Koichi Toshioka
北新地駅
割烹・小料理屋
夏頃だったか梅新の交差点横の「マルビル」一階の店舗が大々的に内装工事をしていたので何が出来るのかを楽しみにしていた。一月くらい後で通ると北新地の老舗割烹店「小嘉津」の暖簾が掛かっていたので驚いたのであった。あとで分かったが北新地のビル所有者が変わり家賃が大幅に上がったため閉店し、移転を決意したのだとの話、其れにしても新地を離れるとは!大変な勇気がいることに違いあるまい。 それで今日偶々時間があったので予約もせずに訪れてみた訳である。いきなりの訪問にも拘らずご主人は丁寧に応対して下さり入店を許可、テーブルに案内して頂いた次第、有難い話であった。 料理は「お任せ」のみ、酒は週替わりでレアな日本酒が7種類用意されている。一枚板のカウンターは長年使った北新地店のものをそのまま移築したそうだが新たに表面を削ってあるからピカピカの白木である。テーブルや柱も無垢のサクラ材で美しい内装に仕上がっていて食事の空気感を思い切り高めてくれる。 今夜のコースは温かい「胡麻豆腐」に始まり、「八寸」、「お造り」と進む。「八寸」は秋を十二分に感じさせる構成、「お造り」はレアな部位を盛り込んだクエと皮目を炙った和歌山のカマスであった。碗物は「鰤大根」の応用編、北海道の13キロ越えの鰤は良い脂のノリであった。酢の物は詰め物をしたサゴシに香ばしく瀬戸内産海苔を巻いた逸品、酢に独自の工夫があると感じた。油物はいち早く「河豚の天婦羅」、上身とトウトミは今季初めてで季節の先取り感があった。酒は栃木「仙禽無垢」、秋田「ゆきの美人」、秋田「山本」、岐阜「津島屋」と飲み進めた。後は食事とデザート、トロトロの穴子飯を堪能した後、フルーツの盛り合わせに自家製きんつばが来てフィニッシュと相成った。 料理の組み立ても最高だし使う器も素晴らしい。久々に良い日本料理を頂いた思いがした。料理長にして今やご主人となられた早川さんのご精進が実った印象の「御馳走」であった。お会計はなんと12100円也でとてもリーズナブル、今どきこんなおもてなしを受けてこのお値段はとてもあるまい。是非また近々に再訪したいと思っている。