる。すかさず細麺をズズッと啜る。 飲んだ後にはピッタリの軽やかさだった。 丼と口の間に箸を往復させていると あっという間になくなってしまった。 満たされたお腹を抱えて元来た道を戻る。 これだから深夜のラーメンはやめられないのだ。