Aji To

「なぽり」という看板を見ると、パスタにワインというイメージが浮かぶけれど、このお店はなんとも男臭い居酒屋。 汗臭いということではないですよ！ マスターは黒い服が似合う細身の渋い親父。 無駄口など叩かない。西北の健さんというイメージ。 都会の片隅のバーにいそうな感じでもあるし、漁師町の一杯飲み屋にいそうな感じでもあるし、小学校の野球チームの監督のような感じでもある。 味見(アジミ)先生はチラッとおすすめメニューが書かれたボードを見ると、「生ビール」450円、「水餃子」350円を２つ、「親子とじ」450円を発注。 私も味美(ミミ)ちゃんも味見先生につられて「生ビール」を注文。 メニューの価格を見るとかなり安い。これならサラリーマンの小遣いでもフラりと立ち寄れる。 「生ビール」はまずまず、というかホッとする居酒屋で飲み慣れた味だ。 料理の方は、特にこれがというこだわりは無さそうだが、ちょい呑みのおつまみに、誰もが好きな餃子や卵料理がおすすめになっているところがいい感じ。 おすすめメニューは他には「エイヒレ」400円、「湯豆腐」450円、「ネギマ」350円、「スペアリブ」600円、「鳥皮ポン酢」350円、「寄鍋」900円があった。 麦焼酎は「一番札」400円。すっきりとした味わい。 焼酎は韓国焼酎の「緋緞(ビダン)」 400円という焼酎も置いてある。味見先生は「ウォッカのロックような素直な甘さだね」と感想を言いながら味わっている。 一口飲ませてもらうと確かにその通り。 少し緯度が高いとこういうお酒が産まれるのかな。 韓国焼酎と言えば「鏡月」というブランドが大手酒造メーカーの大がかりなCM戦略で広まったが、「緋緞」もなかなか良い。 米不足だった韓国で芋類のでんぷん質を使って甘味のあるウォッカのようなお酒が生まれた。 「ハイボール」400円は「ブラックニッカクリアブレンド」。 少し薄目だけど、 ニッカ ウヰスキーの味はしっかり。なかなかいいですね。 今回はいつものメンバーに三人の飲み仲間が参加。カウンターにずらっと並んで気楽な時間を過ごす。 「山が見えるから好き」と関西に転勤でやって来た智加子さんの話を肴に呑む。智加子さんが私と反対側に座ったメンバーとの会話に没頭し出したので。 店のテレビで放映していたボクシングの試合を眺める。 「亀田弟負けた」 亀田が負けてもマスターの表情は変わらない。 帰りがけに、マスターにこの店の名前のことを聞くと、「大リーガーの名前さ」と話しながら初めて私に笑顔を見せた。 ナポリと言えば三振か起死回生の一発かという魅力ある野球選手だった。 このマスターが好きだというのが何となく解った。 お会計は六人で5300円であった。おおきに、ご馳走様でした。

　知人に、西宮北口駅から徒歩圏の気楽なイタリアンレストランを教えて欲しいと訊ねるとしばしば名前が出てくるのが「ラディーチェ」。 　阪急西宮北口駅から宝塚に向かうと、左の車窓から見える。以前から気になっていた。 　シェフが一人、アルバイトが一人でこじんまりとやっている。 　大きなお店も良いが、イタリアンはこういう小さなお店の方が期待が高まる。 　このお店に来る途中で、ペコちゃんに出会い四人で飲むことになった。ペコちゃんは、この近くの行きつけのお店でよく出会う。そこでは、ペコちゃ...ん、いつもカウンターの一番端に座って、決まった銘柄の日本酒をちびちびやったり、ふと見るとうつらうつらしている人物。食通の味見(アジミ)先生に言わせると、かなりの舌を持っているらしい。 　ペコちゃんの感想も楽しみだ。 　先ずは「前菜の盛り合わせ」1260円と「生ビール（アサヒスーパードライ）」450円で乾杯。 　生ビールはごく普通の味だが、味見先生とペコちゃんは満足出来ない様子。 　味見先生は「メーカーのマニュアル通りにサーバーを洗浄してると思うんだけどね。たまにはネックとか取り付け金具まで徹底的に洗浄してほしいな。そうするとすごくクリーンな味わいになるんだけどね」と感想を漏らす。 　分かったような顔をして聞いていたが、ペコちゃんは当然という表情。 　私は続いて「スプマンテ（グラス）」650円を注文。 　暫くすると背中からポン！という気持ちのいい音がした。ソムリエのマニュアルでは、発泡ワインは音を立てずに開けるようになっているらしいが、私は景気よく音を立てて開けてもらうのが好きだ。この音のお蔭で祝祭気分。味もなかなかいける。 　四人とも納得の飲み口の良いスプマンテでボトル一本分を飲み干した。シェフはグラスではなくてボトルのお値段にしてくれた。その方がお安いですと。気配りありがとう。 　「グラスワイン（白）」500円も頼んだが、こちらも飲み口のいいタイプを選んでいる。ただ、温度が上がると少し嫌味が出てくる。氷を入れても良いかもしれない。 　｢前菜の盛り合わせ」は「ほうれん草の玉子焼き」、「イワシのオイルサーディン」、「青のりを練り込んだピザ生地のフライ」、「イカのスミ煮」、「鶏むねのくんせい」、「小柱とオレンジのマリネ」、「野菜のビネガー煮」の７種類。 　この一皿でシェフの腕がうかがえる。気楽に行けるイタリアンとしては水準以上。評判が良いのも納得。 　「野菜のビネガー煮」は好物だ。優しいイタリアのマンマ(お母さん)の味がする。シェフは男性だが、こう言う料理の味付けは母親の手料理の影響が大きいと思う。 　「小柱とオレンジのマリネ」は煮ると煮汁に少し臭みがでるが、オレンジと食べることでバランスのとれた味になっている。 　「鶏むねのくんせい」は結構いけた。スプマンテにも合いますね。 　味見先生は「生ハムとフルーツのサラダ仕立て」1260円を注文。生ハムはパックに入ったタイプかな。スライスして出してくれると香りや塩味が違うんだけどね。でも 洋梨、ルッコラ、赤カブ、赤カブのくき、サラダ菜、イタリアンパセリなどが盛り付けられていて彩りもいいし、味の変化もある。欲を言えば、洋梨にもう少しみずみずしさが欲しかったな。 　最後に私のわがままで「スパゲッティ“アーリオ・オーリオペペロンチーノ”」950円を注文。シンプルだけに難しいと思う。頭の中にイメージはこんな味であって欲しいと思うけど未だに理想の味には辿り着けない。 　「ラディーチェ」のシェフは麺の茹で加減は流石心得ている。若干油の味が勝っている。油の量が少し多く麺に絡みつくと、炒めた後の油が冷えた時に少し味がきつくなるのか？ 満足の味だったが、私は理想のペペロンチーノに出会うまで妥協したくない。 　シェフ！こんな我侭な男ですみません。 　でも、この店の良さが判りました。 　通うことで、シェフがその人の好みに合わせて料理を工夫してくれるような気がします。 　イタリアのマンマ(お母さん)のように。 　四人で合計9070円。おおきに、ご馳走様でした。

「行ってみたいお店があるの」と味美(ミミ)ちゃんか口火を切った。 「どこだい？」と味見(アジミ)先生が身を乗り出した。 「あの…」味美ちゃんが店の名前を言いかけて、何故か途中から急に声が小さくなった。 「もなか」... 「えっ？」と言いながら味見先生が嬉しそうな顔になった。 「味美ちゃん！最中と書いてさなかと読むんだよ。確か、阪神淡路大震災のサナカにオープンしたからだとか…」 　私は口を挟まなくて良かった。実は私も「もなか」と思い込んでいたのだ。 　日本語は実に難しい。 　店の名前だけで既に盛り上がった三人を待ち構えていたのは「最中」という名前とは全くイメージの違う洒落た店だった。 　店内も広く、客席の中央辺りには大きな配膳スペースもとってあり、ゆったりしている。 　味美ちゃんは店内のインテリアになっている時計が気になっている。 　確かにこの時計の効果で、店の中なのに通りに面したオープンなカフェにいるような気分になった。 　とりあえず席に着き、生ビールを頼んでからメニューを眺める。 　「生ビール(アサヒスーパードライ)」420円は三人とも美味しいと口を揃えた。 　焼酎「黒霧島」400円。ロックで注文するとキューブアイスに90cc位入っている。 　メニューはかなり個性的。焼き鳥とピザが看板メニューらしい。 「焼鳥の盛り合わせ（10本）」1000円(黄身つくね＋本日のおすすめ串４種８本)と「マルゲリータ」(トマトソース・モッツァレラ・バジル)1050円を注文。 　店の内装や、テーブルに置かれた細長い小皿からはタパス料理がメインかと思ったので意表を突かれた。 　あまり馴染まない組み合わせだったが、出てきた料理を見て納得した。 　焼き鳥は女性が喜ぶような演出をしている。「黄身つくね」180円はほうれん草を練り込んであり四角い形。つくねというよりは田楽のような感じ。洋風の料理と並べても違和感が無い盛り付けだ。 　「ねぎみ(タレ)」90円は身を細かく刻んで、葱も細いのを重ねたタイプ。ボリューム感から今一歩。「三角(塩 ※ヒップ)」90円、「ずり(塩)」90円、「こころ(塩)」90円。全て口に入れた瞬間うまみを感じる。うまみ成分を添加しているのだろうか。「黄身つくね」は少しパサつくが卵に絡めて食べると美味しく感じる。このあたりの工夫に、最中グループ、つまり「Ryu's SANAKA Grup」が発展し続ける秘訣があるのかもしれない。味見先生は、メイン料理としたらもう一歩上を目指して欲しいという表情。だが、このお店、色々とお客様を楽しませるようにメニューが工夫されている。焼き鳥がメインとは考えていないのであろう。 　ピザはやや厚めのパンを感じさせる生地。私はナポリ風の厚みがあって、もちっとしたピザ生地が好きなのだが、ここのは少し中途半端かな。好みを言わせていただけるなら、具材の乗った薄い部分はしっとりと、縁の部分は十分膨れ上がってさっくりして欲しい。裏漉ししたトマトソース、カットしたモッツァレラチーズにフレッシュバジルが乗っている。オリーブオイルはエキストラヴァージンではない。真面目に造られているし味は全く普通のレベルだったが、私のこだわりが強すぎるだけのことか。 　追加のドリンクはグラスワインの「赤(ROSSO)グラス」400円と「ドラゴンボール」500円。 　赤のグラスワインは残念ながらもっと頑張って欲しい。ブショネまではいかないが、ややカビ臭がする。ボトルまでは飲めないけれどワインを一杯飲みたい人も多いはず。グラスワインこだわってくれたら嬉しい。 　「ドラゴンボール」の方は、このお店のオリジナルドリンクだ。かなりの好評価。「ドラゴンボールは」生搾りレモンとウォッカがベースだが、好みに応じて種類がある。私は「ソーダ割り」。味美ちゃんは「ハーフロック」を注文。どちらも美味しい。 　女性同士や4，5人のグループで行って楽しめるお店だと思う。 　お会計は三人で4920円であった。おおきに、ご馳走様でした。

　軽く食事をした後で立ち寄ったので、いきなり「ジントニック」700円を注文。 　ジンはゴードンを使っている。なかなかうまい。 　ゴードンはジントニックに合ったジンだと思う。少しとろみのある透明な液体がタンブラーに注がれる瞬間が好きだ。カットライムを下に沈めて、上にも乗せて出してくれた。邪道と言えば邪道だが、最後の一口までジンとライムを味わって欲しいというオーナーの気持ちだろう。いつじ青果のフレッシュをふんだんに使うという姿勢がこの1杯でうかがい知れる。 　ビールは「ハートランド(生ビール)」550円。ビールの状態は普通。もう少しうまいハートランドを出すお店もあるが、こだわりのビールも用意されているので、次回はちょっと財布を緩めて他のビールに挑戦してみよう。 　味見(アジミ)先生は風貌に似合わす「季節の酎ハイ　ピンクグレープフルーツ」650円を飲んでいる。果肉が入っているのが気に入った様子。いわゆるチューハイではなく、フレッシュグレープフルーツ、いいちこ、トニックを使ったいつじオリジナルチューハイである。 　お店は雑居ビルの2.5階。狭さを利用してうまく造られている。カウンターの厚い木の温もりや、野菜を中心にした食材などが、コンクリートの箱を快適な居場所に変えている。 　クラシック系のBGMもこの店にふさわしい。 　テーブルは二人席なので大人数のお客さんが入ってきて雰囲気を壊すこともない。 　オーナーは帽子、ひげの定番アイテムに加えて、人懐っこい顔で味がある。バーテンダー、シェフ、八百屋のおじさんのイメージをミックスしたような、それぞれの顔を持っている。 　こういうお店はあまり男前過ぎても良くないのである。女性のお客さんの多いお店だと思う。女性たちは安心してオーナーの前で「いろいろな」話を気がねなくできる。 　食事を済ませたはずだったが、黒板に書かれたメニューをついつい眺めてしまう。結局オーナーにすすめられるままにフードも堪能。 　秋田駄々茶豆を使った「スパニッシュオムレツとミニトマト」は上品な味。豆の色も香りも熱を通した後でもしっかり残っている。味見先生は絶賛。味美（ミミ）ちゃんは半熟が残ったオムレツが好き、私はホウレン草やベーコンの入ったがっちり系のオムレツが好き。この一品だけで会話がはずむ。卵料理は奥が深く、好みが分かれるので面白い。 　「鶏もも肉のバランティーヌ」も食す。中に三種類のパプリカが入っていて手間がかかっている。真空調理法。低温でじっくり焼き上げるのだが、先生は焼き上げる温度をオーナーから聞き出している。 「フムフム。70度で2時間加熱か。少し高めだがしっかり火を通したいということね。なかなか良ろしい」などと独り言をつぶやいている。野菜中心のお店とはいえ、やっぱり肉系も、という女性には喜ばれる一品。 　「なすのマリネ」はバルサミコソースがかけられており、まあ美味しい。 　「たことセロリのバジル風味」と野菜のパウンドケーキ風の「ケーク・サレ」は、やや塩味が勝った味わい。この塩加減で調理人が喫煙家かどうか判断できると先生は言う。 　この日、最後に食した「インカのめざめのポテトサラダ」には、三人が揃って顔が緩んだ。素晴らしい。ラスク状のパンにのって登場。個人的な趣味として、この味わい深い甘味のあるポテトには、焼いたパンよりも、やわらかい切りたてのバケットが合うと思った。 　おっと大事なドリンクを紹介するの忘れていた。葉つきのセロリが豪快に刺さった｢野菜のカクテル　セロリとオレンジのカクテル」1000円。ウォッカ、オレンジジュース、カリブで作られている。美味しいし健康的になれる気がする。三人揃って葉つきセロリをパリンと食べてから一気に飲み干してしまった。 　お料理は、おまかせにしたので、個々のお値段は不明。かなりポイント高いお店。 　常連のお客さんが頼んだモヒートに心ひかれながら店を後にした。 　お会計は三人で7670円であった。おおきに、ご馳走様でした。